SAPジャパンは12月10日、インメモリプラットフォームの最新版となる「SAP HANA SPS11」の提供を開始した。高可用性/耐障害性機能を強化したほか、Webサーバーのアーキテクチャ刷新によるオープンソース開発プラットフォームへの対応拡張などの機能強化点がある。ERP以外の領域におけるプラットフォームとしての採用もさらに拡大を図る。
ERPだけでなく、イノベーティブなアプリケーション開発の基盤として
SAPジャパン バイスプレジデントでプラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏は、2010年の登場から5周年を迎えたSAP HANAは、グローバルではすでに1万社を超える顧客に採用されていると述べ、その急速な成長ぶりをアピールした。日本市場でも、この1年でERPを導入した顧客の9割はその基盤としてHANAを選択しているという。
そのうえで鈴木氏は、新版であるHANA SPS11は「企業のデジタル化支援」と「オープン化の促進」がテーマであり、具体的には大きく「ITのシンプル化」「インサイトの獲得」「イノベーションの実現」という3つの側面で機能強化されていると説明した。
「ITのシンプル化」という側面では、まず、新しい高可用性機能と耐障害性機能が提供される。具体的には、セカンダリサイトに対してログデータをリアルタイムに転送し、継続的にログリプレイを実行することでホットスタンバイを実現する。「常に同期しているので、障害発生時にも瞬時にセカンダリへと切り替えられる」(SAPジャパン エバンジェリストの松舘学氏)。
また、サポートするハードウェアプラットフォームの拡大として、IBM Power+SUSE Linux環境がBusiness Suite on HANAのサポートを追加した(今後、S/4 HANAもサポート予定)。仮想化プラットフォームでは、本番環境における利用でIBM LPARを、検証/開発環境でVMware vSphere 6.0やRed Hat KVMを、それぞれ新たにサポートしている。
2つめの「インサイトの獲得」では、階層化されたデータストレージ間のシームレスなデータ移動や、エイジングに基づく自動的なデータライフサイクル管理(DLM)に対応した。これにより、データウェアハウス(DWH)やデータレイクなどの基盤として、HANAの適用用途を拡大している。
「イノベーションの実現」では、まずWebサーバーのアーキテクチャを刷新し、データベースサービスとは独立した形でスケールが可能となった。「HANAアプライアンスの“外”にWebフロント部分を切り出すことで、スケールアウトしやすくなっている」(松舘氏)。さらにCloud Foundryを全面採用し、Node.js(JavaScript)やTomEE(Java)といったオープンソース実行環境を備えることで、既存アプリケーションのHANA移行をより容易にしている。開発オブジェクト管理にGitHubも利用できるようになった。
さらに、SPS10から搭載しているストリームデータの処理エンジンに機械学習機能が追加され、予兆のないイベントに対応して即座に予測モデルを変化させることができる。なお、SPS11で内蔵している予測解析アルゴリズムは70以上。さらに、内蔵する地理空間情報データ(ジオデータ)機能についても強化されている。
鈴木氏は、企業がビジネスのデジタル変革(デジタル化)を進めていく中で、顧客やサプライヤーとのよりダイレクトな関係づくり、優秀な人材とのエンゲージメント強化、さらにビッグデータ/IoTなどを活用する次世代アプリケーション実現などの“デジタルコア”としてS/4 HANA(SAP Business Suite 4 HANA)が存在し、その基盤としてHANAの重要度はさらに増していることを説明した。「将来のデジタル化に備えて、今の時点から基盤をモダナイズしておくことが重要だ」(鈴木氏)。