Dolby Digital? Dolby Atmos?
それらの区別をわかりやすく解説
記事を読んでいて、Dolby DigitalやDolby Atmosと似たような言葉がたくさん出てきたことに戸惑っている人も少なくないだろう。最後のまとめとして、これらのサラウンド音声フォーマットをわかりやすく分類・解説していこう。
詳しくは表でまとめるが、多くの人が混乱しやすいさまざまなサラウンドフォーマットは、基本的に再生チャンネル数、圧縮方式、サンプリング周波数/量子化ビット数で分類することができる。
もっとも基本となるのが、Dolby DigitalとDTS Digitalサラウンドだ。これはDVDで主に採用されているものと考えていい。チャンネル数は最大5.1ch。
これが6.1chまたは7.1chに拡張されたものとして、Dolby Digilal EX、Dolbyサラウンド7.1ch、DTS-ESがある。これらはDVDの後期で登場した拡張フォーマットだ。
BD時代に入って新たに採用されたのが、ロスレス圧縮(可逆圧縮。完全に元の状態に戻せる)技術とハイレゾ音声への対応した技術。これが、Dolby TrueHD、DTS-HD MasterAudioだ。DTSでは、ロッシー(非可逆。完全には元の状態に戻せない)圧縮のままでハイレゾ対応したDTS-HD High Resolution Audioもある。
そして、現代の最先端のサラウンドフォーマットが、Dolby AtmosとDTS:Xとなる。実際に接続されたスピーカーに合わせてレンダリングを行なうため、具体的なチャンネル数は規定されていないが、実際に発売されているAVアンプなどの対応を見ると、多くは最大で7.2.4chをサポート(製品により異なる)。
ハイエンド機では9.2.6chやそれ以上をサポートするモデルもある。そのほかはDolby AtmosならばDolby TrueHDと共通だし、DTS:XもDTS HD Master Audioと共通だ。
これらはいずれも上位互換なので、Dolby Atmosならばそれよりも下位のフォーマットはすべて対応している。
もうひとつわかりにくさを助長しているのが、Dolby サラウンドやDTS Neural:X。これらはサラウンド再生を拡張する技術なので、音声フォーマットではない。これを区別するだけでも随分とわかりやすくなる。
主なサラウンドフォーマットのスペック | ||||
---|---|---|---|---|
チャンネル数 | 圧縮方式 | サンプリング周波数/量子化ビット数 | Dolby系 | DTS系 |
5.1ch | ロッシー | 48kHz/16bit | Dolby Digital | DTS Digitalサラウンド |
6.1/7.1ch | ロッシー | 48kHz/16bit | Dolby Digital EX Dolbyサラウンド7.1 |
DTS-ES |
最大7.1ch | ロッシー | 最大96kHz/24bit | ―― | DTS-HD High Resolution Audio |
最大7.1ch | ロスレス | 最大192kHz/24bit | Dolby TrueHD | DTS-HD MasterAudio |
5.1.2など | ロスレス | 最大192kHz/24bit | Dolby Atmos | DTS:X |
特にわかりにくいDolbyサラウンドを例に説明しよう。これらは、5.1chの音声を7.1chや5.1.2chなどに拡張して再生する技術。Dolbyは昔ならば、Dolby Pro Logic(同II/IIx/IIzなど)と呼んでいたが、Dolby Atmos以降はDolbyサラウンドと呼んでいる。
この名称はもともとアナログ記録時代の3-1方式サラウンド音声の名称だったので、年期の入ったベテランほど勘違いしやすい。
DTSもかつては「DTS Neo:6」「DTS Neo:X」あるいは「Neural Surround」という名称を使っていたが、DTS:X以降は「DTS Neural:X」に統一された。
Dolby AtmosはDolbyサラウンドがセットになっていて、Dolby Digitalの5.1chも5.1.2chなどの拡張しての再生が可能。DTS:Xも同様でDTS Neural:Xがセットになっている。
次回はお手軽に楽しめるサラウンドシステムを紹介
これで、最新のサラウンド技術のことがよくわかったと思う。Dolby AtmosはBDだけでなく、Windows10やXbox Oneにも広がり、より多彩なコンテンツで臨場感豊かなサラウンドが楽しめるようになる。
次回は、サラウンド再生を楽しむためのホームシアターやサラウンドヘッドフォンを紹介。Dolby Atmos対応の本格的なシステムではなく、誰でも容易に楽しめるお手軽なサラウンドシステムを紹介していく。ゲームでのサラウンド再生に注目している人なら必見の内容だ。
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