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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第157回

「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター

2016年11月05日 12時00分更新

文● 四本淑三

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いままでは売るための努力が必要なかった

―― いよいよKz One Standardの店舗販売が始まりましたが、どんな感じですか。

伊集院 いま、僕がしなければいけないのはギターを作ることです。

―― えっーと、まあ、それはそうでしょうね、伊集院さんはそれが仕事だから。

伊集院 それが、なかなかギターが作れないんです。営業に行って、ウェブサイトも作って、その合間にちょっとギターを作って。そんな感じになっている。いろいろ読みが甘かったんですね

―― 甘かった、と言いますと。

伊集院 レッド・スペシャルは、みんなが知っているんです。どういうギターなのかを。みなさん20年、30年、40年と恋い焦がれてきたわけですから。だから、ちゃんとしたものを作りさえすれば、お客さんは理解してくれる。これだけ忠実に作っている、なんて僕が言わなくても。だから、うちのレッド・スペシャルは、売るための努力をする必要がなかった。

―― なるほど。レプリカはどこまでホンモノに近いか、ですからね。

伊集院 それと同じ感覚で、黙ってオリジナルを作っていてもダメなんです。いままで買ってもらえたのは、僕がいいギターを作っていたからではなく、あれがレッド・スペシャルだったから。Kz One Standardは最高のギターで、これ以上のものはないと僕は確信しているんですが、その良さは自分から世の中に説明していかなければならない。

―― なるほど、オリジナルはそこが難しいんですね。

伊集院 でも、ほかとはまったく違うオリジナルということ、僕はそこに突破口があるような気がして。結局、日本人が作る高品質なギターのイメージは、丁寧に作ったギブソンだとかフェンダーみたいなものですよね。

―― ストラトやテレキャスの定番仕様が中心ですね。音の見当が付くし、使いどころもはっきりしているから。

伊集院 Kz One Standardの「Standard」というのは、そこを目指しているんです。そういう「新しいスタンダード」として認めてもらえるまでやりたい。僕もギター職人になって、なんだかんだと16年もやってきましたから、この後も自分の作ったものとして、20年、30年後に残っているようなギターにしたいんです。

 とはいえ、見た目も音も、まったく新しいオリジナルゆえに、認知を得て定着させるには時間も必要。では、実際に取り扱いを決めたショップ側は、このギターの商品性をどう評価し、どう売ろうとしているのか。次回はごく初期の段階でKz One Standardの取り扱いを決めた、東京都渋谷区にあるプロ御用達のギターショップ、フーチーズを訪ねた様子をお届けしたい。

※ 取材後、2名のスタッフが加入し現在は貴重な戦力として量産に貢献してくれているとのこと。

 ケイズギターワークス(Kz Guitar Works)は、11月4~6日開催の「2016 楽器フェア」に出展しています。ブース番号は「Tg-01」。市販品は東京都渋谷区のギターショップ フーチーズ、池辺楽器店 渋谷グランディ&ジャングル、島村楽器 ミーナ町田店/八王子店でも取扱い中。Kz One Standardの実機が見られるチャンス!



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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