NTT東日本の災害対策
電力を供給する給電設備も堅牢に構築されている。給電装置は電力会社からAC 6600Vで受電し、変圧して各通信設備に供給する。通常系のほか、燃料で稼動する非常用発電装置、それすら止まった場合の蓄電池と3系統が用意されている。そのほか移動電源車も配備し、さまざまな事態に備えている。
安心・安全なサービスを提供するための設備としては、この「長時間停電対策」のほか、建物の耐火構造やケーブルの難燃素材による「火災防護」、防水扉などによる「風水害防護」、震度7の地震にも耐える建物/とう道の「耐震性」など、強固なつくりを採用している。
それは指定公共機関として予期せぬ大規模な災害に備え、平常時の「通信ネットワークの信頼性向上」、災害時の「重要通信の確保」と「サービスの早期復旧」を目指す、NTTグループの災害対策の基本方針に沿ったものだ。
さかのぼると同社の災害対策は、本州~北海道間の通信が途絶した1968年の十勝沖地震から始まる。それ以降、市街伝送路の冗長化や長時間停電対策、橋梁の強化といったハード面のさまざまな対策が打たれた。しかし、1995年の阪神淡路大震災を機に、災害用伝言ダイヤルなどソフト(情報)を中心とした対策に移っていく。
災害時に政府や防災機関の重要通信を確保するため、一般ユーザーの通信を制限し輻輳を回避、その代わりに被災地外にて災害用伝号ダイヤルを運用し、安否確認などのトラフィックを分散するようにもなった。当初は音声のみだった同機能も、スマホの普及などを反映した「Web 171」へと進化し、今では長期災害にも対応できる可用性を備えている。
2011年の東日本大震災からも多大な教訓が得られた。この時、広域・長期的な停電によって機能停止した同社関連ビルは385棟。ピーク時のトラフィックは約9倍となり、り障回線は約150万におよんだ。障害原因も停電のほか、橋梁崩落、電柱倒壊による中継伝送路の切断、通信ビルの水没・流出・損壊、大量のがれきによるケーブル損傷と多岐にわたった。
そこで、よりよい復旧に向けて、中継伝送路のループを細分化し、沿岸部のルートを内陸に迂回したり、ケーブルが流された橋梁では河川をくぐるように地下ルートを新設したり、津波で損壊した通信ビルを高台へ移設したりと、様々な対策を施した。避難所にも、無料で利用できる特設公衆電話や、平常時にも使える無線LAN環境を整えていった。
そして、首都直下地震への備えとつながっていく。
(→次ページ、首都直下地震に備えて)