OSS DBも商用DBも、技術イベント「AWS DB Day」開催――基調講演レポート(前編)
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2017年07月07日 07時00分更新
OSSのカラム型DBはここまで進化! インサイトテクノロジー・小幡一郎氏
インサイトテクノロジー 代表取締役社長の小幡一郎氏は、OSS(オープンソースソフトウェア)であるMariaDBと、MariaDBのプラグインエンジンとして開発されているカラム型(列指向)DBエンジン「MariaDB ColumnStore」のスケールアウト性能、さらにそれを活用したOSSベースの分析基盤コンセプトを、デモを交えながら紹介した。
MariaDBは、MySQLのオリジナル開発者だったマイケル“モンティ”ウィデニウス氏が、オラクル傘下となったMySQLからフォークして立ち上げたOSS DBであり、近年人気が高まっている。小幡氏も、さまざまなOSS DBの中で「僕の一番のお気に入りはMariaDB」だと語る。
MariaDB(およびMySQL)の大きな特徴は、DBエンジン部がプラグイン形式になっており、用途に合わせて開発されたDBエンジンを選択できる点だ。上述したMariaDB ColumnStoreも、このDBエンジンのひとつである。「新しいDBエンジンを開発して、そのままMariaDBに乗せることができる。じゃあ、そこにカラム型エンジンも乗せてしまえ、と開発された」(小幡氏)。
小幡氏はまず、MariaDB ColumnStoreのスケールアウト性能を示すデモ動画を紹介した。AWS上でMariaDBのインスタンスを立ち上げ、約1億行のSNMPログデータ(容量は23GB)を全件検索して、SNMPメッセージを日ごと/種類ごとに集計する。この処理を1インスタンスと10インスタンスの環境で実行すると、1インスタンスでは約170秒かかった処理が、10インスタンスでは約18秒で終わり、高いスケールアウト性能が証明された。「ちゃんとスケールアウトするOSS(のカラム型DB)が現れた。これはすごくショッキングなこと」(小幡氏)
小幡氏はまた、2013年に登場してDWH市場に衝撃を与えた「Amazon Redshift」とMariaDBとの関係について語った。自身は「Redshiftの大ファン」ではあるものの、進化の続くMaria DBを使って「Redshiftをひっくり返してやろう」と小幡氏が披露したのが、「Pink shift」というOSS分析基盤のコンセプトだ。これは、さまざまな型のデータが蓄積されているデータレイクからデータをロードし、カラム単位で最適なDBエンジンを選択して処理を実行する、というものである。
「これは、単純にDBをシャーディング(スケールアウト)するのではなくて、たとえば分析ならColumnStore、全文検索ならMroonga――と、エンジンの中身を切り替える。この処理を、Spiderエンジンがプロキシ的に働いて、ほかのエンジンとコネクトしてやってくれる。MariaDBなら、これらがすべて標準で入っている」(小幡氏)
小幡氏は、巨大なデータ量ならばRedshiftのようなDWHが必要だが、そこまでではない“現実的なデータ量”であればMariaDB ColumnStoreでも十分に利用価値があること、また、これからDWHの扱いを学ぼうという若いエンジニアがそのノウハウを学んでいくための環境構築にも良いと語り、このOSS DBの積極的な活用を訴えた。
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次回後編では、オンプレミスの商用DB(Oracle DB、SQL Server)をクラウド移行するうえでの要点を解説したアクアシステムズの川上明久氏、オンラインゲームなどの大規模トランザクションを安定的に処理するスケーラブルなシステムアーキテクチャを紹介したCygamesの倉林修一氏の講演レポートをお届けする。
なお、同イベントの講演資料は後日、下記イベント公式サイトで公開される予定だ。