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リソースを動的に拡張できる「Synergy」が最大の武器に

HPEが語るデルとの競合、パブリッククラウドとの差別化

2017年01月06日 07時00分更新

文● 末岡洋子

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クラウドにより手軽にインフラを調達できるようになった。そんな中、ハードウェアベンダー大手のHewlett Packard Enterprise(HPE)はハイパーコンバージド、コンポーザブル、それに新しい課金モデルなどが自社でハードウェアを調達する理由になると考えている。HPEでアジア太平洋及び日本地区ストレージ部門を統括するフィル・デイビス(Phil Davis)氏に、競合優位性、コンポーザブルの見通しなどについて聞いた。

HPEのフィル・デイビス氏

デルは確かに大きいが、HPEには俊敏性がある

――EMCを手に収めたデル・テクノロジーズが勢いをつけている。アジア太平洋地区、日本におけるHPEのポジションをどう見ている?

HPEはイノベーションにフォーカスしている。これは対デルのみならず、業界全体の差別化に繋がっている。HPEにおけるイノベーションの最新の例がコンポーザブルインフラ「Synergy」だ。リソースを動的に活用できるコンポーザブルを提供するのはHPEだけだ。3PAR(HPEが2010年に買収により取得したストレージ製品ライン)では、デルが4、5種類の異なるアーキテクチャで展開する機能を1つで網羅する。イノベーションでは、今回プロトタイプの動作に成功したことを発表した「The Machine」にも触れておきたい。

日本市場が関連するものとして、チャネルがある。日本はSIなどパートナー経由で構築することが多いが、われわれはチャネルパートナーと長期的関係を構築しており、これは重要な差別化になる。

デル・テクノロジーズは確かにさまざまなものを飲み込んで大きくなろうとしているが、HPEはフォーカスを絞って敏捷性を強化している。売上高の規模は(デルとEMCの2社を)合算すると720億ドルでわれわれをはるかに上回るが、同時に負債も抱えている。”エンドツーエンド”を強調しているが、われわれはすべてを揃える大きな企業よりも、得意分野で最高の技術を提供する方が現在の戦略として正しいと信じている。実際、HPEは多くのカテゴリーで1位、2位をとっている。さまざまなデータがあるが、IDCのデータではわれわれはトップだ。

――HPEは事業スピンオフのニュースが続いており、縮小のイメージが先行している。買収によりイノベーションを重視するというメッセージは顧客に伝わっているのか?

われわれの戦略や方向性についてメッセージを伝えることは重要だと考えている。日本を含め各市場でそのための投資も続けている。顧客はオンラインで情報を探すことが増えており、デジタルマーケティング活動は大きな投資分野となっている。

コンバージド、ハイパーコンバージド、コンポーザブルの現状

――日本を含むアジア市場でのコンバージド、ハイパーコンバージド、それにコンポーザブルの受け入れはどうか?

多くの場合、新しい技術はスタートアップがひしめく北米でスタートし、その後APJではまずオーストラリア、ニュージーランドに広がる。その後、シンガポール、香港というパターンが多い。日本で広がり始めるのは12~18ヶ月を要する。たとえばクラウド、オーストラリアと比較すると日本での広がりは遅く、比率も低い。フラッシュストレージもオーストラリア、ニュージーランドが先行したが、このパターンはハイパーコンバージドも同じだ。

いくつかの要因が考えられる。1つ目として、日本の顧客は品質を重視する傾向が強い。検証されている、導入事例があるなど実証されたソリューションを導入しようとするが、最新技術は実証されていないことが多い。

2つ目として、最新技術の多くがスタートアップから提供されているが、日本でスタートアップが展開するのは簡単なことではない。チャネル構築などが必要であり、すぐに参入できない。

フラッシュは今後成長を見込んでおり、IDCではAPJ市場でのフラッシュの成長率を70-80%と見ているが、HPEは3倍で成長する。この分野でイノベーションを図っており、これが市場の受け入れにつながっている。

ハイパーコンバージドについては、日本ではまだ広がり始めたと言えない段階だ。ここでは先ほどの2つの要因に加えて、出力密度の問題もある。システムの密度を高めることができても、電力が障害となっていることがあり、ブレードも受け入れが低かった。

それでも、ハイパーコンバージド、コンポーザブルは日本市場でも将来導入されるだろう。日本企業はオートメーションを重視するので、これは日本で加速要因になるだろう。日本はリソースが高価で、ITスキルを持つ人材は不足傾向にある。オートメーションにより得られるメリットは大きい。比率という点では低いだろうが、2017年はかなりの成長が見込めると見ている。

――ハイパーコンバージド、コンポーザブルは既存システムのリプレースが中心となるのか?

3つのパターンが考えられる。1つ目は中規模市場。数年が経験したシステムがあり、これらをハイパーコンバージドが一気に置き換えることになる。2つ目は新しい市場で、たとえばVDIを導入するにあたって既存インフラではなく、専用のシステムを新たに調達する、となる。このような市場に訴求できるだろう。3つ目は低コスト・高効率のストレージのニーズを満たすものとしてのハイパーコンバージドがある。ソフトウェア定義ストレージ戦略のメリットを最大化するにあたって、ハイパーコンバージドが選ばれるだろう。

コンポーザブルは、より規模が大きく、スケールも大きなデータセンターに訴求するだろう。さまざまな規模で利用できるように設計されているが、ワークロードの数が多いプライベードクラウドでメリットが大きい。ニーズの増減が激しい場合、これまでのシステムでは増減に動的に細かく合わせることはできなかった。

たとえばUberは、ある時間に殺到するが、10分後には落ち着く。現在の市場は増減が激しく予測が難しい。不要になった時にリソースをホールドするオーバープロビジョニングが問題となっているが、ダイナミックに増減できるコンポーザブルは大きなメリットをもたらす。日本企業の多くが、レガシーのワークロードがあり、クライアントサーバーアーキテクチャがあり、新しいクラウドネイティブアプリケーションがある。Synergyはこれらすべてに対して、動的にリソースを割り当てることができる。

コンポーザブルは現在、世界で約100社のベータ顧客がおり、日本ではNTTドコモなど2社がβテストに参加している。

――IT部門の受け入れはどうか? 簡単にコンポーザブルのコンセプトを受け入れているか?

