補充という考えはしない
「育てるという意識が低いため、辞めたら補充すればいいと考えている。これでは事業品質は高まらない」
今年の新人配属に、久保社長は口を挟んだ。
「社員が辞めた組織の課長の下に、新たな社員を配属しても育てることができるのか。優秀な営業マンが、優秀な管理者であるとは限らない」とし「補充という考え方はしない。もう一度、配属を見直してほしい」と語った。
久保社長の要請に、約7割を変更した配属案が示されたという。「こんなに変わるとは思わなかった」と久保社長は苦笑いする。
「私が求めている営業はモノを売れる営業ではない。モノが売れるのは当然のことであり、むしろマネジメントができ、チームの力を高めることができる営業が必要」とする。
166人にそれぞれ3時間かけた地獄の説教
久保社長は大学卒業後、最初に入社した会社の社長に「俺がシロといったら、カラスもシロだ」と言われ、その考え方に違和感を持って退社した経験を持つ。その経験をもとに、社員が正しく働くことができる環境づくりを目指す。
久保社長は今年度上期中に、166人の部長に対してそれぞれ3時間をかけて、自らの考えと方針を説明した。
「社内では、これを『地獄の説教』と呼ばれていた」と久保社長は笑う。
徹底した議論は社員にとって地獄だったのかもしれないが、一日中ずっと喋っていられるぐらい話好きと自ら語る久保社長にとっても「地獄」だったようだ。
さらに7、8月は、営業/サービス部門の本部長を対象に、全国10ヵ所の支店で対話を実施。さらに10月からは3ヵ月をかけて、600人の課長を対象に中期経営計画の狙い、目指す事業品質などについて直接説明する場を設けるという。
そして、事業品質を高めるという点で、顧客に対する姿勢についても変革をうながす。
この連載の記事
-
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ -
第580回
ビジネス
コンカーの第2章は始まるのか、SAPの生成AIを使って効率的な経費精算を -
第579回
ビジネス
AIの筋トレはいまから始めるべし、マイクロソフト津坂社長がCopilotの議論から得たもの -
第578回
ビジネス
大赤字からの再起はかるバルミューダ、その足掛かりは? -
第577回
ビジネス
日本の強さは量子力学におけるトンネル効果があるため、量子と出会い、広げよう - この連載の一覧へ