実績と未来を見せた「AWS Summit 2016」 第1回
AWS Summit 2016 Enterprise Dayの基調講演レポート
ようこそ洞察の時代へ!GEのCTOが語るデジタル時代の挑戦
2016年06月02日 11時30分更新
6月1日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)は年次のイベント「AWS Summit 2016」を開催した。初日のEnterprise DayではGE Global Research/IT CTOのエリック・タッカー氏が基調講演に登壇し、業界に破壊をもたらすデジタルトランスフォーメーションとGEの取り組みを披露した。
エンタープライズのクラウドジャーニーとは?
冒頭、登壇したAWSJ代表取締役社長の長崎忠雄氏は、まずAWSの発表から10年、東京リージョンの開設から5年が経ったことを改めて披露。エンタープライズにおいてクラウドの利用が加速していることをアピールした。
長崎氏は、「5年前を思い起こすと、われわれを取り巻く環境、お客様のクラウドに対する大きく意識がまったく変わっている。いまやクラウドが前提として、システム更改を考えるお客様が増え始めている」とアピール。そして、この10年でAWSのビジネスは飛躍的に拡大した。「10年間で1兆円を超す初めてのIT企業になるのではないか。これもすべてAWSを支えてくれるお客様のおかげ」と長崎氏は観衆に謝意を表する。
こうした上り調子を受けてAWS Summit 2016の登録者数は1万5000人を超えた。今年は会期を1日増やし、初日に抽選制のEnterprise Dayを設けた。これはエンタープライズにおける「クラウドジャーニー」を共有する狙いがあるという。長崎氏は、日本で長らくビジネスを進めてきた中、エンタープライズのクラウド導入にパターンが存在することを指摘する。
「まずはトライアルでプロジェクトを進め、ワークロードを拡大。その次クラウドファーストになり、既存のシステムをクラウドに載せ替えていく。最終的にはクラウドに最適化されたアプリケーションを構築することで、AWSのポテンシャルを120%引き出す使い方をするクラウドファーストに移行する」(長崎氏)。今回は事例を通して、こうしたクラウドジャーニーをエンタープライズに共有していくという。
人と機械に交差点にイノベーションは生まれる
長崎氏の紹介で登壇したGE Global ResearchとIT CTOのエリック・タッカー氏は、「デジタルトランスフォーメーション」をテーマにした講演を行なった。
124年という歴史を持ち、世界の電化に大きく貢献してきたグローバル企業のGE。現在は電器のみならず、エネルギー、輸送、ヘルスケアなど幅広く事業を手がけている。こんなGEにもデジタル化の大きな波が襲いかかってきている。「革新の歴史はまさに挑戦の歴史。われわれは過去5年で、多くの保有資産を見直し、デジタルな新しい企業を立ち上げるに至った。過去10年で学んだのは、デジタルの破壊的な力で業界は大きく変遷し、変わることだ」とタッカー氏は指摘する。
デジタルの変化に対応できなかった企業としてタッカー氏は米国のレンタル・DVD大手のブロックバスターを挙げる。「2000年当時、50億ドルの収益を持った大きな企業だった。そのとき立ち上がったNetflixを5000万ドルで買収できた。10年後、Netflixはデジタルメディアの最大手になった。でも、ブロックバスターは破綻し、売却額はたったの2億5000万ドルだった。これがデジタル世界の現実だ」と語る。
こうした中、GEはダウジャーンズトレンドのインデックスで、唯一残っている企業でもある。GEはこうしたデジタル化の流れにあわせ、企業自体を大きく作り変えてきた。洗練された工場、通信しあう風力発電、データ分析による顧客課題の解決。これらを実現するには、過去に背を向け、新たなデジタル的な能力を獲得していかなければならない。実際、GEではデジタルに長けたソフトウェア人材の大量採用や効率的なアウトソーシング、AIや機械学習に対する投資などを積極的に行なってきた。
こうした変革の中で、クラウドコンピューティングは単にコスト削減ではなく、文化を変えるという役割を持っているという。機械による洞察力(Insight)を活用し、データセンターや現場に埋もれていた優秀な人材のポテンシャルを最大限に引き出し、収益性の上がるフロントで活躍してもらう。過去にさかのぼって失敗を学び、未来になにが起こるかを予測することで、新しい価値を生み出す。「人と機械の交差点にイノベーションが起こる」とタッカー氏は語る。
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