鳥のように自由気ままに空を飛べる飛行機。でも個々の飛行機が自由気ままに飛んでいると、進路が交差してしまったり、前の飛行機に追いついてしまったりでとても危険。飛行機は車と違って速度を落とし過ぎると飛ぶ力(揚力)を失ってしまうので、車のようなフルブレーキをかけられないのだ。
次の図は、世界各国の飛行機が飛んでいる瞬間を捕らえたもの。一種のレーダー画面だと思ってもいい。右側は日本で、左側はアメリカの南部まで表示してある。この一瞬にも世界には、これだけ多くの飛行機が空を飛んでいるのだ。
一見無秩序に飛んでいる飛行機だが、実は道路よりも厳しいルールの元、秩序正しく運航されている。だから混雑していても、安心して目的地まで快適な空の旅を満喫できるのだ。
その最たるルールが、空にある見えない道とインターチェンジ。先のレーダー画面を見ると、ありの大群が道を成すように、飛行機のマークが道を成しているのが見えてくるだろう。一番分かりやすいのは、アメリカ東海岸を出てヨーロッパに向かう大西洋横断。よく見ると6車線ぐらい軌跡が見えてくるはずだ。
こうして空には、目に見えない電波の道が作られていて、高度や速度が厳しく守られている。今回は、見えない空の道を整備する、国土交通省の航空局 交通管制部 運用課の方から、驚きのメンテナンスを教えていただいた。
先に世界的なレーダー画面を見てもらったが、もう少し身近なところを見てみよう。それが下の画像だ。これは右側が千葉の房総半島、左が山口県までを示したもの。世界地図では無秩序に飛んでいるように見える飛行機も、拡大するとこうしてキレイに順序良く、いくつかのコースの上を飛んでいるのがよくわかるだろう。
さらに羽田空港付近だけに着目すると、北から来る飛行機も、南から来る飛行機も、必ず同じ経路をたどって北進しながら羽田空港に着陸(水色の飛行機)している。
また緑の出発機にも特徴がある。東西南北どちらに行くにしても、羽田を飛び立った瞬間に右旋回するのだ。西に向かっている飛行機ですら、羽田を飛び立つとまず東に旋回する。
このように空港周辺には、まるでインターチェンジのように複雑に入り組んだ道筋があり、飛行機は必ずその筋に沿って飛ぶようになっている。
また、空港と空港を結ぶ大動脈は、高速道路のように直進する道筋が設定されている。いわば高速道路のようになっているのだ。そして飛行機は前の飛行機を追い抜かないように、一定の距離を置いて順序よく飛んでいるのがよく分かる。
さらに言うと、国と国をつなぐ国際高速道路も設定されていて、これらは一番高い高度を飛ぶようになっている。なので日本上空を通過するアメリカ-韓国や中国間の飛行機と、国内線の飛行機が同じ経路をたどっても、高度が違うため衝突することがない。
空港周辺はさらに低空を飛行するので、空港間を結ぶ高速路線と交差していても、これまた衝突することがないように、うまく道が作られているのだ。