急速に激化する市場に追従できず
次第に影が薄くなっていく
Broadcom傘下となったServerWorksは、ついでPentium 4ベースとなるXeon向けのGrand ChampionことServerSet GCシリーズを2002年5月に発表する。すでに2001年秋のIDFでは試作機もこっそり展示もされており、実際特定のサーバーメーカーなどには早期からリリースされていたようだが、発表は2002年までずれ込んだ。
主なスペックは下表に示す通りで、特にハイエンドサーバー向けのServerSet GC HEはRAS機能が非常に強化されている。こちらも当初は売れ行きは順調だった。2003年1月には、延べ1000万個のチップセットを出荷したというリリースも出ている。
ServerSet GCシリーズ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
ServerSet GC HE | ServerSet GC LE | ServerSet GC WS | ServerSet GC SL | |||
Processor | Xeon DP/Xeon MP | Xeon DP | Xeon DP/Xeon | Xeon DP/Xeon/Pentium 4 | ||
FSB | 400MHz | 533MHz | ||||
Memory Bus | DDR-200×4 | DDR-200×2 | DDR-266×1 | |||
Memory 最大容量 |
64GB | 16GB | 8GB | |||
ChipKill | Yes | |||||
Spare Memory | Yes | No | ||||
Memory Mirroring | Yes | No | ||||
AGP | No | AGP 4x | No | |||
IMB | ×3 | ×2 | ×1 |
ただ、2003年3月にVegesna氏が退任したあとから、次第に同社の影は薄くなっていった。理由は2つある。1つはPCI-Xには強かったものの、PCI Expressへのトランジションが遅れたことだ。
確かにサーバー市場は保守的な業界なので、PCI Expressへの移行はコンシューマー向けと比べても遅かったのだが、そうは言ってもPCI-Xの先にPCI-X/PCI Express Bridgeをつなぐというソリューションは、耐故障性の観点からサーバーメーカーには歓迎されなかった。
もう1つは、CPUの急激な進化に追いつけなかったことだ。2003年にAMDがOpteronを発表したことで、インテルはこれに対抗すべくFSBを引き上げたりMCMパッケージでのデュアルコア化を進めたり、と急速に製品ラインナップを変更していく。
これにあわせてメモリーもDDR-400の投入やDDR2の早期標準化などを急いだ結果、ServerWorksの製品はあっという間に時代遅れになってしまった。
おそらくこれはVegesna氏がいたらなんとかなったという問題ではなく、Opteronの出現で急速に激化したx86のサーバー市場に追従して行けず、振り落とされた形だ。ただVegesna氏ほどのインテルとの太いパイプを、後任のDuane R. Dickhut氏が持っていなかったのは、やはり遅れを取る原因の1つではあったと思う。
Broadcomはこの前に、MIPSベースのプロセッサーを作っていたSiByteを買収しており、またこの後にはやはりMIPSベースのプロセッサーを作っていたRMI Corporationを買収している。
現状残っているのはこのRMI Corporationの製品がいくらかという程度で、すでにSiByteの製品もServerWorksの製品も(サポートはまだ継続しているようだが)販売はとっくに終了している。
この当時、Broadcomはサーバー市場に進出する強い意欲を持っており、SiByteやServerWorksの買収は、その足がかりとなるはずだったのだが、結果から言えばどちらも足がかりとはなり得ておらず、その意味ではBroadcomは大金を投じて外れを引いた感は非常に強い。
もっとも途中からBroadcomの方針も変わっていた節が見受けられるので、よくありがちな「戦略変更にともない無駄金になった」というあたりが正しい評価なのだろう。
ちなみにVegesna氏はその後、Network Storage関連製品を手がけるServerEnginesを創業するが、ここも2010年にEmulexに買収された。現在はSify Technologies Ltdで取締役会議長兼マネージングディレクターを務めているそうだ。
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