業界に痕跡を残して消えたメーカーでConner、Quantumと来れば、次はやはりMaxtorだろう。こちらはわりと最近(といってももう10年前)まで普通に売っていたので、記憶にあるユーザーもいるだろう。
もっと言えば、日本で入手できるかどうかはともかく、一応Maxtorブランドの製品はまだ流通している(たとえばコレ)ため、その意味ではConnerやQuantumよりはまだマシなのかもしれない。
大手HDDベンダーの一角を占めるも
ヘッドの供給不足で窮地に立つ
Maxtorは1982年、James McCoy氏、Jack Swartz氏、Raymond Niedzwiecki氏の3人のエンジニアによって設立された。この中でMcCoy氏はExaByte(デジタルテープドライブのベンダー)やVerbatim(フロッピーディスクベンダー)、Shugart Corporation、Quantumなどで要職をこなして来た経験があり、そのままMaxtorのCEOの座に着く。
Maxtorは1983年、最初の製品である容量140MBの「XT-1140」を出荷、続いてさらに大容量の製品を追加していき、1994年には大手HDDベンダーの一角を占めるに至る。
画像の出典は、“Wikipedia”
もっとも同社は当時ヘッドの供給をRead-Rite Corporation(RDRT)に頼っていた。ところがここのヘッドの提供が間に合わないことで出荷が遅れがちとなり、大容量5.25インチHDDの市場でシェアを握りつつ、これを維持できない状況に陥った。
結果としてMaxtorは「最初の」資金不足の状況に陥るが、この時にはRDRT以外にもヘッド供給元を確保することで、なんとか困難を脱することができた。
この後1985年~1987年にかけ、同社は100MB以上の市場で目覚しいシェアを獲得するとともに、利益率も大きく向上した。1985年の利益率は19%だったのが、1986年末には30%に達した。
ところが1987年の夏には、またしてもRDRTのヘッドの生産が滞った。直前まで毎日4000個のヘッドを出荷していたのだが、RDRTと契約する部品業者の問題でこれを2000個まで減らさなければならなくなったらしい。
おまけに競合が激しくなった結果、同社はまたしても不調に陥った。結局この時はCDCの子会社であるPCI(Peripheral Components International)からヘッドを購入することで凌いだ。1年契約で3500万ドルだったそうだ。ちなみに第2四半期のMaxtorの売上げは1500万ドルまで落ち込んでいる。
さらに、同時期にMcCoy氏ら創業メンバー3人がいずれも引退(厳密には取締役会には残りつつ、マネジメント職を辞任)したことで、混乱に拍車が掛かることになった。
この後も同社の混乱は続き、資金的にも苦しいことになった。1987年度の利益率は3.4%まで落ち込んでいる。この状況を収拾すべく、AMDからやってきたのがGeorge M. Scalise氏である。
Scalise氏の指揮の下、1988年は売上げを3億ドルまで回復させた。ここまでは良かったのだが、さらなる収益の機会を求め、光ディスクの分野への参入も決定する。
1988年5月にアトランタで開催されたCOMDEX Spring '88の会場で、Maxtorは3.5インチサイズで容量160MBの「Fiji I」と、5.25インチサイズで容量1GBの「Tahiti I」という2種類の光磁気ディスクドライブを発表する。
これは同社が1987年に買収し、子会社化したStorage Dimensions Inc.という会社が開発していたものである。この光磁気ディスクの販売にあたり、Maxtorはクボタコンピュータ(株)と提携してMaxoptixという会社を設立、ここが実際の製造や販売を担う形とした。
加えて、1990年にはMiniScribeを買収する。Connerの回でも登場した、5.25インチドライブベンダーである。MiniScribeは1990年1月1日に破産するが、Maxtorは破産したMiniScribeの資産をまるごと4000万ドルで買収している。
Maxoptixの設立やMiniScribeの買収は、当時のMaxtorの財務状況には結構厳しい投資だったはずであるが、それでもScalise氏の指揮下でMaxtorは13四半期連続で黒字を計上、1990年末には1080万ドルの利益を計上している。
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