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最新ユーザー事例探求 第44回

クラウドへの積極的な移行とそれらをつなぐデータ連携について聞く

クラウドへ向かうゲオ、DataSpider Servistaをデータハブとしてフル活用

2017年04月11日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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国内の1800店舗でメディア事業などを展開するゲオホールディングスは、クラウドとオンプレミスのデータ連携ハブとしてアプレッソの「DataSpider Servista」を導入している。同社の業務システム部の2人に、クラウドへの移行とDataSpider Servistaによるデータ連携の実態を聞いた。

基幹システムもAWSへ移行 事業部にはkintoneを導入

 ゲオホールディングスは、ゲオショップでのメディア事業、2nd STREETやJUMBLE STOREなどのリユース事業、オンライン事業、アミューズメント事業などを展開するゲオグループの持ち株会社。最近ではリアル店舗とネット事業を融合させたオムニチャネル戦略を推進するほか、中古携帯の端末販売など新しいビジネスにも果敢に取り組んでいる。

 ゲオグループのITを担うゲオホールディングスの業務システム部は、システムのクラウド化を積極的に推進している。業務システム部は、大きく情報システム課、データシステム課、システム管理課に分かれているが、このうち情報システム課が主体となって2014年から基幹システムのAWSへの移行をスタートさせている。

 クラウド移行のきっかけはこれまでデータセンターにあったOracle Exadataの保守切れだ。保守の継続も可能だったが、コストの増大が大きかったため、2014年にクラウドへの移行を検討開始。2015年にはAWSへの移行を決定しデータセンターのサーバーをAmazon EC2へ、ExadataをRDS for Oracleにマイグレーションした。Oracle DBの暗号化オプションがAWSでの利用をサポートして以降は、機密性の高いデータもAWSに移行させている。

 一方、事業部の情報システムとしてはサイボウズのkintoneを導入している。こちらは現場部門でやりとりされる煩雑なExcelファイルの交換を減らすために導入し、業務システム部のデータシステム課がアプリの開発や運用を手がけている。ゲオホールディングス 業務システム部 データシステム課(当時)の吉村公胤氏は、 「たとえば、新規店舗を立ち上げるには、いろいろな部署に依頼をかけなければいけません。そのたびにExcelの表をメールで交換し合うので、フローがまったく見えませんでした。kintoneの導入でこうしたやりとりを可視化できました」と語る。

ゲオホールディングス 業務システム部 データシステム課(当時) 吉村公胤氏

 システムのクラウド化まで一気に進んだのは、情シスのチャレンジ精神と経営側の理解があったからだという。「インフラのお守りをしないで済むのはいいなあと以前から思っていたので、クラウドに移れてよかったです。他社の方から経営側がクラウドをなかなか認めてくれないという話を聞くと、うちは本当に恵まれていると思います」と吉村氏は振り返る。

経営側や現場部門のデータニーズに応えるデータシステム課

 このようにゲオホールディングスのシステム基盤は、パブリッククラウドとオンプレミスが混在しており、さらにマルチベンダーで適材適所のクラウドサービスを用いている。こうした環境において、まさにシステム間のデータ連携ハブとなっているのが、アプレッソの「DataSpider Servista」である。

 アプレッソのDataSpider Servistaは、GUI画面でフローを設計できるデータ連携ツール。フォーマットの異なる膨大なデータを収集・加工することで、「つないで・まとめて・取り出せる」データハブとして機能する。アダプタを介してAWSやMicrosoft Azure、kintoneなどさまざまなクラウドにつなぐことができ、ExcelやBIツールなどで利用できる。最新バージョンのDataSpider Servista V4では、IoTやビッグデータを前提としたエンジンの高速化、クラウドの連携強化などが図られている。

 ゲオホールディングスでのDataSpider Servistaの導入を担当した吉村氏と土谷浩司氏は、マスター管理とデータ活用を手がける業務システム部のデータシステム課に所属している。

 データシステム課の役割は、経営側や現場部門のリクエストに応じて、基幹システムなどからデータを抽出し、提供することだ。「基本的には予実や業績、日の売り上げなどの情報はBIサイトを設けていて、ユーザーに公開しています。でも、スポットで分析したいという依頼もあるので、そうした依頼を専門で受け付ける窓口も用意しています。たとえば、マーケティング部門は独自にデータベースを持っていますので、そこに対して基幹系のデータを流し込んでくださいという依頼です」(土谷氏)。

ゲオホールディングス 業務システム部 データシステム課 土谷浩司氏

 こうした依頼に対して、基幹システムのバックアップ機にあたるOracle Exadataからデータを取り出し、前述したkintoneやマーケティング部のデータベース、外部サイトなどに配信するのがデータシステム課での2人の役割になる。扱うデータもマスターデータや日次業績、POSデータ、アプリのログなど幅広い。用途の異なるデータをいかに迅速に、使いやすい形で提供できるかがデータシステム課の大きなテーマだ。

Visual Basicやバッチファイルが乱立したデータ分析の現場

 データシステム課がDataSpider Servistaの導入を検討し始めたのは、基幹システムのAWS移行が検討され始めた2014年にさかのぼる。それまでデータ集計はMicrosoft AcccessやVisal Basicアプリ、バッチファイルなどで行なっており、しかも30台程度のクライアントで個別に処理していたという。「データに対してSQLを生成し、集計するというタイプのアプリで、部内で200~300くらいありました。統括する側からすると、どこでなにをやっているかわからず、属人化していました」(土谷氏)というのが悩みだった。当然、担当の異動もあり、スキルもばらついていたため、作業の引き継ぎが大変だったという。

