シャープが、ビジネスソリューション事業を加速させる。2015年度見通しで3500億円の事業規模を、2017年度には4000億円に拡大。なかでもデジタルサイネージ分野では、毎年2桁以上の成長率を維持し、デジタルサイネージやPOS、ロボット分野などで、2017年度には1000億円の事業規模を目指す。このほど同社では、デジタルサイネージによるディスプレー事業の製品ラインアップを強化。さらに東京支社において、1月21日から2日間「Eco & Businessソリューションフェア」を開催し、BtoB関連製品を一堂に展示してパートナーやエンドユーザーに対する最新ソリューションを訴求してみせた。
Eco & Businessソリューションフェアは、ビジネスソリューションカンパニーが中心となり、毎年2回開催しているBtoBに関する展示会で、今年で9年目。今年度上期は全国7ヵ所で実施し、4000社6000人が来場した実績を持つ。この下期は、1月21日および22日の東京での開催に続き、2月には、名古屋、大阪でも開催。3会場合計で、3000社5000人の来場を見込んでいる。
同イベントでは、シャープおよびパートナー企業の最新BtoBソリューションを展示しているのが特徴で、インバウンド需要に向けたデジタルサイネージソリューション、マイナンバー制度への対応、赤外線カメラなどによるセキュリティソリューション、ヘルスケア分野における新規技術の展示などが目玉となった。
こうした中、今回のEco & Businessソリューションフェアの展示中でも力を注いでいたのが、デジタルサイネージだ。2桁成長を維持している成長領域であるとともに、今後も継続的な成長が見込まれる事業分野。同社のビジネスソリューション事業の成長を支える事業と位置づけられている。
シャープ ビジネスソリューションカンパニー国内マーケティング統轄部・原田宗憲統轄部長は、「交通機関や公共施設、医療、教育、レジャー・アミューズメント分野など幅広い分野でデジタルサイネージが導入され始めているが、店舗や一般企業への普及率はまだ10%台に留まっており、大きな潜在需要が見込まれている。
さらに、ハードウェアそのものの市場が拡大するだけでなく、デジタルサイネージによる広告市場の拡大が見込まれており、広告やコンテンツ制作/配信を含めて2014年度に初めて1000億円を突破したデジタルサイネージ市場が、2020年度には2700億円の市場規模にまで拡大すると予想されている。
今回のEco & Businessソリューションフェアにおいては、旺盛なデジタルサイネージの需要に向けた新製品とともに、広告、情報、演出、販促という4つの観点からコンテンツへの取り組みも紹介した」と語る。
そのひとつがデジタルサイネージを利用した多言語対応案内。外国人観光客は、政府目標の2020年の2000万人に対して、2015年時点で1974万人が訪日。政府は3000万人の目標を再掲しているところだ。シャープではこうした動きに対応して、外国人観光客が安心、快適に観光を楽しめるように、都内を中心に多言語対応案内ソリューションを提案する活動を開始。すでに東京都道路整備保全公社とともに、日本語を含めて5カ国語に対応した多言語対応案内を新宿駅西口に設置している。
ここでは、32型4K液晶ディスプレーをタッチすると、新宿周辺の情報を多言語で案内。さらに複数人数で見る際には、隣に配置された70型大型液晶ディスプレーに同じ情報を表示して閲覧できる。また、60型液晶ディスプレーを12台組み合わせたマルチディスプレーによって各種情報を表示する。
「利用状況を分析したところ、日本語での利用が38.4%であるのに対して、英語が30.0%、中国語の簡体字と繁体字がそれぞれ12.4%、韓国語が6.8%となり、約6割が日本語以外で利用されている」という。
こうした交通機関や公共施設向けのデジタルサイネージの提案においては、新たな柱巻き筐体を開発。既存の柱などにあわせて、奥行10cm以内にディスプレーを設置できるフレーム構造とすることで、柱の形状や大きさなどにも柔軟に対応。ひとつの筐体の組み立てに要する時間も作業員2人で3時間とし、駅のコンコースなどへのデジタルサイネージの設置の際も、終電から始発の間の時間帯で作業ができるようにしている。
