今回のことば
「ソフトバンクはこれから世界的な企業になっていく。これまでは練習ラウンド。これからがいよいよ本番である。ソフトバンク2.0がスタートする」(ソフトバンクグループ・孫正義社長)
スプリントのネットワークは日に日に改善
ソフトバンクが発表した2015年度(2015年4月~2016年3月)連結業績は、売上高は前年比7.5%増の9兆1535億円、営業利益は8.8%増の9995億円、税引前利益は1兆57億円、当期純利益は29.1%減の4742億円となった。
前年にはアリババの上場益があり、これが最終利益に計上された反動により最終減益となったが、この一時的要因を除くと当期純利益は23%増になるという。
ソフトバンクグループの孫正義社長は実質的な増収増益を達成した理由をいくつかあげる。
ひとつは、スプリントの業績が回復基調にあるという点だ。
「スプリントは最終赤字であるが、調整後EBITDAで回復。9年ぶりに営業黒字になった。純増数は125万増となり、ベライゾン、AT&Tを同時に抜いた経験はこれまでにない。まだ上にはT-Mobileがいるが圧倒的に負けていた状況から抜け出し、少しでも上に行けた。これまではつながりにくいことが理由で解約率が高かったが、これが1.61%と、年度ベースでは史上最小になった」とする。
孫社長はスプリントの反転戦略として、「純増の改善/売り上げの安定化」、「OPEX削減」、「多様な調達手段」、「ネットワーク改善」の4点をあげる。また、1000項目のコスト削減プロジェクトを立ち上げ、これがコストダウンに結びついていることもスプリントの業績改善に寄与しているという。
「精神論や予算でコストを下げるのでなく、ビジネスのプロセスのやり方を根底から見直すことが必要である。その結果が着実に数字に表れている。次の1年も着実に改善していけるという自信が出てきた」とする。
そして、反転戦略のなかでもネットワークの改善は大きな成果になっていることを強調する。
「私がチーフ・ネットワーク・オフィサーとして直接陣頭指揮を執っている。ネットワークの状況を、つぶさに、細かく、毎日チェックしている。ネットワーク状況は日に日に改善している。投資効率の高い機器を採用し効率の高いネットワーク設計を行なっている。そして調達においては、ソフトバンクモバイルと合算したボリューム効果が出てきた。新しい技術に対して相手が怖がっているうちに、そこに積極的に投資していく。フルスピードでネットワークを強化している」と語る。
ネットワークへの投資効果はすでに出始めている。
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