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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第16回

「角川インターネット講座 THE SALON」特別企画

日本人が知らないネットの常識をKADOKAWA角川歴彦会長と村井純教授が語る

2016年02月25日 09時00分更新

文● 盛田 諒 編集●ASCII.jp

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未来はそんなに暗くない

 まず角川会長が村井教授に尋ねたのは「IoTとは何か」。DeNA創業者の南場智子取締役 会長からも「ぜひ定義を聞いてください」と言われていたらしい。これに対し、村井教授は「IoTは本当にバズワード(流行語)」であるとばっさり切った。

講座の後半では、角川会長を交えて「IoTとは何か? IoT時代でも引き続き現在の巨大IT企業がイニシアチブをとり続けるのか」といった議論が繰り広げられた

 「IoTはケヴィン・アシュトンが作った言葉。『食べ物の賞味期限をデータベースで管理するように、すべてのモノにIDを振ってデータベースをつくったら、それはモノのインターネットだよね』と。確かにそれが起源ではあるが、定義ではない。大事なのはセンサーやデバイスがデータを出したり取り込んだりすることだ」

 これまでは、映画に関する市場調査をするにはアンケートしか方法がなかった。しかしネットフリックスをはじめとする動画配信サービスは、視聴者の年齢・性別・行動などを番組単位で取得・解析することでビジネスに応用している。これが自動車などに応用したらどうなるか、というのがIoTビジネスの可能性の1つ。

 また、ウェブ時代とIoT時代、現在と未来とで違うのは、使われるデータの種類が「文字から数値」に切り替わることだと村井教授は言う。

 「これまでは、大量のデータを収集しようと思ったら、その収集場所は事実上ウェブ環境だけで、その収集物は文字データが主だった。一方、IoTはカメラやセンサーが中心なので数値データが多くなってくる。『ビッグデータ』と言われ始めた頃はウェブのクローリング(自動巡回)がほとんどだったが、いまはもっと多様になり、言語依存性は下がっている」

文字データ一辺倒だったビッグデータだが、今後はIoTによって、“センサーで得られる数値データ”など多様性に富んだものになる、と村井教授は語る

 そこで再び角川会長が尋ねたのは、IoT時代の強者について。これまで「データの王者」として君臨してきたグーグルが、IoT時代もやはり勝ち続けるのか。

 村井教授は「そうもならないと思う」と楽観的だ。「グーグルが非常に強いのはウェブベースだったから。IoTも先手は打っているが、グーグルだけじゃない。たとえば空気清浄機がゴミやダニを分析するようになる。医療機器、健康機器……使命感を持ったプレイヤーがいろいろと出てくるんじゃないか」

 IT企業がリアル企業を駆逐するというこれまでの流れが、IoTで逆転するのではないか。角川会長はそう期待をこめる。一方、村井教授は「IT企業とリアル企業」「あっちとこっち」という対抗構図が、IoTによって「(IT企業とリアル企業の)結婚」に変わるだろうとも表現する。

 「現実から離れた空間をインターネットと表現していたこともあったが、緯度・経度・温度などを扱うならそれは現実。それを使いこなすのがIoT。1つの空間になった世界をどう演出するかが腕の見せどころ。もう『あっち側』とは誰も思わない。インターネットの世界で何が作れるか。いまの学生はそう考えている」

 「人工知能によって仕事が奪われる」といった論調もあるが、村井教授は懐疑的だ。IoT社会において、インターネットはごく当たり前のインフラになる。そこではむしろ職人の世界が尊ばれ、逆にデータサイエンスを担う人間の立場がなくなってしまう。そして、テクノロジーが進化したときに職業が消えていくのは何も新しいことではない。人工知能もそのひとつにすぎないというわけだ。

 そして最後に、「『なくなる職業、なくならない職業』という話題は政治家が大喜びして聞く。そういう意味じゃ『どうぞご利用ください』という感じだけど」

 そう言って村井教授が肩をすくめ、場が笑いに包まれたところで、THE SALON最終回はなごやかに幕を閉じた。

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