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業界人の《ことば》から 第218回

社員が辞めたら補充すればいいという発想は悪しき文化

2016年10月25日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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キヤノンの原点に戻り、事業品質の改善へ

 決算月には極論すれば「手段を選ばず」と表現されるような営業活動を進め、それによって予算を達成するという馬力は、営業会社には必要だ。だが、一度注文を獲得したものの、それ以降のつながりが薄れ、顧客を失うといったこともある。

 そうした事態を生むのであれば、無理をせず、顧客とのリレーションをしっかりとつなぎ、次の受注へとつなげる方がお互いにプラスになると判断するのが久保社長のやり方だ。

 「決算月というのは当社側の事情。お客様の事情をしっかりととらえた営業をする必要がある」とする。

 顧客との継続性の維持を優先することが、経営品質の向上にもつながり、それが社員や顧客の成長にもつながるというわけだ。

 キヤノンの創業者である御手洗毅氏は、「新家族主義」という考え方を打ち出した。ここでは、「社員はキヤノンという大家族の一員であり、キヤノンは社員全員のもの」と位置づけた。当時は、「Go Home Quick」という言葉の頭文字を取り、「GHQ」と呼ばせたユニークな一手も打っていたほどだ。

 そうした言葉を引き合いに出しながら久保社長は「家族に接するような形で、部下に接してほしい」と呼びかける。

 「出来が悪くても自分の子供ならば、叱ってでも良くしようとする。だが身内でないからこそ、社員は辞めてしまってもいいとなる。叱ったときには、一時的には嫌なムードになるときもある。だが育てるという意識が伝われば、それは解決する。父親と険悪なときには、母親が間に入って取り持ったり、解決したりする役割を担うこともある。そうした関係を組織で構築してほしい」

 キヤノンの創業の原点に戻りながら、新たな社員との関係、顧客との関係を構築し、それによって事業品質の改善に取り組むのが久保社長の手法だ。もちろん、成長戦略の手綱を緩めるつもりはない。

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