このページの本文へ

「Lucky Bag」はやらないって言ってるのに!

アップルストア"幻の初売り"に熱心なファンが始発から並ぶ

2016年01月02日 21時30分更新

文● 倉田吉昭、編集●ハイサイ比嘉

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2016年1月2日、全国のデパートや各種ブランド店舗で初売りが行なわれた。東京・銀座でも、銀座松屋や銀座プランタンなどの初売りで行列が形成されるが、アップルはすでに福袋「Lucky Bag」も初売りもやらないと宣言済み。さすがに「Apple Store, Ginza」前は静かなもの……と思いきや、取材のため朝7時に到着した筆者の前には、まさかの行列が!

……行列といってもたった4人ですけど

 ただし、行列といっても人数は4人のみ。しかもその4人とも、よく見れば毎年先頭集団で見かける面々。話を聞いてみると、先頭の方は近くのネットカフェに陣取って、朝5時くらいから並び始めたとのこと。「何もやらないって知っていますよね?」と確認してみても、それでも並びたいのだという。

 Apple Store前には念のため警備員さんが1名、そしてショップ内にもスタッフが数名おり、筆者が到着したときにも「Lucky Bagや初売りはやらないこと」「警察から指導があれば解散してもらうこと」と説明を受けた。先の4人はそれでも並びたいとのことで、まったく見上げた根性としか言いようがない。筆者は早々に近くの喫茶店に退避して原稿を書きつつ、9時過ぎに再度店舗の前に到着したが、この時点で10番目。そのまま開店を待つことにした。

2015年1月には500~600番目の人が並んでいた付近も、2016年は静ひつそのもの。これが東京ならではの正月だよ、うん

スタッフの拍手とハイタッチとともに開店、
特売品や限定品は……?

 午前10時になって、例年どおり店員からの大きな拍手とハイタッチとともに開店したが、事前の発表どおりLucky Bagの販売や、これまた例年数千円程度の値引きがあった新春特売もナシだった。なお、開店時には50人ほどまで膨れ上がっていた行列だが、大きな混乱もなくスムーズに入店できた。

 熱心なユーザーなら、従来の初売りには、割り引きに加えて、サードパーティが用意する限定品(もっぱら色や柄が正月限定)も登場していたことを覚えているはず。今年はどうなるのか見ものだったが、今回はサイレント販売ながら、Beatsブランドの「Beats Powerbeats2 ワイヤレスインイヤーヘッドフォン」(価格2万600円/税別)と、「Beats Solo2 ワイヤレスオンイヤーヘッドフォン」(3万円/税別)の特別仕様が合計17台入荷しているとのことだった。「Japan Exclusive」(日本専売)のシール以外は特に目立ったディスプレイもなく棚に置かれているだけだったので、気づかなかった人も多かったのではないだろうか。

「Beats Powerbeats2 ワイヤレスインイヤーヘッドフォン」。諸事情により写真は撮影できなかったので、同製品のイメージだけ。この写真でグレーの部分が赤くなっており、明らかに日の丸をイメージしている

 今年は銀座全体で人出が少ない印象で、道を歩くにも余裕がある。Lucky Bagがなかった影響だとは思わないが、穏やかな1年のスタートとなった印象だ。

新年セールの復活を切に祈る

 Lucky Bagの販売がなくなった理由のひとつとしてまことしやかに語られる見解に、アップル自身のブランド戦略として、初売りのようなドメスティックな催し物には参加しない方針にした、というものがある。これには根拠となる前例があり、実は2015年の秋、米国で収穫祭に合わせて開催される「ブラックフライデー」のセールスにも、アップルは参加していなかった。

 新年の例でいえば、中国圏のように旧暦(太陰太陽暦)が根強い地域もあれば、中東のイスラム暦やインドのヒンドゥー暦など、国や地域によって重視している時期もバラバラだ。ワールドワイドな企業として、そのような地域・国限定のお祭りには参加せず、全世界で均質なサービスと体験を提供するということなのだろう。

 その判断は合理的だが、年明けから直営店に来るユーザーなら、ブランドへの忠誠心が高い方が多いはず。彼らへの「お祝い」(ご褒美?)として、国ごとの特徴に合わせて新たな年の幕開けを共有する程度の揺らぎはあってもいいのではないだろうか。

 確かに、店の前で何日も野宿するなど度のすぎた行列は、ブランドイメージや、周辺の店舗や地域との信頼関係をも失わせるもので、これを排除するべくセール自体をなくすという方針は悪くない。しかしアメとムチではないが、Lucky Bagでなくてもいいので、Tシャツやバッジなど、簡単なグッズでもいい。割と些細なことでも、そのブランドを愛好するユーザーは喜ぶものだ。ぜひ来年は、一歩ユーザー側に歩み寄った姿勢が見られることを期待したい。


カテゴリートップへ

ASCII.jp RSS2.0 配信中