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「今年度のHCIビジネスは1.5倍に成長」今後のナンバー1目標に向けて自信を示す

HPEのHCI「SimpliVity」にエントリー版追加、「InfoSight」も対応

2019年09月25日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2019年9月24日、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品「HPE SimpliVity」において、ポートフォリオを拡張する2つの新モデルと、「HPE InfoSight」の適用による新サービスを発表した。AMDのEPYCプロセッサを搭載し、コストを抑えた1Uサイズのエントリーモデルも用意している。

 同日の記者発表会にはパートナー営業統括本部長の西村淳氏、エバンジェリストの山中伸吾氏が出席し、SimpliVity新製品の特徴や適用ユースケース、またHPEにおけるSimpliVityビジネスの戦略と現状などを紹介した。

「HPE SimpliVity」で発表された3つの新製品/サービス

日本ヒューレット・パッカード 取締役 常務執行役員 パートナー営業統括本部長の西村淳氏

日本ヒューレット・パッカード HPEエバンジェリストリーダー HPE総合エバンジェリストの山中伸吾氏

初の1CPU/1Uサイズエントリーモデル、遠隔バックアップ先専用モデルを投入

 今回SimpliVityシリーズに追加された新モデルは、エントリー向けの「HPE SimpliVity 325 Gen10」と、遠隔バックアップ用の「HPE SimpliVity 380 Gen10 Backup and Archive node」の2つ。いずれも従来モデルより価格を抑え、SimpliVityの適用領域を拡大する狙いがある。

 SimpliVity 325は、最大32コアのAMD EPYCプロセッサ、最大2TBのメモリを搭載する1CPU/1Uのエントリーモデル。ストレージサイズはXS(4.6TB)、S(7.5TB)から選択可能。最小構成価格(税抜)は411万6000円から。

SimpliVity初の1U/1CPUエントリーモデルである「HPE SimpliVity 325 Gen10」

 従来モデルでは、ストレージの重複排除/圧縮処理を高速化するための専用ハードウェア(アクセラレーターカード)を搭載していたが、ストレージサイズの小さいSimpliVity 325では、これをソフトウェアベースの処理に変更した。ただし、重複排除率と圧縮率は従来モデルと変わらない。

 さらに、仮想化ソフトウェア(VMware、Hyper-V)のライセンスがCPUソケット数単位の課金であるため、1CPUでより多くのコアを搭載するEPYCプロセッサを採用したことでライセンス料金も軽減される。

 山中氏の説明によると、同じ32コア構成で従来モデルのSimpliVity 380 Gen10(インテルXeon-Gプロセッサ×2ソケット)と価格を比較すると、SimpliVity 325はおよそ39%低コストになるという。これによって、より規模の小さな企業や拠点でのSimpliVity導入を可能にする。

SimpliVity 325の特徴。ソフトウェアベースの重複排除/圧縮処理、CPU数の削減によってエントリー向けの低価格化を図った

 SimpliVity 380 Gen10 Backup and Archive nodeは、遠隔バックアップ/DR(災害対策)サイトの構築に適した、SimpliVityのバックアップ先専用モデルだ。これまでのSimpliVityはストレージがフルSSD構成だったが、このモデルではSSD+HDDのハイブリッド構成を採用することでTB単価を抑えている。山中氏の示した試算によると、従来モデル(SimpliVity 380 Gen10 Large)と比較して、TB単価は36%低減できるという。

 またSimpliVity 380 Backup and Archive nodeに対し、最大96台のSimpliVityからバックアップすることが可能。そのため、全国各拠点に設置されたSimpliVity環境のバックアップを、1カ所のバックアップサイトにまとめるような運用もできる。

遠隔バックアップ先として設計された「HPE SimpliVity 380 Gen10 Backup and Archive node」

SimpliVity 380 Backup and Archive nodeの特徴。多拠点のSimpliVityデータをまとめてバックアップする、リモートバックアップサイトの構築に適している

 なおSimpliVityのシステム最小構成は2ノードからであり、SimpliVity 325の導入時には2台以上が必要。一方でバックアップ環境は1ノードから構成できるため、SimpliVity 380 Backup and Archive nodeは1台から導入できる。

AIが支援する運用ツール「InfoSight」がSimpliVityにも対応拡大

 今回はもうひとつ、予測分析エンジンのInfoSightが、SimpliVityに対応することも発表されている。利用料金は無償で、2019年10月からサービス提供を開始する。

