時代はzipドライブとCD-Rに移行
リムーバブルドライブは赤字続き
そして1994~1995年にかけ、さらに動きは激しくなる。まずIomegaはZipドライブを投入する。こちらは低速であったが、100MB程度の容量があり、しかも廉価ということでコンシューマー向けに広く利用された。またZipドライブは3.5インチのサイズだったので、5.25インチサイズのSyQuestよりも幅広いメーカーに採用されやすかった。
そして多くのHDDメーカーが1994年~1995年にかけ、従来製品のHDDを値下げしており、文字通りの「リムーバブルHDD」を構築することも現実的になってきた。そしてこの頃にマルチメディアが流行を始め、CD-ROMやCD-Rが普及するようになる。そして最後に、DTPはWindowsプラットフォームでも利用可能になったが普及には至らなかった。
この結果として、SyQuestは牙城であったMacintoshのDTP向け市場のシェアを緩やかにではあるが失っていく。まずDTPの現場では、さらにデータ量が増えた出版データ向けに、SyQuestの代わりにCD-Rを利用するようになる。書き込みこそ時間はかかるが、容量が大きく持ち運びも容易で、しかもメディアの価格は安いわけで、移行しない理由がない。後にはインターネット経由での納品も始まったことで、いよいよSyQuestの出番はなくなった。
Windows向けのDTP市場は残念ながら皆無で、これに代わるプロフェッショナル向け用途も見つけられなかった。おまけにコンシューマー向けはZipドライブが急速に普及し、同社の出番はなかった。
それでも同社はZipの対抗馬として135MBの容量を持つ「EZ135」ドライブを1995年に投入する。こちらはディスクサイズこそ3.5インチだが、依然として高価で大きかったので、Zipの市場を崩すには至らなかった。
画像の出典は、“Wikipedia”
後にこれを容量を230MBに拡大した「EZFlyer」を投入するが、その頃にはIomegaも250MBのZipを用意しており、ここでの差別化は難しかった。
こうした逆風を受け、1994年は売上こそ2億2100万ドルまで増やしたものの、営業利益は540万ドルに落ち、1995年は売上を2億9950万ドルまで引き上げながら7800万ドルの営業損失を出すという状況に陥っている。
COMDEXの1週間前に破産
Iomegaに買収される
ここからの転落は早かった。SyQuestは大規模なリストラを開始し、その中にはシンガポールの製造拠点の閉鎖も含まれ、社員を1500人以上削減することになった。そうした費用の引き当てもあってか、1996年の第1四半期は売上7800万ドルに対して営業損失3300万ドルという壮絶な状況に陥る。
これもあって取締役会は会長と社長、財務責任者、上級マネジメントなどを総入れ替えする決定を下す。Iftikar氏はCEOの職こそ維持したものの、日々のオペレーションからは隔絶されることになり、最終的に退社している。
1996年には株価が5ドルを割るところまで下落、株主からの集団訴訟の対象になりかねないところまで追い込まれた。さらに赤字が続いた結果、会社の純有形資産が100万ドルを割りそうになり、上場を維持できない(NASDAQのルールに抵触する)危険性まで出てきた。
同社は慌てて2000万ドルを株式公開で調達するなど手を打ったものの、根本的に売上を回復する手段がない状況では時間稼ぎでしかない。結局1998年11月、COMDEX開催のほんの1週間ほど前にSyQuestは破産した。
破産後に同社の資産はすべてIomegaが買収している。ところでSyQuestを退社したIftikar氏が、次に興した会社がCastlewood Systemsである。ここが開発したのがORB Driveで、1998年のCOMDEXでは2.2GBのORB Driveをデモしている。
このORB DriveはDVR(Digital Video Recoder)の市場を狙い、OEMパートナーを探していたが、なかなか相手は決まらなかった。Castlewood Systemsはさらに5.7GB版の開発もしていたが、そうこうしているうちに2.2GBドライブの製造工程でトラブルがあり、製造済みの35万台のドライブのリコールが必要という話になった。
結局Iftikar氏はCastlewood Systemsも閉鎖することにし、ここでIftikar氏のQuestも終わりとなった形だ。ちなみにSyQuestのURLはまだ維持されており、わずかに残るSyQuestユーザーに対するサポートを行なっているのは興味深いところだ。
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