日本MS高橋常務に聞く、「2年後までに国内法人PCの50%にWindows 10を」という目標も
MSのパートナー施策は順調、クラウド事業拡大も目標どおり
2016年07月13日 12時40分更新
日本マイクロソフト(日本MS)は、今年7月から始まった同社2017年度において、クラウドパートナーのさらなる拡大に取り組む姿勢を示した。現在、約600社のCSP(クラウドソリューションプロバイダー)を、今年度中に2倍以上に拡大する。それに向けて、新規パートナーをリクルーティングする「プラクティス・デベロップメント・ユニット(PDU)」を新設。年内までに20人体制として、パートナー支援を行う。
日本マイクロソフト ゼネラルビジネス担当の高橋明宏執行役員常務は、「PDUでは、新たなパートナーをリクルートするとともに、ワークロードごとに高いスキルを持つエンジニアにより、パートナー支援体制を構築していく。とくにSaaS領域の開拓へとつなげたい」と語る。さらに、2018年7月までには、国内で使用される法人向けPCのうち、Windows 10搭載PCの比率を50%にまで引き上げるという計画も明らかにした。
CSPプログラム参加パートナーを、2017年度中に「2倍以上」へ
日本マイクロソフトは、2017年度末までに、クウラドの売上高、利益比率を50%にまで高める計画を明らかにしている。2016年6月末時点の数字は32%だった。高橋氏は「計画通りに進捗している」と述べ、目標である50%の達成に強い自信を見せる。
昨年7月に新たなCSPプログラムを開始して以降、ディストリビュータを通じたクラウド再販体制が強化される一方、ISVやマネージドサービス事業者のパートナーが増加。とくに、ISVのCSPプログラムへの参加は急増しているという。
「既存のオンプレミスアプリをクラウド上で展開したいと考えているものの、新たな投資に踏み切れないISVがAzure上に乗せたり、自社でアプリを開発しているユーザー企業が、アプリをAzure上で展開するといった動きが加速している。カスタマーがパートナーとなる動きを含めて、ISVがCSPプログラムに高い関心を寄せている。2017年度もこの動きが続きそうだ」(高橋氏)
同社では、2017年度におけるパートナー戦略の基本方針として、「クラウド時代のパートナーシップ」を掲げ、デジタルトランスフォーメーションを念頭においたパートナー連携を進める考えを示している。
具体的には、2016年6月時点で約600社のCSPプログラム参加企業を、2017年度中に「2倍以上」へと増加させる考えであり、そのための新たな施策を開始する。
前述のとおり、7月1日付で「プラクティス・デベロップメント・ユニット(PDU)」を新設。年内までに20人体制とし、新たなクラウドパートナーの獲得とともに、ワークロードごとの支援体制を強化する。
「PDUはグローバルでの動きであり、今後の開拓が期待されるSaaSエリアでの売り上げを拡大を目指す狙いもある。ワークロードごとに、スーパーエンジニアを集めて、パートナーを支援することになる。クラウドプラットフォーム、データプラットフォーム、クラウドアプリ、セキュリティ、クラウドボイスという5つの切り口から、パートナーを支援していくことになる」(高橋氏)
機械学習や音声認識など、新たな技術を活用したクウラドソリューションの提案も加速する姿勢をみせる。
ここ数年、日本マイクロソフトでは、クラウドパートナーのリクルーティングに力を注いできたが、新たに増加したパートナーへの支援体制に人員が割かれ、パートナーの新規獲得に遅れが生じようとしていた。新たな組織を設置することにより、こうした課題を解決する狙いもある。
一方で、業種展開にも力を注ぐ姿勢をみせる。日本マイクロソフトでは「製造」「金融」「流通・小売」「政府・自治体」「先端研究」「医療」の6分野に重点をおき、それぞれに対応したクラウドインダストリーソリューション組織を新設。パートナーとともに業種別シナリオを提案していくことになるという。
「業界ごとにクラウドに対する要件や進捗状況が異なる。これまでは、それらを横断的に対応していたが、それぞれの業種に対応した人員を配置することで、より密接な対応が可能になる」(高橋氏)
新たなマーケットプレイス「AppSource」もパートナー戦略に資するもの
一方で、米本社が新たに発表した「Microsoft AppSource」も、今後、日本語化を図ることで、パートナー戦略を加速することにつながると位置づける。
App Sourceは、マイクロソフトが設置した新たなマーケットプレイスであり、Office 365やDynamics 365といった製品群の上のレイヤーにあたるアプリなどを提供することができる。Cortanaを活用したコグニティブサービスなどのほか、WindowsやAzureといったマイクロソフトのプラットフォーム以外で動作するアプリやサービス、機能も調達することが可能で、マイクロソフトが打ち出すデジタルフィードバックループによるデータ中心の環境を構築することを支援する。
「たとえば、OfficeとSalesforce、Twitterなどが相互にデータ連携し、新たな提案や付加価値の提供が可能になる。また、トライ&バイの機能により、無償で試すこともできる。パートナーとパートナーの連携をマッチングを加速することも想定しており、新たな時代におけるパートナーシップを構築できる」(高橋氏)
すでに200以上のアプリが提供されており、今後、日本語化に向けた取り組みが開始されることになりそうだ。
2018年7月までに、法人ユーザーの50%にWindows 10を普及させる
2017年度において重点課題のひとつに掲げている「法人分野でのWindows 10の普及」については、中小企業においては無償アップグレード期間(7月29日まで)にアップグレードを推奨する一方、検証が必要となりそうな大企業においても、引き続きWindows 10への移行を訴えていくとした。
「大手企業については、主要な顧客の8割に〔Windows 10の動作〕検証を行っていただいている。7月29日までには間に合わないも場合も多い。その場合には有償でアップグレードしてもらうことになるが、Windows 10のメリットを感じていただいている企業が多い」(高橋氏)
日本マイクロソフトでは、無償アップグレードが終了してから2年後の2018年7月までに、法人ユーザーの50%にWindows 10を活用してもらうことを目指していることを明らかにした。全世界では、2018年までに10億台のデバイスにおいてWindows 10を利用してもらう計画も打ち出している。
7月29日以降も、法人ユーザーに対して、Windows 10のメリットを訴求することで、企業におけるWindows 10の今後の利用拡大に弾みをつける考えだ。