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かんぽ生命、東大医科研も登壇、「IBM Watson Summit 2016」基調講演(後編)

スバル「アイサイト」の進化も支える、IBM Watson活用事例

2016年06月09日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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かんぽ生命:複雑で難易度の高い保険金審査業務を誰でも迅速にこなす

かんぽ生命保険 執行役の廣中恭明氏

 かんぽ生命では、保険契約者に対する保険金の支払業務支援にWatsonを活用するプロジェクトを進めている。プロジェクトリーダーの廣中氏は、保険金支払の業務は「保険会社にとって、最も難易度の高い業務」だと説明する。

 病気や死亡による保険金の請求があった場合には、生命保険会社の責務として、なるべく迅速かつ正確に審査を行って保険金を支払わなければならない。かんぽ生命では、年間およそ200万件の支払が発生し、約2000人が審査に当たっている。しかしその作業を正確に行うには、保険約款への詳しい理解のほか、医学的な知識、法務的な知識も必要となる。

 そのため、10年ほどの実務経験を持つベテランでも「1日5件ほどしか処理ができない」と廣中氏は説明する。機械的な判定を行うシステムも導入されているが、処理できるのは比較的単純なケースに限られ、適用できるのは全体の半分未満だ。「こうした現状があり、経験の浅い人でも正確かつ迅速に審査できるように、というのが経営課題になっている」(廣中氏)。

複雑な保険金の審査業務は、幅広い知識と経験を必要とするため効率化が難しかった

 この課題に取り組むため、かんぽ生命ではWatsonを採用した新しい審査支援システムの構築に取り組んでいる。現在、1年間をかけて約200万件の過去事例を学習させているところで、「正答率はおよそ9割ほどになってきた」と廣中氏は言う。「仮に、1人が200万件を処理しようとすれば2000年かかる計算になる。つまり、人間がやろうとしても到底できないことをWatsonはやっている」(廣中氏)。

Watsonを活用し、過去の類似事例と判断材料を人間に提示することで、迅速かつ正確な審査処理を支援する

 またこれまでは、医療や法律の進化、新しい請求事例に追随していくために、審査担当スタッフを継続的に教育していく必要があり、そこには大きなコストと時間がかかっていた。Watsonを「教育」するようにすることで、ここも飛躍的に効率化する。「このように、属人的な業務の領域をWatsonに代替させていくというのが1つ。そのほかにも、当社内のさまざまなデータを活用し、データアナリティクスとWatsonを融合させて効率化を進めていきたい」(廣中氏)。

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