スマートフォンの普及によって中国の電脳街が変わりつつある。なにせ去年、スマートフォンの出荷台数が2010万台(IDC調べ)だった日本市場に比べ、中国は7210万台(iResearch調べ)と3.5倍も多い。
今年は四半期だけで3800万台(4月~6月、易観国際)も売れたとのことで、年間1億台の大台に乗りそうだ。そして前年同期比でスマートフォンやタブレットは大幅にプラスの反面、PCやプリンター、ディスプレー関係はマイナスになっている。
電脳街はかつてオンラインショッピングサイトの台頭で窮地に立たされ(関連記事)、体力がなくて畳んだ店や、安いアパートにオンラインショップ兼倉庫を設けた店が続々と出てきたほか、フロア自体を縮小したり、携帯電話売場に変えたりする電脳街もよく見た。
以前は「自作PCを選ぶのはメーカーPCより安いから」という理由だったが、既にCeleron搭載ノートPCが2000元(約2万6000円)を切り、21.5型のモニター一体型PCが3000元(約3万9000円)を切る中で、PCパーツショップが集う電脳街に行く理由はますますなくなってきた。
「電脳街はいよいよおしまいか!?」と思っていたのだが、実際には客層に変化が起き、電脳街は生き残りそうな印象を受けている。
中高年世代が電脳街を盛り上げる!?
そう思う要因の1つが客の高齢化。中国の東西南北各地の電脳街でおじさん連れ、ないしは老夫婦(プラス息子のケースも)を見るようになった。
中国のITの大前提として「中高年はITを利用したがらないため、極端に若者に寄った、他のアジア国家に比べても異質な状況」が長年続いていたため、筆者としては実に奇妙な状況に見えた。
中高年が見ている品物は主に3つに絞られる。ひとつはタブレット。特にタブレット向けに特化したキラーコンテンツ・キラーサービスがあるわけではないようだが、タブレットなら(物理的に)ディスプレーが広いし直感的だしPCよりも軽い、とスマートフォンには抵抗がある老人が買ってみるケースが最近増えてきた。
また「老年学校」と呼ばれる老人向けカルチャースクールでも、PC学習教室とは別にタブレット学習教室も出てきている。こうした流れから中国メーカーから老人をターゲットにしたタブレットもリリースされ始めた。
ふたつめはポータブルDVDプレーヤー。中国人は暇つぶしとして、老若男女を問わず映画などの動画を見ることが多い。若者が動画を見る場合、PCでコンテンツをダウンロードして見るのだが、ITオンチの中高年にとってはDVDは大切な存在だ。
老人向けカルチャースクールのダンスや音楽や英語などの教科でも、DVDメディアが配布されることが多く、家の据え置き型DVDプレーヤーで見ることが多い。一方でノートPCや画面の小さなシリコンプレーヤーには彼らは抵抗を見せていた。
近年は10型、ないしそれ以上の大画面のポータブルDVDプレーヤーが販売されてきたが、これがタブレット同様にディスプレーの広さから人気となった。
最後にUSBコネクターがついた小型スピーカー。これに音声データを入れたUSBメモリーを繋ぎ、大音量で流すことにより、広場で太極拳やダンスを踊ったりできる。
また団体旅行の車内や山歩きに、彼らの好むレトロな音楽を流す。音楽をイヤフォンで聴くよりもスピーカーで聴くことを好む彼らに口コミで拡がりヒットしているのだ。
以上3つのジャンルの製品については、特に中高年の人々が店舗で店員と相談する姿を見るようになった。またネットにおいても「最近利用する人が増えた」との報告も多い。

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