AppleとSamsungの4年越しの特許バトルで新しい動きがあった。2015年12月初め、2社は共同でSamsungが約5億4800万ドル(約660億円)の和解金の支払いに合意したことを発表したのだ。
これでやっと終止符か、と思いたいところだが、現実にはそうではなさそうだ。Samsungは今後の特許訴訟から自社に好意的な判決が出た場合は、損害賠償金の一部が返金される権利を主張、Appleはこれに反論している。
発端は2億5000ドルを求めた
2011年のAppleの提訴
AppleとSamsungは12月3日、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に共同での事件管理書面を提出した。これは9月中旬に出された一部判決を受けてのものとなり、その後和解に合意できなかったことからこの手続きとなった。
判事は当時、Appleに優位ではあるが、当初からは減額となる5億4817万6477ドルの損害賠償金の支払いをSamsungに命じた。Samsungはこれを不服として控訴し、Appleは追認を申し立てた。その後連邦巡回控訴裁判所はAppleの申し立てを認め、Samsungはこれに対して最高裁判所の大法廷で再審理するよう陳情を出したが、この陳情は受け入れられなかった。
ここまでの流れをかいつまんで辿っていくと、一連の訴訟は2011年にAppleがSamsungをカリフォルニア州北部地区連邦地裁にて特許侵害で訴えたことに端を発する。
この際、Appleが主張したのはピンチ操作によるズーム、スクロールの最後まで来たときに表示されるバウンスバックなどの実用特許やデザインが関連した意匠特許だ。SamsungがApple製品を「猿まねした」と主張。25億ドルという巨額の損害賠償金とともに「Galaxy」ブランドで提供するスマートフォン数機種の販売差しどめを求めた。
2012年8月末に下った判決では(関連記事)、Samsungは10億5000万ドルの支払いを命じられる。これに対しSamsungは控訴、その後の控訴、審理などを繰り返すうちに損害賠償金額は減額されていった。そして2015年に入り、連邦控訴裁は約5億4800万ドルの損害賠償金支払いを命じた。これに対し、Samsungの再審理を求める陳情は取り下げられた。
なお、その間の2014年には、AppleとSamsungは米国以外のすべての特許訴訟を取り下げすることで合意している(関連記事)。
ピンチズーム特許は無効と判断される
だがこれですんなり和解とはいかないように見える。事件管理書面では、SamsungはAppleからの請求書を受領してから10日以内に5億4800万ドルを支払うとしているが、その先に条件がある。
支払い完了後、Appleは一部判決の施行を求める申し立てを取り下げるが、2日後にもし取り上げなければ、裁判所に施行の申し立てを承認するよう要求する。一方で、Samsungは将来の判決によっては今回支払った金額を部分的に払い戻しを受けることができる権利を主張する――ともある。Appleはこの払い戻し権利の主張に対し、異議を唱えている。
Samsungが“強気”な背景には、焦点の1つとされた2本指でのピンチによるズーム(特許番号7844915)が米特許商標庁(USPTO)で無効と判断されたことがある。Appleはこれを不服として控訴しているところだ。Samsungにしてみれば、和解金支払いにより販売差し止め例は回避できる。
このように和解金とはされているものの、2社ともに好戦的な姿勢を保っているという状態だ。
(次ページでは、「コモディティー化したスマートフォン、成長は一段落状態」」)
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