前回も触れた、Commodoreと死闘を繰り広げたというべき存在であるAtari。Atariそのものはゲーム機がメインであり、家庭用パソコンの市場に参入したのはかなり後になってからである。
とはいえ、この当時の家庭用ゲーム機とパソコンの間には、構造的には大きな差はなかった。家庭にゲームというものがゲーム機の形で入るかパソコンの形で入るのかという論争は今もって続いているわけで、昨今ではPS4やXbox Oneで参入するか、それともゲーミングPCが向いているのかという議論に近しいものがある。
以下の3項目が差別化の要因であり、これが大きく違わないと、パソコンとの間で激しい市場争いが起きることになる。
- ゲームを始めるのにどの程度の手間がかかるのか
- どんなゲームがあるのか
- 価格はいくらか
アーケードゲームが爆発的ヒット
あのスティーブ・ジョブスを輩出
さてそのAtari、創業者はNolan Bushnell氏である。当初はSyzygy Engineeringという社名(会社登記はしていない)で、Nutting Associatesという会社の依頼を受けて、Computer Spaceというアーケードゲーム機を開発した。
このComputer Spaceというのは、説明するよりもプレイ動画を見ていただいたほうが早い。ロケット型の自機を操作しながら、敵UFOを撃破するという単純なものである。
これは500~1000台が売れた程度らしく、商業的にはあまり成功しなかった。この後もNutting Associatesの業績はあまり芳しくなかったようで、創業者のBill Nutting氏は1973年に会社を売却してしまい、会社そのものも1976年には倒産している。
このBill Nutting氏からMagnavox社のOdysseyという家庭用ゲーム機(1972年9月発売)の話を聞いたBushnell氏は、他社にゲームシステムを売るのではなく、自社でゲーム機を製造・販売することを決め、Atari Inc.を設立する。
最初に同社が手がけたのは、Odysseyの話にヒントを得た、アーケードゲーム機の“Pong”である。なお、後にMagnavox社と訴訟騒ぎになり、最終的に70万ドルのライセンス料を支払うことで和解している。
筐体はPong Museumの画像を見ていただくとわかりやすい。
Pongは、これも動画を見ていただくとわかりやすいが、ユーザーは左右のパドルを操作して、玉を打ち返すだけのゲームである。昨今のゲームとは比較にならないのだが、当時はこのアーケードゲームが1台あたり毎日200ドルを稼ぎ出すほどの大ヒットだった。
このPongは当然のごとく模倣され、しかもこれを家庭用テレビで遊べるようにしたキットというものも存在した。個人的な話になるが、筆者の友人の父親がこのキット(当時の価格で数万円だったと記憶している)を入手して自作したというので、その友人の家まで遊びに行ったことがある。まだ小学生のころなので、時代としては1972年あたりだと思うが、日本にまでそんなキットが入ってくるほど人気だった。
話を戻すと、AtariはPongの資材を500ドル程度で仕入れ、完成品を1095ドルで売っていたそうだが、飛ぶように売れたらしい。最初は日産10台程度で、しかも大半に不良があるという状態だったらしいが、一度製造ラインが固まったら後は猛烈な量の出荷を開始したという。
公式な出荷日は1972年11月29日だが、1973年5月の時点で売り上げが320万ドルに達している。同年7月にはSpace Race、9月頃にはPong Doubleをリリースしており、これでさらに売り上げは伸びることになった。
また1974年には、家庭向けのPong(Home Pong)の企画も始まり、これは1975年のクリスマスシーズンにまずSearsからSears Tele-Gamesというブランドで出荷され(Searsは15万台をこのシーズンだけで売り切った)、1976年にはAtari Model C-100として出荷されている。
画像の出典は、“OLD-COMPUTER.COM”
ちなみに1974年には、Steve Jobsが40番目の社員として入社したというのは有名な話である。そして1976年にはアーケード向けに有名なBreakoutを発売する。
こちらは元祖ブロック崩しであり、これに(Steve Jobsがこっそり引き入れた)Steve Wozniakが絡んでいたというのも、これまた有名な話である。
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