書類と会議時間が減り、顧客との対面時間が増えた
内田洋行では1989年に知的生産性研究所を開設。「働き方」と「働く場」の実証研究を推進。さらに2012年1月からは、営業部門における「働き方変革」を研究するために、社内実証をする「チェンジ・ワーキング」プロジェクトを開始。ワークショップや分科会活動を通じて、課題を見つけるとともに、変革に関する目標の共有や、達成に向けた変革促進施策の抽出などをしてきた。
過去4年間のチェンジ・ワーキングブロジェクトの実績として、個人所有の書類が6.1fm(ファイルメーター)から1.6fmに減少。会議時間は95分から75分に21%削減。会議室稼働率は38%から57%に増加し、顧客との対面時間は24%から43%へと1.8倍増加したという。
今回の新製品にもこれらの取り組みが反映されている。
内田洋行の大久保昇社長は「日本では1995年をピークに、生産年齢人口の減少がみられている。そうしたなかで、生産性や効率性は経営者にとって最大の関心。なかでも、その生産性、効率性を実現するために、経営者に加えて現場においても関心が高いのが、コミュニケーションの活性化や組織間連携の強化」だとし、今回の新製品もそうした動きを反映したものだと位置づける。
そして昨今の社内実践のなかからはオフィスワーカーが1日の3分の1の時間をコミュニケーションに費やしており、社内のソロワーク時間の9割は自席以外でできる点などが浮き彫りになったという。
「今回発表した新製品は社員が主体的に、働く場を選べる環境を実現するための製品。可変性、柔軟性を高めたオフィス家具であり、アクティブ・コモンズを進化させることができる」と、大久保社長は語る。
アクティブ・コモンズは一般的なフリーアドレスではなく、部門を越えたコミュニケーションの強化と、他者とのスピーディーな情報共有、自己作業の集中といった仕事の内容に合わせた場所を選択する働き方を実現しるもので、その事例のひとつとして、総務省行政管理局情報企画室の導入例をあげ「総務省行政管理局情報企画室では、課長も自席を持たないという環境を実現。あの霞が関がここまで変わるのかというような状況が生まれている」(大久保社長)とする。
今回のアクティブ・コモンズの新たな進化では「自在な働き方をサポートする空間づくりへの挑戦」を掲げ、集中したソロワーク、専門性の高いプロジェクト型、思い立ってすぐにできるミーティング、他者と情報を共有するカフェワーク、最新情報に触れるライブラリワーク、休憩の合間のラウンジワークといった提案をしている。
また従来は効率性、統一性という観点から、オフィスファニチャーのカラーには、ホワイトが採用されることが多かったが、昨今ではクリエイティブな作業を促進するという観点から、木目調やブラック調が求められており、カラフルな配色も採用した。
内田洋行では本社に隣接する新川第2ビルのワークスペースをリニューアル。固定席を廃止し、オフィスワーカー自身が仕事内容に応じて最適な場所を選んで業務ができる環境を作ってみせた。
このなかでは、スタンディング・コミュニケーションや、ソロワークとグループワークの可変性を取り入れ、リラックス空間の提供や、健康や活力の訴求、能動的な仕事の仕方を提案しており、「これがアクティブ・コモンズの第2クールになる」とする。
新たなオフィス環境はコミュニケーションを促進し、社内外とのコラボレーションも加速。それが企業の活性化につながることになる。
ちなみに、「コラボレーション」は内田洋行の登録商標だ。
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