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業界人の《ことば》から 第218回

社員が辞めたら補充すればいいという発想は悪しき文化

2016年10月25日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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現場に赴くのは事業品質を高めるため

 1月の社長就任時、久保社長は社員に向かって「私はキヤノンS&Sの歴代社長にように威厳も貫禄もない。だが、いままでの社長との最大の違いは、社員の一番近くにいる社長である」と宣言してみせた。

 もともと複写機の営業一筋だった久保社長は、営業現場の状況を熟知している。社長就任前から最前線の現場を訪れ、社員とのコミュニケーションを通じて事業を成長させてきた手法は、社長就任後もそのままだ。

 実際、社長就任以来の8ヵ月間で、全国約30拠点を直接訪問。2年以内に全国185拠点をすべて訪問する考えだ。

 「全拠点を訪問することを目標に掲げた社長は私が初めて」と久保社長は笑う。

 もちろん、訪問することに目的があるわけではない。その場で社員との会話を通じて、会社の方針を直接伝えることで、キヤノンS&Sの事業品質を高める狙いがある。

現場の社員と話し、社員を育てる

 「5000人を超える所帯とはいえ年間約100人の社員が辞めている。なぜ、これらの社員が辞めることになったのか。その理由のひとつには、社員をしっかりと育てられなかったのではという反省がある」とする。

 一般的に営業会社は3年で3割、5年で5割の社員が退社するとも言われている。長続きしない職種のひとつでもある。

 「仕事についていけない」、「先輩のように働けない」などの理由も多い。だが、なかには「社員を育てようという意識が感じられない」という厳しい声もあったという。

 「年間100人という数字は、10年継続すれば1000人。それだけの人がキヤノンS&Sに不満を抱いて去っていった。辞めた社員から、次の職場に行ってキヤノンS&Sを辞めなければ良かったという声も聞くこともあるが、一度でも強い気持ちで辞めたいと思わせてしまったことは事実。言うは易しであることはわかるが、社員を育てること、もっとコミュニケーションを強化することに力を注ぎたい」

 直接現場をみて、若い現場の社員と会話をすることに力を注いでいる理由のひとつはここにある。

 一方で、社員が辞めたら補充すればいいという発想が社内にあることも悪しき文化のひとつだと位置づける。

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