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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第4回

塩尻市・富士見町・王滝村が連携

県内全域へ、長野3市町村が切り開いた「地域テレワーク」

2016年03月18日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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紙の仕事を地域へアウトソース

 塩尻市内のテレワークセンターには、ネットワンシステムズなどのIT企業3社が入居した。ネットワンからは合計13名が、2~3日交代でテレワークを実践。同社は「社内テレワーク制度」の先駆者で、さまざまな施策・制度化により、年間9億円の生産性向上を達成している企業だが、今回のようなサテライトオフィスでのテレワークは初めて。

テレワークの様子

 ネットワン 市場開発本部 ICT戦略支援部の手塚千佳氏によれば「どうせならと財務経理部門も巻き込み、ペーパーレス化に挑戦した。同部門はペーパーワークを中心とした業務なので、テレワークに不向きという思い込みもあったが、紙での処理を電子化し、どうしても紙での処理が必要な業務は切り分けることで、滞りなく業務遂行できた。『紙はなくせない』と都市伝説のようにささやかれる中、経理担当者もサテライトオフィスでの業務を通じてあらためて必要性を感じたよう。ペーパーワークを地域の企業に外注するなど、ペーパーレスもやりようによってはできると話していた」という。

ネットワン 市場開発本部 ICT戦略支援部の手塚千佳氏

 実証実験でも、企業が業務を一部アウトソースし、地域で取りまとめ、地元の在宅ワーカーへ分配する「雇用情報共有システム」を検証している。クラウドワークス社が協力する「塩尻市クラウドディレクター育成プロジェクト」として進められたもので、業務管理者が効率的に納品物(品質・進捗)を管理する。検証では、企業の従来通りの業務管理手法(電話やメール)よりも、コストを大きく削減できたそうだ。

 地域移転の代表格である「開発業務」だけでなく、こうした「管理業務」も外注して企業にコストメリットがあるのなら、「ふるさとテレワーク」の進展に拍車がかかるのでは。さらにこの仕組みが実現すれば、地元の在宅ワーカーに雇用を生み出せるのではないか。そんな期待が膨らむ。

 手塚氏は「セキュリティやファシリティの課題をはじめ、実運用に向けてはさらなる検証が必要。でも、育児・介護に追われながらも、ペーパーワークのためだけに会社に来ざるをえない人がいるのも事実で、これまで『ペーパーレスなんて無理』だった意識が『できるかもしれない』に変われば、それだけで大きな収穫。これを機に多彩なアイデアも生まれてくるかもしれない」としている。

地域でデータ分析する仕組み

 なお、テレワークシステムとして用意したのは、ユーザーがPCを持ち込むだけで円滑に業務が行えるクラウド環境だ。塩尻市のテレワークセンターは施錠可能な個室タイプだったため、集中してはかどるとの声も。一方、孤独感を解消するため、テレビ会議を常時接続するなどの工夫をしたという。

テレワークシステムの概要

 そのほか、ソフトウェア開発に必要な部品(モジュール)を集積した開発環境も整備。データ分析のためのモジュールも用意され、市内に導入済みのセンサーネットワークのデータ(鳥獣害や水位など)を組み合わせたデータ分析の検証も行った。東京のデータ分析の仕事を地域で行う場合も、この仕組みのおかげで可能だったとのことで、将来の新産業創出やデータサイエンティスト育成にも活用していく方針だ。

 松本氏は「本事業で利用したシステムは、普及展開時におけるシステムのカスタマイズに要する負担を最小限にするため、DockerやMongoDBなど、ほぼすべてオープンソースで開発した」としている。

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