移住は難しくとも、気軽な人の流れを
廃校からテレワークと地方創生へ、高畠町の「熱中小学校」
2016年04月01日 06時00分更新
データ入力業務を地域に分配
その目的は、廃校をサテライトオフィスとして再利用し、新たなセキュリティインフラと、テレワーク支援システムを開発すること。熱中小学校と山形大学が連携して人の流れを活性化しつつ、熱中小学校の運営母体であるNPO法人・はじまりの学校が「すぐに仕事のできる安心オフィス」を提供する。
この環境において、デジタルデザインがデータ入力のデジタル化サービス「BizIT」を利用し、在宅型入力システムを構築。地域での雇用創出を検証した。
BizITは、クラウドを介して企業システムなどと接続し、本来手書きで行うデータ入力をデジタル化し、かつクラウドソーシング基盤として、その業務を多数の人に安全に分配するものだ。
特徴はデータ入力単位を分割すること。例えば、氏名・住所・電話番号を入力する場合、「苗字」「氏名」「郵便番号の最初の3桁」「後ろの4桁」「都道府県」「市町村」「番地」「電話番号の市外局番」「それ以降の番号」といったように細かくし、別々の在宅ワーカーに分配できる。ワーカーはPC画面の入力フォームに、例えば「苗字」だけをひたすら入力していく。
「こうすることで、セキュリティを確保したまま、データ入力業務を地域にアウトソースできる。また、PCに詳しくなくても可能な、誰でもできる仕組みが実現する」(デジタルデザイン マネージャーの細井孝志氏)というわけだ。
実証実験では、地元の人に参加してもらい、地元企業のデータ入力業務を行ってもらった。結果、目標時給を超えて稼げた人もいたという。とはいえ、想定外も多かった。岩佐氏は「実証が農閑期の冬なので、もっと農家からの参加があると見込んでいたが、想定人数には届かなかった。PCを敬遠する方が多いのと、我々の説明がまだまだ足りなかったのが原因と考えている」と語る。
また、高畠町の八巻氏も「やってみて移住・定住は簡単ではないと感じた」と話すように、「ふるさとテレワーク」という観点からは苦労も多かったようだ。ただ、わずかでも企業と移住者の誘致に成功したのは確か。そこから今後の展望をどう描くのか。
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