イヌとネコの写真や動画が投稿できるSNS「ドコノコ」。イヌやネコと人が親しくなるためのアプリです。「ほぼ日」で知られる「ほぼ日刊イトイ新聞」からリリースされました。
最近まで、筆者はFacebookやツイッターなどに日々投稿していましたが、週5回ほどの投稿は結構気を遣います。政治の話やネガティブなことは書かない、食事やお弁当の写真は控えめにする、などをポリシーにしていました。そんな中、「投稿のネタに困ったときはネコの写真」ってくらい、愛猫の写真に頼って10年近く経ちます。
「ドコノコ」にはいろいろな工夫が凝らされています。住所ではなく、近くの「避難所」の場所を登録することで、ユーザーにとって備えになるだけでなく、飼い主の個人情報を公開する必要がありません。同じエリアのイヌやネコを見つけられるだけでなく、万が一、迷子になった場合も探しやすくなっているのもポイントです。
動物病院で「〇〇ちゃんのお父さん」とか呼ばれちゃう感覚
動物病院に行くと、受付時や会計時に「前田ヒミツ♂ちゃーん」と呼び出されたり「ヒミツ♂ちゃんのお父さん」と言われたりします(ちなみに「ヒミツ♂」というのは筆者の愛猫の名前です)。動物病院内ではごく当たり前の光景なのですが、ペットを飼っていない人にとっては少し奇妙な状況かもしれませんが、ドコノコで「ほかのコ」を眺めていると、そんな世界観を感じさせます。
アプリのメタファーとは
メタファーとは隠喩のこと。少年に生まれた恋心をバラに例えたりするアレです。そんな例えは言葉だけではありません。PCのデスクトップ上で不要なファイルをゴミ箱のアイコンに重ねることで削除したり、新しい機能を既存の概念で置き換えてユーザーにわかりやすく伝えます。
例えば、マジックでも、切ったはずのトランプが観客の手の中で復活するなんて現象がありますが、これも壊れた愛情や友情などが戻ることがメタファーになっています。
未だに人気のPCゲーム「マインクラフト」はサンドボックス型と呼ばれるように「砂場」を喚起させますし、携帯ゲームの覇者「モンスターストライク」は、おハジキやボーリングのように敵や味方にぶつけて倒すことがモチーフになっています。
このように人気が出るアプリは新しい機能だけでなく、ユーザーが親近感を覚えるように既存の概念の両立しているのがポイントです。新機能、新しい概念ばかりでは、ユーザーは圧倒され、面食らってしまいます。
冒頭で紹介したアプリ、ドコノコのメタファーは、まさに「散歩」。仕事や作業の合間に気分転換にブラブラと散歩する。知っているイヌやネコに出会うも良し、新たな出会いコメントを残すのもいい。上手に撮影された写真を見て、自分の撮影テクニックの参考にすることもできます。
島民15人とネコ100匹以上が暮らす島「青島」
愛媛県大洲市に15人ほどの島民に対してネコが100匹以上が住んでいる青島という小さな島があります。もちろん、ネコ好きの間ではよく知られていますが、小さな定期便が1日に2便しかなく、さらに悪天候になると欠航してしまうため、よほど気合がなければいけないネコ好きの聖地でもあります。その存在は、筆者も昔から知ってはいましたが、未だに訪れていません。
忙しい現代人にとって、そんなネコワールドを訪れるような体験がスマートフォンで気軽に味わえる。筆者もドコノコに早々に登録しましたが、つい毎日チェックしてしまいます。使い始めの頃は「どんなコがいるのかなぁ…」なんて眺めていましたが、フォローが増えてくると「あのコ、どうしてるかなぁ?」なんて気になってきます。まさにサイバー版「ネコの聖地 青島」です。
これからは生活感の見えないSNSが有望!?
しばらく前から「LINE疲れ」「SNSウツ」なんて言葉が登場しはじめました。「投稿するネタを考えなきゃ」とか「友人の投稿を見ると、みんな幸せそう」など、SNSによってブルーになってしまう現象です。友人や家族との食事でもまず写真、そして投稿と、ライフスタイルに侵食しはじめています。
本来であれば、日常生活のストレス解消であるはずのSNSが、現代人の新たなるストレスになってしまっては本末転倒。「SNSの利用頻度が高いほど、うつ病になりやすい」なんてアメリカの研究結果がフォーブス ジャパンに掲載されました。これからはユーザーの生活感(リア充度)の見えにくい「ドコノコ型」のSNSが有望になると予想しています。
筆者は現在、SNS休憩中(笑)
「ウツやブルーになったから…」というわけではありませんが、筆者はFacebookやツイッターを休憩中です。その理由は、趣味のリノベーションが忙しくなったから。現在は外壁を直しているため、散歩中の近所の人たちと世間話を毎日していると、SNSをしていなくても、なんとなく充実した気分になっちゃうから不思議です。だいたい、工事中にセメントを捏ねている写真をSNSに投稿しても、読者にはピンとこない気もします(笑)。
朝起きて天気が良いと、PCを立ち上げる前に外に出てしまう。そんな日々を過ごしていると、サイバー空間のSNSは、やはり「近隣の人や友人との世間話」がメタファーになっている。そんなことをなんとなく実感できます。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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