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プロビジョニング高速化技術や新プロトコル、IBMクラウド基盤のDaaSなどを発表

「VMware Horizon」デスクトップ仮想化ポートフォリオを強化

2017年02月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ヴイエムウェアは2月8日、オンプレミス型のデスクトップ仮想化製品の最新版「VMware Horizon 7.1」、およびアプリケーション仮想化専用パッケージ「VMware Horizon Apps」、IBM Cloudのインフラで提供する新しいDaaS(Desktop-as-a-Service)の「VMware Horizon Cloud」を発表した。いずれも今年4月から提供を開始する。

 記者説明会には、ヴイエムウェア シニア プロダクトマーケティング マネージャの本田豊氏が出席し、新しいHorizon製品/サービス群が提供するテクノロジーや機能を説明した。

ヴイエムウェア シニア プロダクトマーケティング マネージャの本田豊氏

新しい製品/サービスを加えたHorizonのポートフォリオ

デスクトッププロビジョニングを高速/柔軟にする「JMP」などの新技術

 Horizon 7.1やHorizon Apps、Horizon Cloudでは、新たに「JMP(ジャンプ)テクノロジ」と呼ばれる技術/機能群が採用されている。JMPは「Just-in-Time Management Platform」の略語で、この技術によって、各ユーザーに対するデスクトップ/アプリケーションの配信にかかる時間を短縮するとともに、動的なポリシー適用を可能にする。

「JMP(ジャンプ)テクノロジ」は大きく3つの技術で構成される

 具体的には、コンテナベースのアプリケーション配信技術「VMware App Volumes」、システム(OS)イメージを高速にクローンする「Instant Clone」、仮想/物理/クラウドを問わずユーザー環境を一元管理する「User Environment Manager(UEM)」という3つの機能を連携させ、個々に独立しているOSイメージ/アプリ/ユーザー環境を組み合わせることで、リアルタイムに各ユーザーの仮想デスクトップを構成する。

 このうちApp Volumesは、ユーザーのデスクトップ(VM)にアプリを配信するコンテナベースの技術だ。管理者側でユーザーごとに配信するアプリを設定することができ、配信されたアプリはデスクトップの再起動なしでリアルタイムに追加(アタッチ)され、すぐに利用可能になる。

「App Volumes」はコンテナベースのアプリ配信技術

 また、Instant Cloneは、稼働しているデスクトップのクローンをメモリ上に生成する技術で、従来比で「約30倍高速」(本田氏)なクローンが可能になる。またUEMは、ユーザー環境を管理するだけでなく、動的なポリシー適用も可能にする。

 本田氏は、JMPテクノロジによって、たとえばOSのアップデート/パッチ適用もゼロダウンタイムで実行できる(バックグラウンドでアップデートを実行し、ユーザーがログオフ/再ログオンすると新しいOS環境に更新される)ほか、UEMによってユーザーがオフィスを移動すれば自動的に最寄りのプリンタが設定されるようにすることもできると説明した。

 「他社の(仮想デスクトップの)ソリューションと比較して、設定に必要な手順と時間は、だいたい半分以下に削減できる」(本田氏)

 また、従来のPCoIPプロトコルやRDSプロトコルに代わり、昨年リリースのHorizon 7から採用している画面転送プロトコル「Blast Extreme」についても、パフォーマンスをさらに向上させた「BEAT(Blast Extreme Adaptive Transport)」というテクノロジーが発表されている。BEATの適用により、従来比で6倍のスピード、利用帯域幅の50%削減を可能にしたという。

 BEATの開発背景について本田氏は、モバイルワーカーの増加によって、外出先から不安定な公衆無線LANやテザリング回線を介して仮想デスクトップを使うケースも増えたことを説明。遅延やパケットロスといった回線状況の変化に追随して、動的に動画のビットレートなどを最適化するBEATにより、低速回線であっても仮想デスクトップが快適に利用できることを説明した。


▲35秒より、10%のパケットロスが発生している5Mbpsの低速回線での動画再生比較
(左:BEAT未適用、右:BEAT適用)


 なお今回発表されたHorizon Appsは、Windowsアプリケーションを仮想化し、アプリケーションウィンドウだけを転送する製品。MacなどからWindowsアプリを利用したいユースケースに加えて、Webブラウザを仮想化しセキュリティを確保する「インターネットアクセス分離」の用途にも適用できる。

オンプレミスも統合し、月額サブスクリプションライセンスで利用できるDaaS

 Horizon Cloudは、パブリッククラウドのIBM Cloud(SoftLayer)を基盤として利用する新しいDaaSだ。上述したJMPやBEATのテクノロジーも採用している。

Horizon Cloudでは、パブリッククラウドとオンプレミス(HCI)をシンプルな単一価格で利用可能にする

 ヴイエムウェアではこれまで、vCloud Airを基盤とするDaaS「VMware Horizon Air」を提供してきた。今回のHorizon Cloudは、単に基盤とするパブリッククラウドが異なるだけでなく、提供形態やライセンス形態の面でも違いがある。

 「これまで提供してきたHorizon Airは、ヴイエムウェアでも成長率の高いサービスとなった。ただし、顧客が増えるにつれて利用形態の幅も広がってきた。今回、Horizon Cloudをリリースする1つの理由は、そうしたユースケースの幅を拡大していくことにある」(本田氏)

 Horizon Cloudでは、クラウドベースの管理プレーン(管理コンソール)が提供され、パブリッククラウドからDaaSとして提供される仮想デスクトップと、顧客企業がオンプレミスに設置するハイパーコンバージドインフラ(HCI)上で稼働する仮想デスクトップの両方を統合管理できる。これにより、たとえば正社員のデスクトップはオンプレミスでホストしながら、頻繁に増減する契約社員のデスクトップはDaaSを利用する、といったユースケースが容易に実現する。

 また、Horizon Airではデスクトップ数ライセンスを採用していたが、Horizon Cloudではオンプレミス環境も含めて月額サブスクリプション型のライセンスが適用される。具体的には、ユーザー数ライセンスまたは同時接続数ライセンスがベースとなり、それに加えてDaaSの場合は、利用するハードウェアキャパシティ(現在のところ、CPU/ストレージなどがパッケージされたスタンダードと、そのGPUを強化したワークステーションの2種)を追加購入する仕組みだ(HCIの場合は追加コストなし)。

 なお、グローバルではHorizon Airの提供も継続されるが、Horizon AirはvCloud Airを基盤として提供するDaaSであり、vCloud Airの日本ロケーションは今年3月で提供を終了する。そのため4月以降、ヴイエムウェアが日本国内のデータセンターから提供するDaaSはHorizon Cloudのみとなる。

 「仮想デスクトップの導入は国内企業でもかなり進んできたが、『VDIはシステムが複雑』『初期導入コストがかかりすぎる』といった顧客の声が多かった。今回発表の新テクノロジーやHorizon Cloudで、こうした声に対処でき、確実に成長していくものと考えている」(本田氏)

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