続々と閉店する電脳街のランドマークショップ
8月、上海を代表する電脳街である「徐家フイ」のショッピングセンター「美羅城」が内部のリニューアルを発表した。
2015年に隣にあった電脳ビル「太平洋電脳II期」が閉鎖したこともあり、中国メディアは「ついに電脳街のイメージから脱却」「PC売場としての徐家フイの終了」と紹介した。
オンラインショッピングの普及と、スマートフォンの台頭によるPCの落ち込みから、電脳街の利用者は減って売場はお寒い雰囲気になっているが、それは上海も例外ではない。
また7月には、中国を代表する北京の電脳街「中関村」を代表する電脳ビルのひとつ「海龍電子城」が17年の歴史に幕を閉じた。今後、この場所にはベンチャー企業が入るという。
海龍電子城以前にも、2015年にはやはり巨大な電脳ビル「中関村e世界」が終了し、2011年には電脳ビル「太平洋広場」が終了した。
秋葉原で例えるならラオックスのザ・コンピュータ館くらいのPC販売のランドマークビルが毎年閉鎖していると思えばイメージできるだろう。
地方都市でも電脳街の閉鎖が進んでいるが、日本人が行きやすい北京と上海で電脳街が閉鎖となれば、電脳街好きとしては寂しい限りだ。
中国ではいまだショップPCや自作PCのニーズがあるが、「蘇寧」や「国美」などの家電量販店では自作PCまでフォローしていない。それにも関わらず、最も選択肢の広い電脳街をばっさり閉鎖するというのは驚きだ。それでも買いたければ、他の小さなショップに行け、ということか。
電脳街衰退の背景にはECサイトの普及と政府の方針が!
閉鎖の理由のひとつは、言わずもがなECの普及と発展だ。土地代と人件費が上がる中で、低価格で何でも揃うECサイトに勝てるわけがなかった。
「淘宝網」(Taobao)の普及もさることながら、デジタル・家電系ECサイト最大手の「京東」( jd.com )の影響が大きかった。京東の影響力が強まりだした2010年あたりからリアル店舗への影響もあったという。
もうひとつの理由、これが今の中国らしい理由なのだが、政府が中関村での産業転換を強いたというのがある。
2009年には、中関村のある北京市海淀区が中関村を調整区域にして、電脳ショップやショッピングセンターなどをこれ以上拡大せず、ハイテク産業を推進する「関于加快推進中関村西区業態調整的通告」を、2015年には国務院がハイテク産業を推進する「国務院弁公庁関于発展衆創空間推進大衆創新創業的指導意見」「国務院弁公庁関于建設大衆創業万衆創新示範基地的実施意見」を発表。
特に後者はそのモデル地域として中関村のある海淀区が指定され、政府が中関村をハイテク開発の街へとシフトさせたことも理由だ。これは秋葉原では真似のできないことだ。
思えばリアルショップの勢いが落ちていく中で、一時期はキャラクターグッズショップに走ったことがあったがうまくいかなかったのも、ECと政策の2つの理由があったのではないか。

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