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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第14回

【前編】鹿野司氏、堺三保氏、白土晴一氏「設定考証ブラザーズ」かく語りき

なぜNetflixはとんがった企画に金を出せるのか?

2016年01月16日 18時00分更新

文● 田口和裕 編集●村山剛史/ASCII.jp

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なぜNetflixはとんがった企画に金を出せるのか?

鹿野 (Netflixなどが製作費を出すことで)日本のスタジオが作品を海外にも売ることを前提に考え始めるのなら、監督やシナリオライターも日本国内以外を狙う感覚で作る人が出てこないとだめだよね。

 こういうこと言っちゃアレだけど、オレ日本のドラマあんまり好きじゃないんだよ。なぜならお約束っぽいコードが多いから。たとえば『この局面で怒ったり怒鳴ったりしないだろ』というシーンで怒鳴らせたりさ。役者の芝居はできてると思うんだけどね。

Netflix代表取締役グレッグ・ピーターズ氏は来日した際、日本のクリエイターと組んでNetflixオリジナルのコンテンツ増やしていきたい旨を語っている

 専門家が出てくるはずの話でもアマチュアが主人公になっちゃう。アマチュアであることによって専門家より良いことをする、という話があまりに多すぎる。専門家軽視なんだよね。

鹿野 今見ている日本のドラマなんだけど、専門知識に関する考証は完璧だし、裏でちょこちょこ話してる会話も啓蒙的ですばらしいのね。だから若い子たちが見るにはすごくいいと思うんだけど、ところどころドラマが耐えられない出来に……。

一同 いやいやいやいや(笑)

鹿野 どうしてそういう風に作っちゃうのかはすごくよく分かるんですよ。シナリオライターが『日本の視聴者達はこうしないとわからないだろう』って考えてるわけ。でもそのやり方は世界に打って出るときには通用しないよね。

 アニメに限れば、基本的には監督と脚本家のものだからまだマシ。おそらく同じプロデューサー、脚本家、監督だとしても「海外で売るんですよ」と言った瞬間にみんなマインドセットが変わりますよ

鹿野 外国のドラマをたくさん見て、これと戦うんだと思って作ってくれればいいわけだよ。

白土 現場の人たちだって海外のドラマは見てますよ。むしろ海外ものしか見てないことが多い。まあ、Netflixはとんがりすぎだろって最近は思ってますけどね。

鹿野 でもそのとんがってるNetflixがいちばんお金をくれるはずなので。

 アメリカだって、とんがってるドラマはネットかケーブルテレビなんですよね。地上波だとみんなに見てもらわないといけないから、どうしてもそこまでできない。

 ケーブルは契約者が喜んでくれればそれでいいわけだから、どんどんとんがる方向に行ってる。最近だと「ブレイキング・バッド」というドラマが良い例ですね。一方、地上波では「BONES」とか相変わらず一話完結のわかりやすいドラマがいつまでも続いてる。その2つがバランス取って進むのがいいと思う。

白土 日本でも両方あればいいと思います。ローカルなものを狙いたいという人はそのままでいい。

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制作者たちのマインドセットは変われども……
国内では金を出す人がいない理由

鹿野 だから、Netflixのようにとがったものを生き残らせるためのシステムがあればいいんです。だけど日本の出資者がそういうことに金を出せるかというと、出せないわけですよ。

 これはコンテンツに限らず科学の予算の付け方なんかでもそうだけど、「今ここに金出さなきゃだめだ」ってところに出せないんだよね。

 サイエンスの新しい研究って、他の国でやってることを追いかけてもだめなわけですよ。でも出資者はことあるごとに「市場はあるの?」とか「外国では当たってるの?」とか聞く。これでは時代をブレイクスルーするようなところにはお金が回らない。

資本がどんどん集中してマーケティング的な考え方が主流になると必然的につまらなくなるんですよ。だって統計だから(鹿野)

 これはここ10年くらいの、なにもかもを経済原理で考えようというマインドの変化によって起きているんだよね。確かに昔は経済のことをまったく考えてなかったという反省から、民主党政権になるちょっと前から経済のこともちゃんと考えましょうって話になって、それがどんどん先鋭化してきているのが今だと思う。

 経済合理性を追求するとやっぱりおもしろいものはなくなるんだよ。だって「二番煎じしかやらない」ってことだもん。マーケティングってそういうことだからね。でもそれでは新しいものが生まれなくなってしまう。

 ITのおかげで、映像をはじめありとあらゆるものが安価に作れるようになり、誰もが表現者になれるようになった反面、食えるプロは減ってるんですよ。それは結局おもしろいものが減ってるってことなんだよね。

白土 数が増えたぶん見つけにくくなっている。

鹿野 IT時代になって、ロングテールでニッチな才能も活かせるみたいなことが言われたりしたけど、ロングテールはシステムを持ってる人が儲かる話であって、テールになってる人はぜんぜん儲からない。

白土 ロングテールはAmazonの成功法則であって、当然Amazonにしか通用しない話ですからね。

Netflixという最新プラットフォームを理解するために

 動画配信サービスの代名詞といえるNetflix(ネットフリックス)。座談会でも言及されている通り、他の配信サービスが避けてきた番組制作に乗り出して大成功をおさめ、いまやメディアとしての片鱗も見せ始めている。こうした巨大プラットフォームはいかなる原理で動き、社会を変えてゆくのだろうか。

 角川インターネット講座の第11巻『進化するプラットフォーム グーグル・アップル・アマゾンを超えて』では、グーグルやアップルをはじめとするプラットフォームビジネスの解説、そして未来像に迫る一冊だ。監修は出井伸之氏(クオンタムリープ株式会社CEO、元ソニー株式会社会長)。

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(次ページでは、「インターネットを表現するのは難しい」)

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