x86サーバー向けチップセットのシェアを
9割獲得したChampion 3.0
1999年4月にRCCは第3世代となるChampion 3.0をリリースする。Champion 2.0との違いは、133MHz FSBとPC133に対応したことである。この世代になるとやっと情報が入手できるようになった。
Champion 3.0は3製品が用意されている。スペックを簡単にまとめたのが下表であるが、ローエンドの1P/2Pサーバー向けがChampion 3.0 LE、高性能ワークステーションもしくは高機能サーバー向けがChampion 3.0 HE-SL、4Pサーバー向けがChampion 3.0 HEだ。
Champion 3.0シリーズ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
Champion 3.0 HE | Champion 3.0 LE | Champion 3.0 HE-SL | ||||
Processor | 100/133MHz FBS×4 | 100/133MHz FBS×2 | 133MHz FBS×2 | |||
Memory Bus | PC-133×4 | PC-133×1 | PC-133×2 | |||
最大Memory容量 | 16GB | 4GB | >8GB | |||
ChipKill | Yes | No | Yes | |||
PCI-X | 64bit/66MHz×2 | 64bit/66MHz×1 | 64bit/66MHz×2 | |||
AGP | No | No | AGP 4X |
このChampion 3.0は、ローエンドからハイエンドまで、さまざまなメーカーに幅広く採用されており、この頃同社のチップセットはx86サーバー市場のシェアの90%を取ったとまで言われた。理由は簡単で、この頃インテルはRAMBUSとの契約の関係でDirect RDRAMを使ったチップセットしか出せなかったためだ。
インテルは2P Xeon向けにIntel 840チップセットをリリースしたが、カタログスペックはともかく実際にベンチマークをしてみると、Intel 840はChampion 3.0 LEと同等以下の性能しか出せず、Champion 3.0 HE-SLとは比較にもならなかったという結果がこの当時いくつか記事として上がっている。
こうした状況で、しかも高価でメモリー容量も少ないDirect RDRAMを積極的に選ぶ理由は皆無であり、結果インテルですらSAI2/STL2/SBT2(いずれもChampion 3.0 LE搭載)やSDS2/SCB2(いずれもChampion 3.0 HE-SL搭載)といったサーバーボードをリリースしている始末である。
ではこの世代、8Pはどうしていたかというと、サーバーメーカー各社が自社で努力してなんとかした。例えばNECの場合、Champion 3.0がリリースされた時期に発表されたExpress5800/180Haにおいて、同社の開発したAQUA2と呼ばれる専用チップを使って450NXと接続しているが、翌2000年1月に発表されたExpress5800/180Ra-7ではこれがChampion 3.0に置き換わっているという具合だ。
逆にProfusionを採用したメーカーは、結局そのまま8Pに関してはProfusionと心中せざるを得なかったが、4P以下に関しては躊躇なくChampion 3.0を採用した。例えば8PモデルのHA8000/300ではProfusionを採用した日立は、4P以下のHA8000/270ではChampion 3.0 HE/LEを採用している。
ということでインテルの失点もあってサーバー向けチップセット市場をおさえたRCCは、2000年1月に新規株式公開を行なう。この際同社の社名はServerWorksに変更され、製品の名前も変わった。
Champion 1.0/2.0/3.0はそれぞれServerSet I/ServerSet II/Server Set IIIとなっている。上のリンクで、日立のHA8000/270がServerSet III LE/HEと表記されているのはそのためだ。
ServerWorksはインテルと10年間のバスプロトコルの利用協定を結んでおり、少なくとも2010年までは現在のビジネスが継続できると判断されていた。ちなみに売上は、ServerSet III LEが85ドル、HE-LSが150ドル、HEで250ドル程度というのが当時の推定価格で、2000年における売上は3億ドルほどあった「らしい」。
伝聞形式なのは、これはBroadcomによるコメントだからだ。2001年1月、BroadcomはそのServerWorksを株式交換の形で丸ごと買収した。買収総額はおよそ10.3億ドル(1100万株相当)で、さらに900万株のオプションが付いており、これを行使した場合の総額は18.7億ドルにあたる。これは当時のBroadcomとしては最大級の買収であった。
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