富士通は、PCの国内生産にこだわり続けている。
現在、日本国内向けPCの生産は、ノートPCが島根県斐川町の島根富士通で、デスクトップPCは福島県保原町の富士通アイソテックで生産。さらにタブレットPCを兵庫県加東市の富士通周辺機で生産している。
日本で基板からPC生産を行っているのは、いまや、富士通の島根富士通と、パナソニックの神戸工場だけだ。それ以外の工場は、台湾メーカーの中国工場などのODMを活用。国内での生産といっても、アセンブリだけに特化するという仕組みになっている。
柔軟さを持った国内でのPC生産
では、なぜ富士通は、国内生産にこだわるのか。
それにはいくつかの理由がある。
1つは、神奈川県川崎市の川崎工場にある同社開発部門との緊密な連携がとれる環境にあるという点だ。
とくにノートPCのように小型、軽量化が求められる製品では、開発現場との連携が品質の高い製品づくりに直結しやすい。
生産現場で発見した問題点を開発現場にフィードバック。それを反映し、生産しやすい設計へと変更することで、品質を維持した格好で生産をすることが可能になる。
また設計変更を行った際にもすぐに生産現場に反映できるメリットは、性能向上、品質向上でも大きな効果をもたらすことになる。
こうした取り組みは、海外のODMを活用していては不可能だ。契約に基づいて生産を行っているだけに、細かい修正でも次のロットや次のモデルの生産まで待たなくてはならないだろう。
また、島根富士通では生産現場の社員を、開発現場に出向させるなど、開発・生産一体型の体制づくりにも余念がないが、こうしたことも国内の自社工場だからこそ行える密な連携のひとつといえる。。
2つめには、生産数量の調整が柔軟に行えるという点だ。
海外のODMの場合、一定の発注量を生産するという契約が基本であるため、需要の増減にあわせて生産数量を変えるということが難しい。だが、国内の自社工場の場合、需要の変動にあわせて生産数量をコントロールしやすい。人気機種が予想を上回る需要となった場合にも、それにあわせて増産体制を構築できる。
かつてWindows Vistaの発売の際に、富士通では当初は普及機が売れると判断したが、実際には上位モデルが人気となり、生産数量を大きく変更したことがあった。これも国内生産だからこそ成しえたものだ。
また物流面でのメリットも大きい。国内市場を対象にする製品の場合、受注、生産、納品までの期間を短くでき、物流コストも引き下げられる。この点も海外生産との差は大きいといえよう。
さらに、カスタマイズにも柔軟に対応できるようになる。企業ユーザーの要望にあわせて仕様を変更するといった対応も国内生産であれば柔軟に、短期間に対応できるというわけだ。

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