研究を重ねたボディー構造とネックのバランス
―― やや太めのネックシェイプを残しているのはレッド・スペシャルを意識したものですか?
伊集院 それはまったく違います。このギターはセミホロウボディーなので、可能な限りネックは太くしたかった。その中で一般的なネックの範疇に収まるよう設計しました。スケールは635mmというフェンダー系(648mm)とギブソン系(628mm)の中間に設定して、どちらから持ち替えても違和感がないようにしています。
―― では「セミホロウボディーだからネックを太くしたい」という理由は?
伊集院 ボディーを大きく響かせると、サスティンの点で不利になる。そこをネックの太さというより、質量で補うということです。セミホロウのサイズも大事で、大きすぎると響く代わりにサスティンが足りなくなる。バランスを研究して、いまの形状にたどり着いたんですね。
―― ボディーを鳴らすと、弦の振動エネルギーが食われてサスティンが犠牲になる、そういう反比例の関係なんですか?
伊集院 その考え方もあながち間違いとは言えないですが、重要なのはボディーとネックのバランスです。そこに材質や指板といった要素も関係してくるので、なかなか複雑です。
直列配線とコントロール系統
―― パーツ類に移って、ピックアップはバーンズ(Burns)じゃなくてアデソン(Adeson)というメーカーですが、これは?
伊集院 アデソンはイギリスのメーカーです。で、いまはアデソンが作ったものをバーンズに卸しているんです。僕はアデソンから直で買っているということですね。
―― ピックアップは直列配線で、ピックアップのオン/オフ、フェイズの組み合わせで13とおりのサウンドバリエーションがあります。この仕組みも外せなかったものですよね?
伊集院 はい。
―― トレモロユニットにケーラーを選択した理由は?
伊集院 1984年にGuildから発売されたレッド・スペシャルのシグネチャーモデルにも採用されていて、レッド・スペシャルのトレモロユニットに使用感が一番近いんです。が、最終的にこれを選んだのは「ほかのギターでは、ほとんど使われていない希少性」、そして「ほかでは得られない滑らかな使用感」が理由です。
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