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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第43回

【後編】『KING OF PRISM by PrettyRhythm』西浩子プロデューサーインタビュー

10回観たい劇場アニメを作るには――こうして『キンプリ』はアトラクションになった

2016年03月22日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/ASCII.jp

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(c) T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

一度観たら、誰かに話さずにはいられない……!
口コミしやすかった『キンプリ』

―― 西さんが仰っていた「商品が出たら欲しいと思ってくださる1700人」のような熱心なコアなファンの方が、自主的に宣伝活動をしてくれたと。

西 はい。ありがたいことに。そして『プリティーリズム』シリーズを知らない方が『キンプリ』を観に行くと、初めての方ほど『こんなアニメを見たことがない』という衝撃的な映像に感じるらしく、皆さん伝える言語を失う感じでレポートマンガをTwitterなどにアップして下さるんです。

 そうしたレポートマンガを読んだ方が『何が起きているんだ!?』と観に行って『キンプリ』にハマっていく。やがてマンガ家のアサダニッキ先生やアニメライターの小黒祐一郎さんなど著名な方にも広がって、お客さんがどんどん増えていった印象です。

 こうして広がった理由としては、『キンプリ』自体が“心の奥に大事にしまっておく”タイプの作品ではなく、観たら誰かに話さずにはいられない、外に向かって広がる特性を持っていたことも大きいと思います。

何度でも観に行きたくなる理由
『キンプリ』はアトラクション型アニメである

―― Twitterの反響では「『キンプリ』は中毒になる」という言葉さえ飛び交っています。「何度でも観に行きたくなる」と。正直、私自身も『自分はまだ応援上映も含めて4回しか観ていない』(取材時)と思っているのが不思議なくらいです。

 先ほどは、あの衝撃的な――歌っている最中にキャラクターが天蓋付きのベッドで寝そべったり、龍が飛び出したりする――映像が話題作りのために狙って作られたものではないとお伺いして驚いたのですが、一体どのようなコンセプトで設計されたのでしょうか?

西 『劇場版 プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』のときには、物語中に分岐ルートを4つ作って何回も見に来てもらえるような仕組みを作りましたが、『キンプリ』の物語は一本道なので“なぜか?”という分析はまだしっかりとはできてはいないのですが……。

 ただ、私自身が一ファン目線で見ると、『キンプリ』を見るとスカッとするんです。ネットでも「アトラクションみたいだった」という主旨の書き込みを見かけます。たとえばディズニーランドのスプラッシュマウンテンに何回も乗りたくなる、そんなアトラクション的な要素があるのだと思います。

 私も週末になってくると『そろそろキンプリ見たいな』と自然と思います。なぜだか元気が出るんですよね。一方で「泣いた」という声も多いんです。特に『プリティーリズム』シリーズを観続けてきた方は、感動して泣いてくださるようですね。

―― 私も劇場で、隣の席の女性が泣いているのを見ました。これはどういったことなんでしょうか?

西 『プリティーリズム』を観たお客さんには、コウジ、ヒロ、カヅキの3人が「Over The Rainbow」を結成するまでに起きた仲違いや挫折や友情など、さまざま出来事があって、その上で今の彼らのプリズムショーがあるということまでわかってくださっているからだと思います。

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菱田監督こだわりのバトルシーンは男性客のために

―― 少し驚いたのが、劇場に行くと毎回3割は男性のお客さんでした。

西 『プリティーリズム』シリーズのファン比率は男女半々くらいだったのですが、そのときから根強く来てくださっているのだと思います。

 あとは、菱田監督のこだわりですね。

 カヅキとアレクサンダーがプリズムショーバトルをする場面は、炎の龍や剣が現われたりする、少年向けアニメど真ん中みたいな絵面なんですが、プロット段階からあまりの漢くささに(笑)、私が「この作品はキラキラしたシーンがウリだから、漢くさいバトルシーンは入れなくても良いのでは?」と尋ねたんです。

(c) T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

 すると菱田監督は、「男性が見ても楽しめるものにしたい。そこはすごくこだわっているから捨てたくない」と断固として仰って。最終的には、コウジとシンのキラキラしたジャンプ対決と交互に見せる現在の構成に。男性が観ても燃えるバトルですし、女性が観ても楽しめる、狂気すら感じる映像になりましたね。

 このバトルシーンを入れた効果は大きかったです。「応援上映会」になると男性のお客さんが大きく盛り上がるところなんですよ。

(c) T-ARTS / syn Sophia / キングオブプリズム製作委員会

次ページ→【劇場で声援を送る「応援上映会」】

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