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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第346回

スーパーコンピューターの系譜 Chen博士がCRAYの後に手がけたSS-1

2016年03月07日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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新会社をまたもやIBMが買収
Chen博士とIBMの切っても切れない関係

 SSIの倒産後、Chen博士は直ちにSuperComputers International(SCI)を設立し、1995年にChen Systemに改称する。SCI/Chen System時代のシステムがどんなものだったのかは不明だが、1996年にSequent Computer Systemsに買収される。

 このSequent Computer Systemsの時代には最大256wayに達するSMP(Symmetric Multi Processor)システムの開発に携わっていたという記述がChen博士のLinked InのSummaryに上がっており、ここから考えるとSCI/Chen Systemの時代にはSS-1をさらに大規模にしたようなシステムを考えており、これがSequent Computer Systemsにとって魅力的だったのかもしれない。

 Sequent Computer Systemsはプロセッサーそのものは自作せず、汎用のプロセッサーを大量にSMP構成にすることで高性能なマシン(ただし非科学技術分野)を製造するというメーカーであった。

 もともとはインテルでi432の開発に携わっていたエンジニアが、i432の打ち切り後に立ち上げた会社である。

 i432そのものが最大63個ものプロセッサーを並べたSMP構成を取れる仕組みだったため、この延長でシステムを構築できると考えたのかもしれない。

 Sequent Computer Systemsの最初の製品であるBalance 8000は旧NS(National Semiconductor)のNS32032プロセッサーを12個(2way×6)搭載したもので、1987年にはIntel 80386を利用したSymmetry 2000シリーズ(最大30プロセッサー)をリリース、1994年にはPentiumを搭載したSymmetry 5000シリーズ(やはり最大30プロセッサ)をリリースしている。

 Chen Systemが買収されたのはこの後のことであるが、その時期に同社はNUMA-Qと呼ばれる新しいアーキテクチャーを発表する。

 Symmetry 5000までは基本的にUMA(Unified Memory Architecture:共有メモリー方式)で、単一のメモリーをすべてのプロセッサーで共有する方式だが、プロセッサー数が増えるとメモリーアクセスがボトルネックになる。そこで各々のプロセッサーにローカルでメモリーを持たせ、それを共有しないNUMA(Non Unified Memory Architecture)に舵を切った最初の製品がNUMA-Qである。

 さて、これがどうなったかというと、1999年7月に同社はIBMにまたしても買収されてしまう。Linked Inのプロフィールを見ると1999年1月~2011年5月が空白になっているので、IBMの買収前に博士はSequentを離れたが、この買収をどういう気持ちで見ていたのか気になるところだ。

 Sequentを離れたあと、Chen博士はコンサルタント的な位置付けでさまざまなメーカーのブレードサーバーの構築を手伝っていたようだ。

 IBMはSequentの資産を手に入れ、これを元にx86ベースのブレードサーバー製品を発表するが、最大128枚ものブレードを利用したサーバーの構築にChen博士も絡んでいたらしい。

 その後はHPやSUN Microsystems、DELLなどとも同様の作業をしたようで、もうこのあたりでスーパーコンピューター市場との係わり合いは完全になくなったようだ。

 Chen博士は2011年6月にInformation Supergridという会社を立ち上げ、現在も同社のCEO件Chief Architectを勤めている。

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