日本では簡単ではないかもしれない。慣れていないものに対して、保守的で用心深く見守る向きがある。一方で、ヤフージャパン、アサヒビール(アサヒグループホールディングス)など、変化に前向きなところは他社を使っていたが、3PARに乗り換えてコスト削減など大きなメリットを出しているところもある。

だが、日本の顧客を取り巻く環境はここ15年で大きく変化している。日本市場のパイの拡大はあまり見込めず、国外展開により成長しなければならない。そこではアジャイルさ、敏捷性、柔軟性が要求される。これは追い風となる。

日産自動車はHPEの技術を使ってVDI環境に移行した。世界中に分散する開発者が同じインフラを利用してアジャイルに、コスト効率よく作業できるようにする、という狙いからだ。スズキ自動車も同じだ。

今後、国外への進出は日本企業のITインフラの柔軟性とアジャイルへのニーズを高めることになる。これは、HPEが提唱してきた”アイディアエコノミー”につながるものだ。

パブリッククラウドでは得られないメリットをハイブリッドITで

――HPE DiscoverではハイブリッドITというキーワードを強調した。APJにおけるハイブリッドクラウド、マルチクラウドのニーズは?

APJはパブリッククラウドの受け入れが欧米より遅く、事情が異なってくる。パブリッククラウドを利用する理由は、パブリッククラウドを使いたいからではない。パブリッククラウドを使う理由をCIOに聞いたところ、アジリティ、柔軟性、使ったぶんだけ支払いたい、の3つが多く挙がる。一方で、パブリッククラウドにはトレードオフもある。セキュリティ、性能、SLA、データの一貫性などだ。

HPEは「フレキシブルキャパシティサービス」として、オンプレミスでパブリックとプライベートの両方のクラウドのメリットすべてを享受できるサービスを用意している。約1年前にローンチし、APJではオーストラリアの後に日本でも提供を開始した。ここ6ヶ月で強化している。顧客は月額で支払い、スケールアップ、スケールダウンが可能だ。使った分だけ支払えばよいし、データセンターのサービスをすべてフレキシブルキャパシティに移動して動かすこともできる。われわれがキャパシティのプランニングをしっかり行なうので、必要な時にキャパシティが足りないなどという事態もない。

――フレキシブルキャパシティはパブリッククラウド対抗となるのか?

パブリッククラウドからプライベートに戻ったという企業が増えているのは事実だ。

顧客の一社に丸紅がある。当初、丸紅はパブリッククラウドサービスを検討したが、サービス品質、性能などのデメリットの可能性があることを考慮して、フレキシブルキャパシティを採用した。また、フィリピンのGlobe TelecomはAWSを使ったところ、予想を上回る仮想マシンを使うという結果になった。不要な仮想マシンをシャットダウンしなかったために、課金され続けたため、非常に割高となった。また、データをパブリッククラウドに移行させたことも、結局はコスト増を招き、当初の支出予想を大きく上回った。そこでHPEと提携し、プライベートクラウドにワークロードを戻し、パブリッククラウドからプライベートクラウドに戻った。このように、パブリッククラウドは思ったほどコスト効率がよくないと気がつく企業が増えている。

パブリッククラウドのコスト効率が問題と感じる理由は2つある。1つ目は、購入ではなくレンタルのような形だから。2つ目は、社内ITは利益を出ていることを実証する必要はないが、AWSなどのパブリッククラウド事業者は利益を出す必要がある。われわれがオンプレミスでプライベートクラウドの構築・運用を支援し、コストはパブリッククラウドと同じであれば、経済的な理由でパブリッククラウドに移行する必要はなくなる。

――今後、ハードウェアベンダーの課金方法は変わってくるのか?

消費ベースに移行すべきだろう。顧客が技術を消費する方法が変わってきており、支払いも変えたいと思っている。消費ベースを選択する企業は今後増えるとみている。

HPEはフレキシブルキャパシティの他にリースも提供する。HPE Financial Servicesがリース事業を持っているので、銀行などと比較すると期間の延長に柔軟に対応できる。これも、負債を抱えるベンダーでは難しいことだ。

――APJ市場での優先事項は?

まずはサーバー市場における首位を維持すること。ハイパーコンバージドなどまだまだ成長の可能性がある分野があり、潜在性は高いとみている。コンポーザブルのSynegyも重要性が高くなるだろう。上半期に少しずつ強化していく。

全体として、ITの簡素化はどの企業にとっても課題であり、IoTエッジは成長分野だ。日本は製造業が多く、高齢化によりスマートシティも重要度が高くなるだろう。当然力を入れていく。われわれの差別化はこれらHPEの技術に加えて、各分野に専門家がおり優れたコンサルチームを持つ。また提携により、地元のSI事業者らパートナーがHPEの技術を日本の顧客ニーズに合わせた形で提供できる。

まとめると、市場として日本は大きなチャンスがありシェアをとる。製品は3PARのオールフラッシュ、ハイパーコンバージド、Arubaと提携しているArista Networksを通じたネットワークが成長を牽引するだろう。そして、顧客のニーズもスマート工場、スマートシティ、ヘルスケアなどで強い。これらを最大活用して成長を遂げる。

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