AMDは5月16日(日本では5月17日の午前5時)、投資家向けとなるFinancial Analyst Dayを開催し、この内容をウェブキャストで全世界に配信した。ここで新製品の話が出てきたので、分野別にまとめて解説しよう。
サーバー向けCPU“EPYC”は
4ダイ構成のMCM
連載400回で解説したZenコアベースのNaplesであるが、このブランド名が“EPYC”(エピック)になったと、CEOのLisa Su氏より明らかにされた。
このEPYCとRadeon Instinctでサーバー市場に殴り込みをかけよう、というのがAMDのサーバーに向けた基本戦略である。
さてそのEPYCであるが、やはり想像通り4ダイ構成のMCM(Multi-Chip Module)であることが明らかにされた。パッケージを見る限りはシリコンインターポーザーは使わない、ただのMCMである。
筆者の推測が正しければダイの間はそれぞれx8程度のInfinity Fabricで接続されるだけで、後はDDR4、PCIe、それと電源/GNDだけで、HBM(High Bandwidth Memory)のような高速かつバス幅の広いI/Fは使わないため、MCMを利用する必要はないのだろう。
気になるのは、IO Hubに当たるチップが見当たらないことである。あるいはIOハブのみ裏面あるいはパッケージ内配線なのだろうか?
さて、ここからは市場と性能比較の話である。2016年の場合、サーバー市場全体の80%は2ソケット構成となっている。ただ右のグラフを見るとわかるが、性能はもちろんハイエンドの「Xeon E5-269X」が一番高いのだが、出荷量が一番多いのは「E5-264X」、次いで「E5-263X」、「E5-262X」、「E5-265X」という順で並んでおり、要するに出荷量の大半はそれほどコア数の多くないMCC(Mid Core Count)/LCC(Low Core Count)製品に集中しているとする。
これを前提に、ライブデモとして「Xeon E5-2650 V4」の2ソケット製品 vs. EPYCの1ソケット製品のベンチマークが行なわれた。デモは8つのVMを立ち上げるというものだが、EPYCの方が早く立ち上げられる、という結果が示された。この1P EPYCのボードも今回紹介されている。
AMDはこれまでボリュームゾーンとして大量に出荷されていたローエンドの2ソケットサーバーを、このEPYC 1Pで置き換えられるとアピールしており、現在のXeon 2ソケットの市場の下側はEPYC 1ソケット、上側をEPYC 2ソケットでカバーできる、としている。
最後にロードマップであるが、現在のEYPCは14nmのZenコアベースであるが、これに続いて7nm世代のZen 2、そして7nm+世代のZen 3がそれぞれRome/Milanとして投入される予定になっていることが今回明らかにされた。
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