オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンは10月27日、“Scepter”シリーズの新製品「SC-3」と専用スタンド「AS-3」を発表した。発売は12月中旬を予定。価格はSC-3が32万4000円(1台)、AS-3が6万4800円(1台)。
オンキヨーは70周年。その節目の年に投入する意欲作となる。コンセプトは“熱”を伝えることだ。商品企画担当の深江義久氏は「アーティストの“熱”をリスナーに伝える」「先人の“熱”を次の世代に伝える」「日本のものづくりの“熱”を市場に伝える」という3つの視点から、製品を紹介した。
ハイレゾ時代では、微小なニュアンスを忠実に再現できるスピーカーが求められる。そのためにユニットから作れるオンキヨーが、長年スピーカー開発で培ったノウハウを現代にうまく取り入れながら、日本ならではの高い技術水準で実現したスピーカーがSC-3であるという意味なのだろう。
開発はまずウーファーから着手。レスポンスが速く、スケールの大きな低域の再現を目指すユニットを開発し、これをTV-5以来の伝統を持つホーンと組みあわせた。28Hz~50kHzまでと、かなり広いレンジに対応するスピーカーだ。
ウーファーの直径は20㎝。鉄の5倍の強さと軽さを持つ“セルロースナノファイバー”(CNF)素材を使用。これにパルプを配合したのが“ONKYO Nano Fiber”振動板だ。コーン紙に温風を吹き付けながら形を整える“ノンプレス成型”である点オンキヨーの伝統。さらに表面を墨でコーティングしている。様々な素材を検討する中、同じ関西にある奈良の老舗・古梅園の紅梅墨に偶然たどり着いたそうだ。表面の伝搬速度や内部損失が向上。良好な結果が得られたという。
特許出願中のため、墨をコーティングする細かな工程については公表されていないが、磨(す)った墨を特殊な工程を経て使用している。墨の種類による音の差はあるそうで、基本的には品質の良い墨の方が粒子が細かく、音質も好ましい方向に改善する。試行錯誤を経て、1本2万円近くする紅花墨の選択に至ったとのこと。
ツィーターは、直径2.5cmのリング型コンプレッションドライバーにホーンを組み合わせている。新規開発で振動板はマグネシウム合金製。ホーンはスーパー楕円形状のアルミダイキャスト製。50kHzの高域までを担当し、回折による音の反射を防ぎ、自然な音の広がりを実現でき、両者の組み合わせで密度感のあるハイレゾ音源の真価を引き出せるとする。高域と低域の担当周波数を分けるクロスオーバーは3000Hzに設定されているが、ここにも試行錯誤があったという。
筐体(エンクロージャー)は板厚最大42mmの高剛性MDFの削り出しで、ラウンド形状を形成。内部も固定振動や定在波を抑えるため、主に側面に凹凸を付けている。同社ではこれを“Resonance Sculpting Control”テクノロジーと呼んでおり、見晴らしのいい音場感と低域の力強さに貢献しているとする。吸音材には高級断熱素材のサーモウールを使用。バッフル面と背面にはアルカンターラ生地を使用しており、反射を抑えつつ見た目の高級感も上がっている。
ネットワーク回路もムンドルフ製のコンデンサーや日本製のチョークコイルなど、パーツを厳選している。電流面を一致させた素子マウント構造(特許出願中)で不要な相互誘導の発生を抑制し、電気的なノイズが音声信号に混入するのを防いでいる。
本体サイズは幅300×奥行き450×高さ484mm(突起部含む)で、重量は24.1㎏。インピーダンスは4Ω、出力音圧レベルは87dB、2.83V/m。スピーカーターミナルはバイワイヤー対応で、非防磁設計。専用スタンドのAS-3は幅340×奥行き440×高さ591.5mmで、形状は従来からあったものだが、トッププレートなどをSC-3用に調整するなど専用のものとなっている。脚部に弾性を持たせ、解析したSC-3の振動モードのデータに即した不要振動を吸収するなど、専用スタンドならではの試みも盛り込んでいる。