一方、小売店舗向けには、デジタルサイネージとスマートフォンを連携した「O2O連携コンテンツ」を提案。ECサイトとの連携、スマホと連動させたキャンペーン情報との同期などにより、店舗とECサイトの双方で売り上げを高めるソリューションを提案。フルオーダーメイドスーツ店向けには、タッチパネルで指定したアイテムをサイネージに表示してバーチャル試着ができるソリューションも提案している。これはすでに大阪市内の店舗で導入されているという。
またオフィス向けには、全国30か所の支店や工場などに100台のデジタルサイネージを設置して、情報の共有とコミュニケーション強化を図るオフィスサイネージの導入実績のほか、大型テーマパークにおいては、オフィス内に12台のディスプレーを天吊で設置。敷地内の映像を表示したり、関連情報を表示したりすることで、リアルタイムな情報共有とスピーディーな現場対応が可能になった事例などを示した。
aまた、新たにワイヤレス対応のBIG PADを2月上旬から順次投入。会議室などに設置するオフィスサイネージソリューションとしての提案を強化する。新BIG PADの「PN-L703W」および「PN-L603W」では、Windows、Android、iOSを搭載した様々なデバイスを最大10台までワイヤレス接続して、最大4分割表示での情報を共有できるようにした。「オフィスにおいてはデバイスの接続が面倒であるという課題があった。ワイヤレス化することでそれが一気に解決する」という。
そのほか、同社ではコンテンツを作成したり、コンテンツを配信するためのe-signageを用意。USBメモリによるコンテンツ配信から、ネットワークを活用した大規模配信体制までを構築。さらに、コンテンツ制作についても受注する体制を整えている。
「e-signageクラウドサービスでは、サーバーなどの初期投資が不要であり、月額課金で利用できる。また、コンテンツ制作支援サービスでは、国内マーケティング統轄部のなかにコンテンツ素材制作、コンサルティング、制作支援の体制を持ち、最適なコンテンツを提供できる体制を整えている」という。
さらに、液晶ディスプレーの新製品のラインアップも強化している。4K表示が可能な80型液晶ディスプレー「PN-H801」を2月から発売。従来の70型に加えてラインアップを拡大した。さらにマルチディスプレーに最適化した55型の「PN-V550」も同じく2月から出荷。従来の700カンデラの輝度に比べて、500カンデラとすることで、導入コストおよび運用コストの削減を実現。店舗やオフィス、監視ルームなど高い輝度が求められない場所での導入に適したディスプレーとして提案する。
なお、PN-V550は、縦横に2台ずつ合計4台の構成とすることで、画面全体の解像度を3840×2160ドットにできるため4K映像をそのまま表示することも可能であるほか、16面のマルチディスプレー構成とすることで、220型相当の画面サイズを実現し、8Kコンテンツの表示も可能になる。
「2020年に向けては、4K/8Kによるデジタルサイネージの需要が高まると予想され、とくに、60型以上はほとんどが4Kおよび8K化すると見られている。とくに地図情報などを表示するには4Kが適しており、今後はタッチパネルとの組み合わせも増えていくだろう。シャープは、もともと大画面ディスプレーを得意としており、いち早く4K/8K化にも着手しており、強みが発揮できる分野である」などとした。
また、これまでは1年保証であったディスプレーの無償保証サービス期間を2015年10月から、3年間に延長。さらに、4年目、5年目の有償保守契約も結べるようにした。
同社では、デジタルサイネージ事業においては、コンテンツ企画から、設置、メンテナンスまでのトータルソリューションを提案できる体制を構築しており、ハード、ソフト、サービスの観点から、デジタルサイネージ事業を拡大させる考えだ。