発売したPCがビジネス用途でブレイクするも
家庭用ゲーム機がことごとく失敗に終わる
さてもう片方、家庭用ゲーム機の部門はAtari Corporationとなった。このAtari Corporationを買収したのが、Commodoreを解任されたJack Tramiel氏である。Tramiel氏が引き抜いた元Commodoreの開発者が最初に手がけたのが、16bitのAtari 520STである。
画像の出典は、“oldcomputers.net”
Atari 520STは8MHzのMC68000に512KBのRAMという本体のみで599ドル、外付けFDDとモノクロモニター、マウスも込みで799ドル、カラーモニターでは1299ドルという価格で1985年1月に発表される。
スペック的にはAmiga 1000と比べてもそう見劣りしない。OSとしてDigital Researchが提供するGEMというGUIと、これを動かすためのGEMDOSが移植され、Atari TOS(The Operation System)として提供された。
家庭用、と言いつつも実際にはビジネス用にAtari 520STはよく売れた。特にCADやDTPの市場では、この時期はまだPC/AT互換機は十分成熟しておらず、Macintoshもこうした用途にはまだ性能的に厳しい頃だったため、うまく市場を見つけた形だ。
またMIDIを標準装備している関係で、DTMの用途でも広く利用されていた。微妙にAmiga 1000とはお互い違う特徴を持っており、それもあって競合しつつも共存、というおもしろい立ち位置になっていた。
さらに、Atari 2600 Jr.とAtari 7800も発表する。こちらはゲーム機で、Atari 2600 Jr.はAtari 2600と互換性を保った低コスト版、一方Atari 7800はAtari 5200の後継製品(開発元はAtariではなく外部のGeneral Computer Corporationだった)であるが、性能を改善しつつAtari 2600との互換性がかなり高く、ほとんどのAtari 2600用のゲームがそのまま遊べるものだった。
もっとも先のアタリショックのところで説明した通り、1億ドルまで縮小した市場を再び拡大させたのは、Atariではなく任天堂のNESだったわけで、Atari 7800は1986年末までの段階で合計10万台売れた程度に過ぎず、ビジネスとしてはあまりうまくいかなかった。
次にAtariはAtari XEGSをリリースする。これはAtari 400/800と互換性を持つ「パソコンとしても使えるゲーム機」で、NESに対抗するためのものであったが、性能的にも中途半端で、しかもその割に199ドルと高く、ほとんど売れなかった。
Atariの最後のゲーム機が、Atari Jaguarである。こちらはSega Genesis(メガドライブ)やSuper NES(スーパーファミコン)、3DOといった製品と競合するためのものだったが、こちらもご存知の通り市場を取れなかった。
話をパソコンに戻すと、Atari 520STの後継でFDDを両面読み書きできるようにしたAtari 1040STFをまず発売、その後Amigaに負けないグラフィック性能を実現できる520STE/1040STEといったモデルを投入するほか、ビジネス向けにMC68030を搭載したAtari TT030、さらにAtari TT030をベースにマルチメディア機能を拡充したAtari Falcon030といった製品を1990年までにラインナップする。
ただこの頃になると競合はAmigaではなく、Windows搭載のPC/AT互換機やMacintoshになっていた、というのはCommodoreの時と同じである。おまけに同社はJaguarに全力投入すべくパソコンのラインナップはFalcon 30を最後に開発を打ち切っていたため、Jaguarの商業的失敗はそのまま会社の死を意味した。
1996年7月、Atari CorporationはインドのHDDメーカーであるJTS Inc.に買収され、その後JTSはHasbro InteractiveにAtariの名前と資産を再売却する。このうち名前はその後フランスのInfogramesが獲得し、同社は現在Atari, SAという名前に改称している。
ちなみにゲーム機に関しては、AtGamesでAtari Flashbackシリーズという形でAtari 2600互換のゲーム機がいまだに提供されているというのは、なかなか驚くべきことなのかもしれない。
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