独自ストレージ技術で“妥協のない”パフォーマンス実現、「市場シェア1位を目指す」
HCIの適用ワークロード拡大を狙う「HPE SimpliVity 380」発売
2017年06月16日 07時00分更新
日本ヒューレット・パッカード(HPE)は6月15日、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)アプライアンス「HPE SimpliVity 380」の国内提供を開始した。独自のハードウェアアクセラレーターによって高効率/高性能なストレージ環境を実現しているのが特徴で、適用ワークロードが限定されていた従来のHCIとは異なり「エンタープライズの本番環境としても“妥協なく”使える」とアピールしている。
重複排除/圧縮処理アクセラレーター、高速バックアップなど独自技術
シンプリビティ(SimpliVity)は、今年4月にHPEが買収を完了したHCIプラットフォームの新興ベンダー。独自のHCI向けストレージ技術に強みを持ち、昨年のガートナーマジックックアドラントでは、ニュータニックス(Nutanix)らと並び「リーダー」ポジションに入っている。買収前は、HPEをはじめ、デル、シスコ、レノボのサーバーをベースとしたHCIアプライアンスを提供していた。
今回国内発売されたSimpliVity 380は、HPEの2Uサーバー「ProLiant DL380 Gen9」をベースに、「VMware vSphere」仮想化プラットフォームと独自のSoftware-Defined Storage(SDS)、ストレージデータ処理を行うハードウェアアクセラレーターなどを統合済みで提供するHCIアプライアンス。最小2ノードから最大32ノードまで、無停止でシームレスにスケールアウトすることができる。
SimpliVityの大きな特徴は、データのインライン重複排除/圧縮処理を行うハードウェアアクセラレーターカードを搭載している点。これにより、稼働中のアプリケーションパフォーマンスに影響を与えることなく、リアルタイムでデータ処理を実行できる。
さらに、一般的なブロックサイズ(256~8192KB)よりも細かい8KBブロック単位で重複排除処理を行うなどの技術によって、「平均60~70%」という高いデータ削減率を実現しているのも特徴だ。
同製品は仮想マシン単位で操作できるバックアップツールも標準搭載しているが、バックアップ/リストア処理においても上述の点がメリットとなる。データ移動が最小化されるためバックアップ/リストア処理は高速であり、HPEによると「1TBの仮想マシンは平均60秒でリストアできる」という。また、バックアップ処理を行ってもアプリケーションパフォーマンスには影響が出ないため、遠隔地(DRサイト)へのバックアップを含め、従来よりも高頻度でのバックアップ実行が可能となる。
運用管理操作はすべて「VMware vCenter」管理コンソールに統合(プラグイン)されており、仮想マシンの管理からパフォーマンス監視、バックアップ/リストア操作などがすべてここに一元化される。なおこのほかにも、ストレージ使用量などの統計データをクラウドで収集、分析し、ノード追加推奨の時期などを予測するクラウドサービスも提供されている。
今回国内販売を開始したSimpiVity 380は、オールフラッシュ(オールSSD)の3モデルとなる。1ノードあたりの参考価格は677万7000円(税抜)から。別途VMwareのライセンス料金が必要となる。また、米国ではHDD+SSD搭載のハイブリッドモデルや、HDDのみ搭載のアーカイブモデルも販売されており、これらの国内販売についても今後検討していく。
HPEでは、SimpliVity 380の導入によって、TCOは従来型ITシステム比で73%、パブリッククラウド比で49%削減できると述べている。
なお、HPEではすでにHCI製品として、マイクロソフトやヴイエムウェアの仮想化プラットフォームを搭載した「HPE HC(Hyper Converged)シリーズ」を提供しているが、これらの製品も引き続き販売される。
VDIだけでなく基幹業務アプリケーションなどへの適用も
発表会で製品紹介を行ったHPE サーバー製品本部 本部長の中井大士氏は、SimpliVityは「妥協のないストレージ性能」を提供する「次世代のHCI」だと説明した。
従来のHCI製品では、CPUリソースがSoftware-Defined Storageの処理に多く割かれるためストレージ性能に課題があり、開発環境やVDIなど特定のワークロードに利用が制限されるケースがあった。一方で、独自のストレージ技術を採用したSimpliVityは、エンタープライズの本番環境でもワークロードを選ばず「妥協なく使っていただける」と中井氏は説明する。基幹データベースなど、いわゆる“Tier1”のワークロードも対象だ。
これにより、HCIのターゲット領域も大きく拡大できるとHPEでは考えている。SimpliVityでは、これまでHCI導入の中心だった小規模環境では「2ノードから」とより小さく導入できるメリットを、VDIなど特定ワークロードに利用が限定されていたエンタープライズではワークロードを問わない利用を可能にする。
さらに、従来のHCI製品ではサードパーティの外部バックアップ装置やバックアップツール、DRのためのWAN高速化装置なども必要だったが、SimpliVityではそうした機能をすべて標準搭載で統合しており、導入コストや運用管理コスト、設置スペース、消費電力など幅広い面でTCOを大幅削減できると強調した。
さらに中井氏は、SimpliVityクラスタに、コンピュートノードとしてProLiantサーバーを統合することもできると説明した。これは、ストレージ容量は余っているがコンピュートリソースが不足しているケースに対応するための構成で、追加するProLiantノードにはSimpliVityライセンスは不要。実際に、SimpliVityとProLiantのノードを組み合わせてVDI環境で利用している導入事例も紹介した。
また、HPE DCHC製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏は、現在のHPEがフォーカスする「ハイブリッドIT」領域においては、“Software-Definedの力”を引き出すハードウェア技術の開発投資、技術買収に注力していることを説明。SimpliVityの買収も、そうした取り組みのひとつであると紹介した。
「すでにHCIはかなり市場に浸透してきているが、SimpliVityは“次のステージ”に行ける製品だと認識している。HCI市場においてもシェアNo.1を目指していきたい」(本田氏)
米HPE Software Defined Data Center アジアパシフィック部門 ゼネラルマネージャーのジャンポール・ボバイルド氏は、HCIの導入によってITの運用をシンプル化し、新しいアプリケーションの実装を迅速化することで、「現在の企業が必要としているデジタルトランスフォーメーションを推進できる」と語った。
「HPEのSimpliVity買収はとても戦略的なものだった。SimpliVityのHCIを提供することで、顧客がデジタルトランスフォーメーションとハイブリッドITへの歩みを進めるための、ITオペレーションをシンプル化するお手伝いができるものと自負している」(ボバイルド氏)