みやざき地頭鶏は放血のあと食肉として余すところなく加工
捕獲されたみやざき地頭鶏は、加工センターに運ばれて食肉として処理されるわけですが、エー・ピーカンパニーでは鶏を絞めることを屠殺とは言わず、放血と呼んでいます。文字どおり、血を抜くことで生き物を食肉にする作業です。
放血のあとは、羽をむしる必要があるため専用マシーンに放り込まれます。ここにはいくつもの突起があり、放血したみやざき地頭鶏と温水を入れて攪拌することで羽がむしり取られていきます。
羽がむしり取られたみやざき地頭鶏は、1時間ほど氷水に浸けられたあと食肉として加工されます。なぜ冷やすのかというと、鶏の表面温度は羽むしり取りマシーンで、内部はそもそもの鶏の体温で温まっているため、一度完全に冷却する必要があるとのこと。
冷却後に1羽1羽取り出して捌いていくわけですが、この段階で痩せすぎの鶏や赤く変色している鶏などは除外されるそうです。除外された鶏はどうなるかというと、その分の販売代金は養鶏農家から差し引く、返品をというかたちを採るそうです。生育の悪い鶏がいることを農家にきちんと報告して責任をとってもらうことで、飼育環境の見直しなどに役立てるというわけですね。
今回は、宮崎県西都市にある加工センターを取材させてもらったのですが、ここでは吊るし切りという方法で加工していきます。食肉の加工方法としては、まな板の上で捌く方法もあるのですが、吊るし切りでは空気以外のものに触れる部分が吊している首の部分だけなので、菌の繁殖を最小限に抑えることができるそうです。また、この方法では内臓を取り出さずに鶏肉を削ぎ切りにしていくため、内臓の菌が鶏肉に付着することもありません。このように加工時に細心の注意を払うことで、塚田農場の店舗で新鮮な鶏が食べられるというわけ。ちなみに吊るし切りのデメリットは、削ぎ切りしていくために歩留まりが悪いことだそうです。
一方、宮崎県日南市にある本社の処理センターでは、まな板の上で内臓を取り出してから各部位に切り分けて加工しています。銀座中央通り店など一部の店舗では、この内臓を抜いた丸鶏を仕入れて店舗で捌いています。
では内臓はどうなるのか。もちろん破棄するわけでなく、扉で区切られた別室で加工します。肉の部分を取り除かれたみやざき地頭鶏は、小窓から内臓加工ルームに移動し、こちらでレバーや砂肝、ハツ、鶏皮、そして首の部分のせせりに分けられます。可食部位が取り除かれたみやざき地頭鶏は、鶏ガラとしてスープを取るためにに使われます。ちなみに、内臓加工ルームで内臓に異常が見つかった鶏については、鶏肉の部分も破棄されるそうです。外と中のダブルチェックで品質を守っているわけです。
それぞれの部位に分けられて加工されたみやざき地頭鶏は、じとっこ炭火焼用、じとっこたたき用などに分けられて真空パックされます。
真空パックされた鶏肉は、さらに別の部屋に移されてアルコール液による瞬間冷凍(アルコールブライン凍結)でカッチコチに冷凍されます。食品は冷凍時間が短いほど細胞が破壊されにくく旨味成分も逃げないことから、地頭鶏ランド日南ではアルコールブライン凍結を採用しているとのこと。ちなみに瞬間冷凍方法としては、プロセッサーのオーバークロックでおなじみの液体窒素もメジャーです。いろいろ調べて見ると、アルコールブライン凍結は初期導入コストがかかり、設置には広い場所が必要といったデメリットがあるものの、ランニングコストは窒素冷凍よりも有利だそうです。まあ、液体窒素は蒸発しちゃいますからね。そのほか、一度に大量の食品を冷凍する場合は冷凍庫で時間をかけて凍らせるエアブラスト凍結もありますが、前述したように旨味が逃げやすいというデメリットがあります。
瞬間冷凍された鶏肉は、加工センターにある超低音冷凍庫で保管されて定期的にトラック便で出荷されていきます。