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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第157回

「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター

2016年11月05日 12時00分更新

文● 四本淑三

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研究を重ねたボディー構造とネックのバランス

―― やや太めのネックシェイプを残しているのはレッド・スペシャルを意識したものですか?

伊集院 それはまったく違います。このギターはセミホロウボディーなので、可能な限りネックは太くしたかった。その中で一般的なネックの範疇に収まるよう設計しました。スケールは635mmというフェンダー系(648mm)とギブソン系(628mm)の中間に設定して、どちらから持ち替えても違和感がないようにしています。

製作中のネック。ホンジュラス・マホガニーにローズウッドを貼った仕様。ネックシェイプは「太かった時期のレス・ポールやPRSのミディアムファットグリップくらい」とのこと。ご参考までに

―― では「セミホロウボディーだからネックを太くしたい」という理由は?

伊集院 ボディーを大きく響かせると、サスティンの点で不利になる。そこをネックの太さというより、質量で補うということです。セミホロウのサイズも大事で、大きすぎると響く代わりにサスティンが足りなくなる。バランスを研究して、いまの形状にたどり着いたんですね。

―― ボディーを鳴らすと、弦の振動エネルギーが食われてサスティンが犠牲になる、そういう反比例の関係なんですか?

伊集院 その考え方もあながち間違いとは言えないですが、重要なのはボディーとネックのバランスです。そこに材質や指板といった要素も関係してくるので、なかなか複雑です。

直列配線とコントロール系統

―― パーツ類に移って、ピックアップはバーンズ(Burns)じゃなくてアデソン(Adeson)というメーカーですが、これは?

伊集院 アデソンはイギリスのメーカーです。で、いまはアデソンが作ったものをバーンズに卸しているんです。僕はアデソンから直で買っているということですね。

ストラトのセンターPUはイマイチ使いどころが見当たらないが、このギターはセミホロウボディーにダイレクトマウントされているせいか、センターはアコースティックギターのようなサウンド。おもしろい使い方ができそう

初期型は「Classic British」というカバーにポールピースの穴が開いたタイプだったが、現在の標準仕様は穴なしの「Done-Top」タイプ。オプションで「Classic British」も選択できる。両者の音の差は「聴いた限り違いはありません」とのこと

―― ピックアップは直列配線で、ピックアップのオン/オフ、フェイズの組み合わせで13とおりのサウンドバリエーションがあります。この仕組みも外せなかったものですよね?

伊集院 はい。

三連トグルスイッチが各PUのオン/オフ。フェイズの切り替えは、ボリュームポットのプッシュ/プルでネックPU、トーンポットのプッシュ/プルでセンターPUが切り替わる。ブリッジPUのフェイズが固定なのは、切り替えても全ピックアップオンの正相・逆相が切り替えられるだけで、音に差はなくて無駄だから

―― トレモロユニットにケーラーを選択した理由は?

伊集院 1984年にGuildから発売されたレッド・スペシャルのシグネチャーモデルにも採用されていて、レッド・スペシャルのトレモロユニットに使用感が一番近いんです。が、最終的にこれを選んだのは「ほかのギターでは、ほとんど使われていない希少性」、そして「ほかでは得られない滑らかな使用感」が理由です。

ローラサドルのケーラー「7300」ユニット。ボディーを貫通するような大きなザグリ穴も必要ないので、セミホロウ構造のギター向き。浅いヘッド角、潤滑性のあるTUSQ XLナット、ゴトーのロックペグと合わせて、チューニング安定性も高い

コントロールはギブソン系のギターのように、背面のカバーを外すと直接アクセスできる。メンテナンス性も良さそう

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