地方から人が減り続けている。日本の人口減少や東京への一極集中などが原因だ。このままだと2040年には、多くの地方自治体が行政機能を維持できなくなってしまうとされる。
そこで取り組まれたのが、総務省「ふるさとテレワーク」である。
都会のいつもの仕事をそのまま続けられるよう、地方にテレワーク環境を整備。地方への移住や企業進出を促進し「新たな人の流れ」を創る。さらに移住者が地方に溶け込めるよう支援することで、その流れを一過性のものではなく「定着・定住」につなげる。
その実現可能性を検証すべく、全国15地域で実証実験が行われ、約180社の協力会社から合計約1000人が実際に移住。テレワークの地域への影響、効果や課題を洗い出した。「ふるさとテレワーク」は地方を救うのか? そんな各地での取り組みをレポートする。
今回は長野県塩尻市・富士見町・王滝村。規模や環境の異なる3市町村で一元化されたテレワーク環境を構築した。その成果について、長野経済研究所 調査部 部長代理兼上席研究員の中村雅展氏に聞く。
3市町村の地域共通テレワーク
塩尻市は人口約6万7000人、県のほぼ中央に位置する交通の要衝だ。富士見町は人口約1万5000人、山梨県に接する八ヶ岳と入笠山に挟まれた高原地帯。王滝村は人口約850人、県南西部にあり、北には御嶽山がある。伊勢神宮の遷宮用材「木曽ヒノキ」が密生する日本三大美林にも数えられる。
これら規模の異なる3市町村の施設において一元化されたテレワークの仕組みを構築し、都市部の仕事をそのまま地方で続けられるかを検証した。
施設としては、塩尻市の雇用支援施設を使った「テレワークセンター」、富士見町の廃校を使った「サテライトオフィス」、王滝村の旧旅籠を使った「ギークハウス」を用意。「塩尻情報プラザ」や「光ファイバーネットワーク」などの既存設備も活用した。
3市町村連携となった理由は、「以前より塩尻市の施設で主婦がIT講座を受けたり、議事録・Web作成といった仕事を行っていた。この施設で『ふるさとテレワーク』の検証ができないかと考えていたところ、富士見町でも人口減対策として別途計画が立ち上がったため、御嶽山噴火による風評被害に苦しむ王滝村も加え、長野県のプロジェクトとして取りまとめられた」(中村氏)とのこと。
これにより「企業連携が容易な塩尻市」「東京二拠点居住に向いている富士見町」「環境一変型の王滝村」という異なる環境での検証が可能に。地域差を意識する形となったため、他地域への展望も描きやすくなったのが、この取り組みの特徴だ。
具体的には、どのように進められたのか。
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