任天堂やメルカリも登壇したGoogle Cloud Next初日基調講演
3大キャリアを味方につけたGoogle Cloud Platformの国内展開
6月14日、グーグルは「Google Cloud Next '17」を開催。2時間におよんだ初日の基調講演は、Google Cloud Platform、G Suiteと働き方改革、パートナーシップという大きく3つのトピックで進められた。GCPに関しては、KDDI、ソフトバンク、そしてNTTコミュニケーションズとも提携し、本格的に国内展開を図る。
元VMware CEOグリーン氏が語るクラウドへの不可避な流れ
パブリッククラウドのグローバルプレイヤーとして、AWS、マイクロソフトとともに市場を切り開いてきたグーグル。GmailのようなSaaSやGAE(Google App Engine)、Google Mapsなど、他社に先駆けてクラウドサービスとAPIエコノミーを推進してきた同社だが、現在は「Google Cloud」というブランドの元、Google Cloud Platform(GCP)とG Suite(旧Google Apps)を中心に幅広いサービスラインナップを誇る。このGoogle CloudをテーマにしたGoogle Cloud Next '17は、世界19都市で開催されているグローバルイベントで、今回の東京会場での登録者数は1万3000名に上ったという。
仮想マシン、PaaS、コンテナ、ファンクションなどのさまざまな形態でコンピューティングリソースとインフラサービスを提供するGCPは、グローバルで10億人以上のエンドユーザーが利用しているとのこと。Google Cloud統括バイスプレジデントのダイアン・グリーン氏は、昨年東京リージョンがオープンしたGCPに関して「有料の顧客数は昨年対比で70%増加している」と好調ぶりをアピールした。
また、スケーラビリティという観点で、グリーン氏は想定の50倍のアクセスに耐えた「Pokemon Go」でのGoogle Cloudについて言及。「巨大なGoogle Cloudの規模があれば、どんな負荷にも耐えられる」(グリーン氏)とアピールした。その他、グリーン氏は、レガシーシステムからクラウドに移行した世界的な金融グループHSBCや、セール期のトラフィック増を短期間で乗り切った小売り大手のHomeDepotなどの事例を披露し、Google Cloudの実績を披露した。
印象的だったのはグリーン氏自身がCEOを務めていたVMwareの時代との比較。物理サーバーやコンピューターの運用負荷を軽減するため、VMwareは仮想化技術を世に送り出し、業界で大きな潮流になったのはご存じの通り。しかし、オンプレミスで仮想化を扱うのは今でもそれほど単純な作業ではないし、クライアントをクラウド上でホストするのもまだまだ大変だ。
これに対して、「今ではクラウドですべてのコンピューターのニーズに対応できる」とグリーン氏は断言する。「今日、ほんの少しのコードを書いて、コンテナに入れれば、スケーラビリティも、可用性も、セキュリティもすべて任せられる。自分たちでシステムを走らせるための知恵はもはや必要ありません」(グリーン氏)。まさにオンプレミスから仮想化、そしてクラウドへという不可避(Inevitable)な流れをグリーン氏自身も体感しているわけだ。
任天堂、DeNA、グーグルの3社で立ち上げた「Super Mario Run」
基調講演の後半では世界150カ国同時公開で、4日間で4000万のダウンロードとなった任天堂の「Super Mario Run」のプロジェクトが紹介された。プロジェクトは任天堂、DeNA、グーグルの3社が主導し、任天堂が仕様策定とプロジェクトマネジメント、DeNAがシステムの構築と運用、グーグルがコンサルティングやレビュー、テスト支援、インフラ提供などを担当したという。
Super Mario Runを支えるスマートデバイス向け基盤は、個別のタイトルごとに作るのではなく、GAEを用いた共通基盤として構築され、課金やプッシュ通知などの機能を実装している。共通基盤ではGoogle Cloudのフルマネージドサービスを積極的に用いることで、DeNAはサービス開発にフォーカスできたという。トラフィック増大時のスケールアウト、膨大なコンピュートの管理や障害対応、ログの収集、権限管理などさまざまなオペレーションの負荷を減らすことが可能になった。DeNAの菅原賢太氏は、「フルマネージドサービスを活用できたからこそ、大規模で安定したシステム運用を、短い期間で実現できたと思います」とGoogle Cloudの意義について語った。
3社のプロジェクトについて語った任天堂の竹本賢一氏は、「場所も違うメンバーで共通の目標に向かって仕事するためには、チームワークの最大化が不可欠でした。そのために、GoogleのHangoutやG Suiteのスプレッドシートを最大限に活用しました」と語る。グーグルの場合、日米のチームで時差が生じていたが、日本で出た課題を翌日には米国のチームがきちんとカバーしてくれていたという。同様のプロジェクトを今後進めたいかという質問に対して、任天堂の府川幸太郎氏は「もちろんです!」と力強く答えた。
マルチクラウドの方針でGCEやGAEをフル活用するメルカリ
もう1社の登壇は、フリマアプリをグローバルに展開するメルカリだ。現在、メルカリでの出展数は1日100万品以上で、流通額も1ヶ月で100億円に達している。アプリのダウンロード数もグローバルで7500万に達しており、新規事業として対面の「メルカリアッテ」、本やCDなどに特化した「メルカリカウル」を提供している。
メルカリは日本のみならず、2015年には北米、2017年にはイギリスに進出しており、マルチクラウドを大方針としてインフラはそれぞれ異なるクラウドを採用している。このうちイギリスと北米ではコンテナサービスのGCE、メルカリアッテとメルカリカウルにおいては、すべてGAEで構築している。「インフラのメンバーがいない中で、SLAほぼ100%を実現している」(メルカリ執行役員の柄沢聡太郞氏)とのことで、インフラをマネージドサービスに任せることで、サービス開発・運用に注力できているという。
導入のきっかけはGCPを象徴するサービスといえるBigQueryだ。「2年前、それまでのデータ解析基盤をすべてBigQueryに移すプロジェクトを担当していたのですが、分析のスピードに圧倒されました」(柄沢氏)とのことで、今ではすべてのログがBigQueryに集められ、誰も手軽に解析できるようになっているという。分析メンバーがエンジニアだけでないのもメルカリの大きな特徴で、企画やカスタマーサポートメンバーまでBigQueryを使っており、問題解決の基盤となっているという。
BigQueryの場合、スキャンするデータ量で課金されるため、エンジニアも当初は利用を躊躇する傾向があったが、グーグルから定額制のオファーをもらったことで、利用に対する心理的な障壁が下がったという。柄沢氏は「BigQueryやTensorFlowのようなグーグルのオープンなテクノロジーを活用することで、今後も事業を加速できればと思っています」とグーグルへの期待を語った。
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