「Google Cloud Platform」すべてのサービスを東京から提供可能に
グーグルGCPが東京リージョン運用開始、日本市場への戦略は
2016年11月09日 07時00分更新
グーグルが提供するIaaS/PaaS「Google Cloud Platform(GCP)」が11月8日、東京リージョン(asia-northeast1)の正式運用を開始した。同日の発表会で、Google Cloudプレジデントのタリック・シャウカット氏は、国内ユーザーにおけるメリットをアピールした。
GCPは、コンピュートやストレージ、ネットワーキング、データベース、アナリティクス、機械学習といった機能を提供するIaaS。今回正式運用を開始した東京リージョンは、アジア圏では台湾に続く2番目の拠点となり、(リージョンの概念を持たないBigQueryなどを除く)すべてのGCPサービスを東京リージョンでも提供する。
〇GCP東京リージョンで提供されるサービス
コンピュート:Compute Engine、Cloud Storage、Persistent Disk、App Engine Standard Environment、Container Engine
データベース/アナリティクス:Cloud Datastore、Dataflow、Dataproc、Cloud SQL Second Generation、Cloud Pub/Sub
ネットワーキング/セキュリティ:Cloud DNS、Cloud VPN、Cloud Router、Auto Scaling、Load Balancing、Cloud IAM
東京リージョンの開設により、利用企業は日本国内からのアクセスに対し、よりレイテンシ(遅延)の少ないサービスが提供できる。グーグルによると、国内各地(東京、大阪、札幌、名古屋など)で実施した台湾リージョンとの比較テストでは、レイテンシが平均で50~80%改善されたという。また、グーグルが投資してきた大容量海底ケーブル群と接続されているため、北米や東アジアとも物理的に近い距離でのアクセスが可能となっている。
東京リージョンは、通信系統や電源系統が分離された3つのゾーンで冗長化されている。グーグルでは今後、アジア圏内のリージョンを増強していく予定で、2017年末までに合計5リージョン、14ゾーンが利用可能になる。ただし、日本国内における東京以外のリージョン開設については、現在のところアナウンスされていない。
同日の発表会でシャウカット氏は、「日本は世界5大市場の1つであり、東京リージョン開設はとてもエキサイティングな出来事。特に、基幹系アプリケーションをクラウドで運用したいと考える顧客に対し、要求されるパフォーマンスやスピードを提供できるようになり、メリットが大きい」と語った。
なお東京リージョンにおける各サービス利用料金は、米国など他のリージョンと比べてやや高めに設定されている。たとえばCompute Engineの場合、「スタンダードマシン」タイプで1時間あたり0.0663~2.1216ドル(米国リージョンでは0.050~1.600ドル)、「ハイCPUマシン」タイプで1時間あたり0.0990~1.5840ドル(同 0.076~1.216ドル)など。
幅広い企業顧客がGCPを選ぶ「5つの理由」とは
Google Cloud Platform 日本事業統括を務める塩入賢治氏は、顧客がGCPを選ぶ理由、また国内におけるGCPの展開施策について説明した。
今回の東京リージョン開設前から、GCPの採用企業は国内にも多数いる。そうした顧客がGCPを選んだ理由として、塩入氏は「オープンプラットフォーム」「世界規模の高速ネットワーク」「最先端テクノロジー」「堅牢なセキュリティ」「顧客との強固な信頼関係」という、5つの特徴を挙げた。
塩入氏は、最近の利用傾向として、インターネットビジネスを展開する企業だけでなく、他業界の企業や中小企業にもクラウド利用が広がっていると説明。GCPの国内顧客事例として、三井住友銀行における不正取引検知への機械学習の適用、ピーチアビエーションにおけるコールセンターでの音声認識/分析、エアロセンスにおけるドローン撮影画像の認識/分析といったものを紹介した。
「企業の業種、規模を問わず、最近ではクラウド利用が避けて通れなくなっている。その背景には、新たなテクノロジーのビジネス活用が必須になっていることがある。GCPにおいては、迅速な経営意思決定のためのデータアナリティクス、新たなビジネスサービスを実現する機械学習を提供しており、新たな顧客層がクラウド(GCP)への移行を始めている」(塩入氏)
さらに今回の発表では、「GCPプロフェッショナル認定プログラム」の日本語での提供開始、そしてエンジニアを対象としたワンデイトレーニング「Google Cloud Onboard」の実施も発表している。また現在、12の国内ユーザーグループが立ち上がっており、こうしたコミュニティ活動も積極的に支援していきたいと、塩入氏は述べた。
戦略は「ゴートゥマーケットの改善」と「マルチクラウド顧客への対応」?
発表会の質疑応答では、すでにAmazon Web Services(AWS)やマイクロソフトなどが先行し、市場シェアを高めているなかで、GCPはどう対抗していく戦略なのか、どのような事業目標を立てているかについて質問がなされた。それに対し、グーグルからの回答は明確さを欠き、市場戦略についてはまだこれから詰めていく段階にある印象を受けた。
前述した質問への回答としてシャウカット氏は、Google Cloudでは現在、ゴートゥマーケット戦略を改善していくためにグローバルで1000人規模の人材採用を行っており、「日本も同じ流れにある」と説明。さらに、国内での新たな販売/SI/CIパートナーを「むこう1年間で数倍規模」に増やし、トレーニングも強化していくと説明した。また、特にマルチクラウドの活用を考えている顧客をターゲットとしていくとも述べている。
「もうひとつ言えば、クラウドのマーケットはまだまだ始まったばかり。クラウドに移行済みのワークロードは、まだ全体の5%にすぎないという数字もある。顧客の中では、特にマルチクラウドでのオペレーションを行いたい企業、クラウド間でのワークロード移行やマルチクラウドの管理をしたいというアプローチの顧客が、格好のターゲットになると考えている」(シャウカット氏)
さらにシャウカット氏は、「クラス最高のデータアナリティクス、機械学習、データウェアハウスの機能が提供できる」点も、GCPの競合優位性になるだろうと付け加えている。