クラウドの力を見せつけたAWS re:Invent 2016 第2回
re:Invent 2016で披露された広くて深いインスタンスの進化
FPGAも導入!世代交代するEC2と3ステップで使える「Amazon Lightsail」
2016年12月01日 08時30分更新
11月30日、ラスベガスで開催中のAWSの年次イベント「AWS re:Invent 2016」の3日目、基調講演にアンディ・ジャシー氏が登壇した。例年通り、数多くのサービスが登場したが、ここでは前半のコンピュート関連の新機能・新サービスを紹介する。
圧倒的な成長率と新機能の追加を続けるAWS
re:Inventの基調講演では例年AWS CEOのアンディ・ジャシー氏が登壇し、ビジネス概況やユーザー事例、新サービスを披露するのが恒例になっている。昨年は「7つの自由」というテーマで既存のベンダーからの解放を謳ったが、今年のre:Inventは「スーパーパワー」というキーワードで、AWSによって実現するさまざまな可能性について語った。「オンプレミスでは得られなかった超人的な力がわれわれの手の中にある。オンプレミスでは得られなかったスーパーパワーによって、お客様はこれまで克服できなかった課題を解決でき、夢見ていたアイデアを迅速に具現化できる」とジャシー氏は語る。
ジャシー氏はAWSの最新アップデートを披露し、Q3での売り上げが前年度比55%増の130億ドルを記録したことをアピール。アクティブユーザーも数百万にのぼっており、あらゆる業種のエンタープライズ、パブリックセクター、スタートアップなど幅広く拡大している。また、ジャシー氏は圧倒的なリーダーポジションを確保するガートナーの最新のマジッククアドラント(IaaS)や既存のITベンダーを大きく凌駕する成長率などを披露し、絶好調とも言えるビジネス概況をアピールした。「オラクル、マイクロソフト、IBMなど古いテクノロジー企業が収縮している。AWSは数十億ドルの規模でもっとも成長しているテクノロジー企業だ」とジャシー氏は語る。
AWSはインフラレイヤからマーケットプレイスまで幅広いサービスのラインナップを揃え、今年の新機能も昨年の722を大きく越える1000以上に上る見込みとなっている。イノベーションのペースはますます加速しているというわけだ。
より高性能なコンピュートとして世代交代するEC2
こうしたAWSのベーシックなサービスであるEC2のコンピュートは、現在用途にあわせた9種類のインスタンスファミリーが用意されている。最新のP2インスタンスではGPGPUを提供し、機械学習などで利用できる。今回はこのうち4種類のインスタンスに新ラインアップが追加された。
低価格でありながらバースト可能なT2ファミリには16GiBメモリの「T2.xlarge」と32GiBの「T2.2xlarge」が追加。また、高速なDBや分散キャッシュ、インメモリ分析を前提にメモリを最適化したRファミリーには、新たにメモリ容量・性能、L3キャッシュ、vCPUコアをR3に比べて2倍確保した「R4インスタンス」が追加された。
NoSQLやHadoop、DWH向けのIファミリーにも新世代の「I3インスタンス」が追加。I3ではI2に比べて、2倍のvCPUコアと2倍のメモリ、NVMe SSDの採用により、I2の9倍のIOPSを実現する。さらに、コンピュート処理にフォーカスしたCファミリーも72のvCPUを搭載する「C5インスタンス」が登場。CPUをインテルのHaswellからSkylakeに世代交代させることで、高い性能やIOPSを実現しているという。総じて、EC2インスタンスの性能は底上げされ、新世代への移行が進んできたと言えるだろう。
また、EBSのボリュームを利用しているユーザーに向けて、「Elastic GPUs For EC2」を新たに発表した。Elastic GPUs For EC2によって、既存のEC2にGPUだけを付与して利用できる。「一部だけGPUが必要だが、GPUに特化したインスタンスまでは必要ないといった場合に有用だ。GPUをすべてのインスタンスにアタッチすることができる」とジャシー氏は語る。
手軽に仮想マシンを立ち上げられるAmazon Lightsail
今回はEC2のラインナップがさらに拡大された。まずエントリ向けとして新たに提供されるのが、仮想サーバーを今までより容易に構築できる「Amazon Lightsail」だ。
現在、もっともエントリとなるのはT2インスタンスだが、初心者にはまだまだ敷居が高い。「インスタンスを理解し、オートスケールを設定したり、セキュリティグループを作ったり、S3を学ばなければならない。でも、多くのお客様からVPSを簡単に立ち上げたいという要望があった」とジャシー氏は語る。
こうした要望に応えたのが「Virtual Private Servers(VPS) Made Easy」を謳うAmazon Lightsailで、Webサーバー、ブログ、開発環境、プロトタイピング、サーバー構築など軽量なワークロードの利用を想定している。
利用は簡単で、WordPressやNginx、Drupal、node.jsなどのアプリケーションやOSのインスタンスイメージ、料金プランをGUI画面から選択し、インスタンス名を入力すれば、仮想サーバーが立ち上がる。既存のEC2インスタンスと異なり、SSDのアタッチやセキュリティグループの作成、アクセス管理、ネットワーク設定も自動的に行なわれる。また、従量課金の他のサービスと異なり、Amazon Lightsailでは固定の料金体系となっており、5/10/20/40/80ドルのプランが用意される。プランによってスペックが異なり、ネットワーク転送料も含まれるという。
一方、GPUを利用可能なP2インスタンスの上位ファミリーとして新たに追加されたのが、ユーザーごと異なるカスタムFPGAを利用できる「F1インスタンス」。顧客ごとにカスタムロジックを開発し、XilinxのFPGAにパッケージングし、アクセラレーション化されたワークロードを動かすことができる。
LightsailとF1インスタンスの追加により、AWSのコンピュートのファミリは9から11に拡大。これらのEC2にElastic GPUs On EC2を組み合わせることで、必要なときにはGPUを利用する環境が整うことになる。「みなさんのワークロードはいろいろある。だから、このような広範なケイパビリティを用意することは非常に重要だ」とジャシー氏は語る。
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