工場見学に先立って開催された記者会見には、富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏が登壇。「FCCLは、あらゆる人、あらゆる場所で発生し、必要とされるコンピューティングをすべてまかない、顧客がライフスタイルを豊かにすることに貢献することを目指している」とした。
合わせて「富士通はFM8以来、35年にわたってPC事業を展開していること」「この1年間は匠の技を生かした攻めの製品開発が可能になっていること」、そして「顧客のニーズに合わせて1台単位から製品を製造でき、国内の生産拠点を活用し、短納期で納品できる点などが強みである」とした。特に開発、生産、サポートのすべてを日本で完結できる“スーパーバリューチェーン”は匠を支えるものになっているとした。
会見の合間では、海外向けのPR映像として、日本の工芸品とノートパソコンを組み合わせた動画が示された。島根富士通の宇佐美隆一社長は“匠”という言葉の意味について「匠にはクラフトマンシップという意味があるが、それよりはプロセス的なものを意識している。具体的には現場やそこで起きる物事を変え続けること、これをいかに継続できるか。些細な改善の積み重ねがイノベーションを生む」とした。
富士通 執行役員専務の河部本 章氏は、富士通が電話会社として始まり、情報分野に進出。ハードウェアなどの商品の上にSIなどのサービス事業を築いてきたとコメント。今後はデジタルサービスに舵を切るが、単にサービスを提供するだけではなく、強固なテクノロジーを基盤とした、サービスカンパニーである点を強調した。長年培った、クライアントサーバの深い技術に加え、IoTの技術も取り入れていき、FCCLのテクノロジーがどうサービスに結びつくかという視点でも見て欲しいとした。FCCLの強みは顧客に対して細かなカスタマイズができる点であり、技術を社会や人の繁栄に結びつけるか。Human Centric Intelligent Societyの実現に取り組んでいきたいとした。
また来賓として、島根県庁商工労働部の安川真史氏や出雲市長の長岡秀人氏、山陰中央テレビジビョン放送 代表取締役社長の田部長右衛門氏なども登壇した。
安川氏は溝口善経兵衛知事のことばを代読した。「島根富士通が、操業27年目を迎え、PCの一貫製造を行なう国内最大規模の工場として1000人を超える県内有数の企業に成長してきた。トヨタ方式をベースにした生産革新活動やIoTへの取り組みの成果を、全国に展開しており、県内の産業レベルを引き上げる役割も果たしている。島根県では、Rubyを中心にソフト系IT産業の集積が進みつつあり、経済産業省の地方版IoT推進ラボにも、しまね研究開発センターが選定された」などとコメントした。たたら製鉄などにも言及し、古くからモノづくり産業が、この地域の文化を支えているとした。
長岡市長は「島根富士通は、地元企業という思いでいる」とコメント。「2015年には、第6回ものづくり日本大賞において経済産業大臣賞を受賞。平成23年からは出雲モデルを展開し、平成25年には3000万台を出荷した。FCCLの分社化から1年が経過したが、これを機にさらなる発展を続けてほしい。今後、モノを作りへの期待だけでなく、教育分野における協力などにも期待している」とした。
田部氏は「富士通グループと長いつきあいがあり、合弁会社を設立したり、富士通の機器販売を行なうグループ会社もある」と緊密な関係をアピール。「出雲モデルを全国に発信してもらうことは地元企業としても喜ばしい」とし、「富士通のパートナーとして最新技術を勉強し、島根から全国に発信していきたい」と語った。