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さくらの熱量チャレンジ 第8回

クラウドEXPOのさくらインターネットブースで公開取材!

2020年はロボット?さくらの田中社長、小笠原フェローと語る未来戦略

2016年11月14日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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高火力もIoT Platformも既存のサービスの延長線上

オオタニ:さて、次に今のさくらを象徴する「さくらのIoT Platform」と「高火力コンピューティング」という2つのサービスについて語ります。まずはこれらの新サービスの意図を田中さんにお聞きします。

田中:われわれの中では特に新しい事業という感覚はなくて、コンピューティングはすべてさくらの事業領域と考えています。コンピューティングって、プロセッシング、ネットワーキング、ストレージから成り立っているので、この3つをいかに「付加価値なく」やるかがさくらの強みだと思っています。

オオタニ:付加価値なくというのはどういう意味なんですか?

田中:たとえばシンプルなサーバーを組み合わせて冗長化するといった技術に関しては、すばらしい技術を持った会社がこのEXPO会場にもいっぱいいます。お客様にプラスオンを提供するものに関しては、われわれは踏み込むつもりがない。でも、SIerやMSPなどがコスト的に厳しいとか、コモディティすぎるという部分は、さくらがやろうと心がけています。

だから、高火力コンピューティングでは、速くて、安くて、すぐ手に入るみたいなプロセッシングでは当たり前のことを付加価値低くやるのを目指しています。さくらのIoT Platformも、すごい安い価格で通信モジュール、ネットワーク、閉域網(クラウド)がパッケージ化されています。速くて、安くて、買ってくればすぐ使えるという点では高火力と同じです。

オオタニ:なるほど。そういう観点で見れば、既存のさくらのサービスと同じ価値を提供していますね。

田中:過去、SIやMSPに手を出した時期もあったのですが、どの事業者もそれやってるんですよね。だから、さくらとしては、ベーシックなサービスを増やしていく。価値観は変わらないけど、使われ方や必要な技術が少し違うというものを出していますね。

データを迎えにいくさくらのIoT Platformの価値とは?

オオタニ:小笠原さん、さくらのIoT Platformについてもう少し教えてください。いろいろ誤解されがちなサービスだとも思うんで。

小笠原:現在はIoTやディープラーニング、ロボティクス、AR/VRなどいろんなキーワードがありますが、そもそもデータがない。データがないところで、IoTやAIと言っても、しょうがないんです。だから、データが自然に集まる世界をまず作りたいなあと。データが集まらないと、さらなるコンピューティングパワーが必要とされないので。データを得る、可視化する、溜めるみたいなことをいかに安くできるかが、さくらのIoT Platformの大きなポイントです。

通信モジュールから閉域網まで一気通貫で提供するさくらのIoT Platformの概念図

オオタニ:さくらのIoT Platformは通信モジュールというデバイスのところまで提供するのが特徴的ですよね。

小笠原:従来のIoTサービスって、データを持ってきてくれたら、なんらか処理してあげますよというものがほとんど。そうじゃなくて、さくらのIoT Platformは「データを迎えに行く」サービス。そのためにはデータモジュールやSIMまで提供して、組み込める部品として提供し、さくらの閉域網につなげるので、安心してデータ化できます。その上で、インターネットにつなぐところで、セキュリティをかける。セーフティ(安心)とセキュリティ(安全)を提供しています。

オオタニ:企業や個人の情報が集まってくると、セキュリティは気になりますよね。

小笠原:インターネットへのAPIも付けましたので、使い勝手はよいと思います。データを吸い上げたら、AWSやIBM Bluemix、先日連携を発表したMicrosoft Azureなどでも利用できます。通信モジュールからデータを上げて、そのままクラウドサービスで利用できるのは、今のところ弊社だけです。

オオタニ:通信モジュールまで提供する意味は大きいんですか?

小笠原:現時点では必要だと思います。それをやらないと、キャリアもクラウド事業者も関与しないという無責任なことが起こるんです。先日、監視カメラがハッキングされて問題になりましたが、あれって誰が責任をとるんですか?という話です。

オオタニ:田中さんにはIoT市場の期待感をお聞きしたいのですが、やはり伸びると踏んでいるんですか?

田中:正直よくわからないんですが、減ることはないだろうなと。一口に市場と言っても、安くなると市場が拡がるものと、安くなっても市場が拡がらないものが2つあります。IoTの場合、データを迎えに行くコストが劇的に下がれば、接続されるデバイスは無限大で増えるという仮説があります。その仮説は多くの人に同意いただけると思うので、とにかく安くデータを迎えに行けるサービスを作れば、市場ができると考えています。

クラウドでも、デバイスでもないフォグに注力する理由

オオタニ:IoTの分野ではもう1つ「フォグコンピューティング」という取り組みがあります。さくらさんはOpenFog Consortiumにも参加されていますが、クラウドやエッジコンピューティングとは別にこういうフォグコンピューティングに取り組むのには、どういう意図があるんでしょうか?

小笠原:基本的にはデバイス側のネットワークがあり、クラウド側のネットワークがあります。でも、その間には通信だけで、コンピューティングがないんです。そこにコンピューティングを配置しようというのが、フォグコンピューティングの概念です。IoTでデータが集まって、クラウド上のビッグデータを処理して、新しい価値が提供される。現在は、自動運転やホームIoT、ロボッティックス、AR/VRなど、新しいフィードバックのインターフェイスが出てきているのですが、すべてクラウドまでデータを上げますか?という話です。あと、デバイスとクラウドにはすでにメジャープレイヤーがいるので、新しい市場を作りたいという意図もあります。

田中:これから伸びるだろうというところに積極的につばを付けていくという方針ですね。先ほどの小笠原さんの説明に追加すると、たとえば沖縄にスマホを持っていって、AndroidとiPhoneのデータを同期させようとDropboxにつなぐと、沖縄と西海岸でデータが行き交うロスが発生します。

とはいえ、端末間で同期すると、セキュリティのリスクもありますよね。そう考えると、クラウドとデバイスの間をなんとかしなければならないと思うのは事業者として当然のこと。われわれもネットワークを物理レイヤーから知っているからこそ、いかに今のクラウドが無駄を発生させているかを感じています。今は端末数が少ないからなんとかなっていますが、IoTの時代で端末数が増えると大きな課題になってきます。

オオタニ:クラウドを使えば、グローバルが簡単につながるように見えるけど、実際はネットワークの話が無視されがち。でも、さくらとしてはネットワークの重要性や今の無駄についてきちんと理解しているために、フォグコンピューティングについても取り組んでいるという話ですね。

田中:ネットワークの中立性の話ってよく出ますけど、Windows UpdateってISPにとってはけっこう厳しくてですね。突然やってきて、事前に通知もできない。ISPの中の人は「今日はWindows Updateがありませんように」と祈っているそうです(笑)。それが健全だとは思えないんです。IoTで同じように一斉アップデートがかかったら、大変なことになります。Open Fog Consortiumに入ったのは、こういう話をグローバルのキープレイヤーとコミュニケーションできるからです。

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