※写真は開発中のイメージ
任天堂がファミリーコンピュータを発売したのは1983年。ゲーム専用に設計された8ビットコンピューターは世界中の子供たちを夢中にした。33年の歳月を経てiPhoneとAndroidにあの感動が帰ってくる。「ピコカセット」だ。
5月11日、「忍者じゃじゃ丸くん」を収録したピコカセットのクラウドファンディングがついに始まった。iPhoneかAndroidのイヤフォンジャックにさしこめば忍者じゃじゃ丸くんが遊べる。通常は5980円出資で入手可能。
2000個限定で4980円の「デバッガーコース」もある。応募者はリリース前のゲームを先に体験してデバッグができるという。それはもう従業員のような気もする。価格は最終的に1本あたり3000円ほどまで下げていきたいという。
※画面は開発中のイメージ(しつこい)
中古でゲーム売らない派に
遊んでほしいおもちゃ
ピコカセットはIDやパスワードの代わりになる認証デバイス。中にロムイメージが入っているわけではなく、iPhoneやスマートフォンのイヤフォンジャックにさしこむことで、ゲームを遊ぶための“鍵”を解錠するしくみだ。
開発元ビートロボの浅枝大志CEOは根っからのゲーム好き。ピコカセットがロムイメージのダウンロードではいけないのかという質問には「ゲームはアプリのように長押しして消すものじゃないはずだ」と返している。
「むかし『中古でゲームを売らない派』がいたと思う。箱はもちろん、カセットを包んでいたぺらぺらのビニール袋もとっておくような人たち。そういう人たちにこそ買ってほしい」(浅枝CEO)と話しており、熱い。
モノをつくった理由には流通戦略もある。たとえば、おもちゃ店でゲームコントローラーなどと並べて売っていけるのではないかというのだ。アップルとグーグルのストアに限られていた流通の間口を広げられることになる。
大ヒットタイトルを
現代によみがえらせろ
第1弾タイトルに選んだ忍者じゃじゃ丸くんは、1985年発売のシンプルな横スクロールアクションゲーム。歴代売上トップ100に入る大ヒット作で、シリーズ累計200万本を売ったという。人気はいまだ衰えずLINEスタンプも好調とか。
話が出たのは昨年9月の東京ゲームショウ。「燃えろ!!プロ野球」などの権利をもっているシティコネクションと幕張メッセ2階の喫茶店で立ち話をして「忍者じゃじゃ丸くん」中心に話をまとめた。
8ビットコンピューター用のプログラムをスマートフォン用に書きなおすのは、D4エンタープライズの協力を得た。D4エンタープライズはレトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」を運営している企業だ。
操作部はビートロボと共同開発のシロクが調整。ゲームコントローラーを模した画面にするか、コロプラが開発したバーチャルコントローラー「ぷにコン」のような方式をとるか、試行をくりかえしているという。
社内イントラアクセス権も解放
あなたもコミュニティの仲間入り
ピコカセットは“参加型”を強く打ち出しているプロジェクトでもある。クラウドファンディング参加者は「ピコカセ倶楽部」というグループへの参加を許され、社内イントラネットへのアクセス権(Slackだろう)まで得られる。みんなで寄ってたかって開発していこうという熱いノリでやっていくそうだ。
ピコカセットは形がなく名前さえ決まっていない段階からFacebookコミュニティで開発を進めてきた、コミュニティ型開発プロジェクト。8ビット大好きサークルをクラウドファンディングで盛り上げようという感覚なのだろう。
MSX、チップチューン、秋葉原スーパーポテトについて熱く話す浅枝CEOを見ていると、いまの開発スタイルになった理由もわかる気はした。
余談だが、ファミコン本体やカセット、コントローラーの意匠はすでに切れているらしい。そのためファミコン互換機やピコカセットのような形のアクセサリーが出しやすい状況になっているのだとか。発売から33年も経つといろいろ変わってくる。変わらないのは古きよきゲームを愛する気持ちだけだ。
1本約3000円という価格がどう評価されるか、イヤホンジャックにさしたままスムーズに操作できるのか、流通が乗ってくれるか、アップルやグーグルがどう出るか、そもそもイヤホンジャックは今後どうなるのかなど未知数な部分は多い。
まずはiPhoneでしっかり動く忍者じゃじゃ丸くんを早く見たい。ファミコン世代の期待にこたえるようがんばってほしい。みんなが世界で待っている。
盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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