 もう1つの課題は、データの増大とそれに伴うデータ活用の需要だ。「2014年以前はデータ自体も少なかったし、事業部門でもデータを見たいという要望があまりなかった。宅配レンタルサービスのデータやスマホアプリのログも取り込むようになってきたので、データ量はやっぱり増えましたね。事業部門でも『せっかくデータがあるなら活用したい』ということで、リクエストが増え、データマートも肥大化してきました」と吉村氏は語る。

「事業部門でも『せっかくデータがあるなら活用したい』というリクエストが増えてきました」(吉村氏)

 吉村氏もDataSpider自体は以前から知っていたが、長らく導入には至らなかったという。これは自前で開発できるから不要という意見が開発部門であったからだ。そのため、データ連携ツールを選定するに際しては、単に作れるだけではなく、スキルセットを持ってない人でも十分に使いやすい、覚えやすいという効果が重要だった。「いろいろ調べてみると、プログラミング知識なしでも作れますと謳うETL製品も、実際はプログラムフローの設計思考がないと作れないということがわかってきました」(吉村氏)とのことで、なかなかフィットしたものが見つからなかった。

 こうした中、ビジュアル面での使い勝手が優れており、商用製品としてのサポートが受けられる製品として白羽の矢が立ったのがDataSpider Servistaだ。「最後は国産製品同士の一騎打ちになったのですが、価格面でもそれほど差がなかったので、製品選定は本当に困りました。正直言って商用サポートの差くらいですかね」と吉村氏は吐露する。

スキルがなくてもGUI画面でアイコンを並べればフローが作れる

 DataSpiderの導入は販売代理店であるアシストのサポートを受け、基本的にゲオホールディングス側で行なった。オンプレミスなので、自社でサーバーを構築し、インストールした後、1ヶ月くらいで2~3つ程度のタスクを分析するところまで行き着いた。現状は分析したいデータを15分間のタイミングでスキーマに取り込み、必要なときにデータマートに加工しているという。生成されたデータマートをベースに、経営用の集計データを作成したり、現場部門用のExcelレポートに落とし込んだりしている。

 DataSpider Servistaのメリットとして大きかったのは、やはり教育コストが安い点だという。現在、DataSpider Servistaを利用している人員は5名。このうちVisual Basicでプログラムが書けるのは2人しかいないが、残りのメンバーも問題なくDataSpider Servistaになじんでいるという。

 吉村氏は「DataSpider ServistaではGUIでアイコンを並べればフローができます。あとはアダプタのアイコンを選択して、データベースのどの部分からデータを引っ張ってくるか、どのテーブルのデータをマージするかなどを設定すればOKです。コードを書くかのように、処理の前の条件などをGUIで設定できます」と使いやすさについてこう評価する。Visual Basicなどで記述していたデータベースのアクセスなどが、GUIで作れるため、開発効率が高い。

 土谷氏も「複雑な処理はアイコンがごちゃっとするし、コードの方がわかりやすいところはあるのですが、簡易的な処理を作るのはすごく便利です。システム出身ではないメンバーでも扱えるので、教育コストがかからないのがいいところだと思います」(土谷氏)と評価。複雑な処理でも、中間で外部アプリケーションを呼び出せば、処理としては1つのフローとして扱えるという。

 もう1つのメリットはデータ連携に必要なものがワンセットで用意されているところだという。「たとえばVisual Basicでアプリケーションを作ると、パソコン上でタスクスケジューラーを動かさなければならず、一貫して管理ができなくなります」(吉村氏)。しかし、DataSpider Servistaの導入により、処理が一元的に統合され、作られたソースの管理も一元的に行なえるようになったという。

開発部門から「だってDataSpiderあるでしょ」と言われるようになった

 DataSpider Servistaのコストに関しては、立ち位置によって評価が変わるという意見だ。「開発部門のようにスキルセットを持っている側からすると高く感じるのが正直なところ。実際、導入当初、開発部門長にDataSpiderの本を見せたら、これならうちで作れるねと話していました。でも、スキルセットのない人にも使ってもらうという体制であれば適正だと思います」と吉村氏は語る。

 ただ、この風潮も最近変わりつつあり、開発部門からの依頼も増えてきたという。たとえば、最近ではkintoneでのデータ更新にDataSpider Servistaを活用しているが、これは開発部からの依頼。「最近、開発部門長から依頼を受けるときは、『だってDataSpiderあるでしょ』って言われます(笑)」(吉村氏)とのことで、業務システム部内で利用価値が浸透してきたようだ。

 今年はDR用で利用してきた副機のOracle Exadataも、保守切れを前にいよいよクラウドに移す。移行先はAmazon Redshiftと迷った末、結局Azure SQL DataWarehouseを選択した。「今では対応しているんですけど、検討していた当時、Redshiftは2バイトのデータベースオブジェクト名を扱えなかったんです。当初はそれでもがんばるかと思っていたんですけど、やはり保守切れまで時間がなかったので、Azure SQL DataWarehouseにしました。16TBの容量を選択しましたが、コスト的にもAzureの方が安かったので」と吉村氏は語る。

オンプレミスのOracle ExadataはMicrosoft Azureへ移行する

 こうしたAWS、Azure、kintoneなどのマルチクラウドの環境でもアダプタを導入すればすぐに接続できるのが、DataSpider Servistaの大きな魅力。「確かにデータベース製品にもETLツールは付いてきますが、その製品にしか使えません。その点、いろいろな環境で利用できるというのが、DataSpider Servistaの大きな価値だと思います」と吉村氏は語る。

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