 InfoSightは、サーバーやストレージといったHPE製品から稼働状態データを収集し、機械学習技術も適用しながらデータ分析をすることで、容量不足やパフォーマンス劣化などをいち早く検知、予測するクラウドサービス。HPEではこのInfoSightを軸とした“自律型データセンター”ビジョンを掲げており、これまでに「HPE ProLiant」や「HPE Synergy」、「HPE Nimble」「HPE 3PAR」「HPE Primera」といったデータセンター製品群が対応している。

HPE InfoSightの概要。データセンター設置されたHPEのサーバーやストレージからテレメトリデータを収集、分析し、問題の検知や予測を支援する

 山中氏は、これまでInfoSightを適用したHPE製品においては、インフラトラブルの86%を「発生前に」予測/予防することができているという実績値を紹介。また、SimpliVityのようなHCIにおいては、仮想マシンの高集積化によるリソース不足や配分ミスが起きやすく、また多種のソフトウェア(OS、ハイパーバイザ、SDS、ハードウェアのファームウェア)を搭載するため組み合わせによる不具合発生の可能性も高まることを指摘し、InfoSightがそうしたトラブル回避を強力にサポートすると述べた。

 なおSimplivity向けInfoSightの提供機能は段階的に拡張される予定。今回の第一弾では、仮想マシンやクラスタ、フェデレーションの各レベルでの一元監視機能、ストレージ容量の将来消費予測機能、仮想マシンの使用率可視化(ノイジーネイバーの発見)機能、ルールに基づくHPEサポートへの自動通報機能が提供される。顧客側から要請するのではなく、自動通報を受けたHPE側からプロアクティブに各種サポートを提供することも提供できるとしている。

SimpliVity向け機能は段階的に拡充していくと山中氏は説明した

パートナーとの協力で先行他社を猛追、「国内HCI市場でナンバー1を目指す」

 パートナー営業統括本部長の西村氏は、HPEにおけるSimpliVityビジネスの現状と戦略を説明した。

 HPEでは2017年6月にSimpliVity製品の国内販売を開始している。西村氏は「他社が市場シェアを取っていたのを追いかけるかたち」のスタートだったと、Nutanixなどの競合製品が国内HCI市場を形成し始めた後のタイミングだったことを認める。シェアの計算方法にもよるが、現状ではHCI市場の「だいたい3番手か4番手」(西村氏)という認識だ。

 「今年度は対前年比で50%、1.5倍の成長を達成した。HCI市場全体の成長率が18%だったので、その2.5倍の勢いで伸びている。シェアでも1位ベンダーを猛追している」(西村氏)

 その成長要因は「競合優位性を持つ製品」と「従来からの長い歴史を持つ販売パートナーエコシステム」だと語る。パートナーに関しては、SimpliVityに関してHPEと同等レベルの構築が可能なパートナーが大手SIerを中心に18社あり、このパートナーを通じて全国の幅広い顧客企業への展開を可能にしていると説明した。

多くの販売パートナーに技術トレーニングを提供しており、パートナー経由で全国に対しHPEと同等の高度な導入サービスを提供できるとした

 またSimpliVity製品の競合優位性、強みについて山中氏は、実際の採用ケースの多くにおいて、「仮想マシン中心型管理」と「秒速バックアップ」という2つの特徴が顧客に高く評価されていると説明した。

 SimpliVityの管理者は、物理的なサーバーやストレージ構成を意識することなく「仮想マシン単位で」運用管理を行うことができる。また管理操作も「VMware vCenter」に統合されており、操作の標準化やドキュメント化が容易になるという。山中氏は、専任担当者がいない中小規模の企業や拠点であってもシンプルに管理できると説明した。

 また秒速バックアップについては、これまで3時間かかっていたバックアップ処理が1分に短縮された国内流通サービス業の事例、遠隔地にあるDRサイトへのバックアップ処理時間を12時間から3分に短縮した国内製造業の事例が紹介された。山中氏によると、SimpliVityの獲得案件において最も多く出てくる顧客テーマは、このバックアップ時間の短縮だという。

 西村氏は、HPEではSimpliVityの販売によりフォーカスを強めることで、国内HCI市場における「ナンバー1」を目指すと強調した。

 「現在は先行する他社がトップだが、成長率という意味ではHPEが一番大きい。この勢いをもってシェアを拡大していく。InfoSightを含めた製品の競合優位性に加えて、やはり販売パートナーの力を存分に活用して、パートナー向けのプロモーション、共同での案件創出などを進め、全国に販売を拡大していくことで、シェアを伸ばしたいと考えている」(西村氏)

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