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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画第7回

『ネットが生んだ文化(カルチャー)誰もが表現者の時代』監修者インタビュー

「ニコ厨の幸せはリア充に見られること」ドワンゴ川上量生会長

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ニコ動前夜のドワンゴは「モバゲーをつくろうとしてた」

── 社会に対するネットの意義・役割まで考えることになったニコニコ動画ですが、もともとドワンゴは動画と無関係な会社でした。2003年、35歳でマザーズ上場したとき、川上さんはどんなことを考えていたんですか。

川上 当時ネットはまだ虚業だったんです。ヤフー以外に儲かってる会社はなくて、ネットではなく実態は金融市場で儲けていた。ネットのコンテンツビジネスが本当に成立していたのは、携帯電話のネットサービスのところだけ。

 でも、2006年に近づいていくにつれ、iモードをはじめとした日本独自のモバイルインターネットがスマートフォンの登場で脅かされ始めていたんです。嫌だけどインターネットでなんかやんなきゃなと思って。

── 嫌だったんですか、インターネット。

川上 インターネットは広告料主体のビジネスだったおかげでビジネス規模が小さかったんですよね。iモードのコンテンツのほうがよっぽど儲かった。でも、世の中はインターネットのビジネスのほうが本命だと思い込んでいるんです。

 この欺瞞に満ちたインターネットのビジネス構造に風穴をあけよう、広告収入ではなくユーザーからどうにかしてお金をとれないかと考えたんです。いまはソシャゲなんかが出てきて(ユーザー課金も)普通になりましたけどね。

── 2003年からニコニコができるまでの3年間は何を考えていたんでしょう。

川上 要はモバゲーをつくろうとしてたんですね。

 ゲームにコミュニティをのっけたものがモバゲーだとぼくらは分析しました。じゃあ、ぼくらは動画にコミュニティをのっけよう

 でもケータイでは動画は大したものがつくれない。ケータイの動画サービスで勝つためには、まずはパソコンの動画マーケットをおさえるしかないだろうと考えました。しかし、パソコンの動画サービスにはYouTubeがいました。まともに戦っても勝てる気がしないからというので、まずは生放送にコメントをつけるしくみをつくってたんですよ。

── なるほど。

川上 で、うちのエンジニアの中野(真)君が生放送にコメントつけるサービスはどんなかんじになるかをイメージするためにプロトタイプとしてYouTubeにコメントをつけたものを1日で作って持ってきた。つまりたんなる実験だったんです。でも、眺めているうちに、これでいいんじゃないか、勝負できるんじゃないか、ということで始めてみたのが2006年8月です。

イベントは新ver完成までの時間稼ぎだったが……まさかの成功!

── そんなニコ動も来年で10周年です。会社の規模が大きくなるにつれ、社員やサービスが「普通」になってしまう不安はありませんか?

川上 いや、「普通」は、とっくになってるんですよ。

── 普通の会社になっちゃって大丈夫なんですか?

2007年2月、YouTubeからアクセスを遮断された旨を伝える公式アナウンス

川上 ニコ動は2006年12月にできて、あっというまに巨大サービスに成長して、3ヵ月後の2007年にはYouTubeに切断されました。

 そのとき「ニコ動は終わった」と言われたんですよね。それからなにかあるたびに「ニコ動は終わった」と言われ続けています。だから再来年は「ニコ動が終わったといわれて10周年」なんじゃないですか。ニコ動は何回も死んでるんです。JASRACと包括契約を結んで、動画の一斉削除をやったときに死んでる。二コ生でユーザー文化が破壊されたときに死んでる。

── バージョンアップのたび「終わった」と言われながらも続いてきた。

川上 なので、とっくにサービスの寿命は終わってるはずなんですけど、それを超会議でごまかしてるんですよね。

── ちょおおおお、ごまかすって!

川上 4年前にニコ動の開発が行き詰まったんです。「変更に変更を重ねてきたけど、これ以上は無理だ、何の機能追加もせずつくりなおしたい、2年間は何も変えずに現状維持にしたい」と開発の責任者が言ってきた。

 そう言われて困ったんですよ。2年間新しいサービスが出せなければウェブサービスとしてニコ動に本当の寿命が来るだろうと。どうしようかを悩んだすえに決めたのが、世界で誰もやってない「イベントでごまかす」という作戦です。それがまさかの大成功をしたんですよ。

── たぶん株主のみなさんも読んでますからこれ。

川上 2年は新サービスが出せないとぼくはそのとき聞いたんですが、それからもう4年が経ったのに、ニコ動の新しいサービスは未だに出てないんですよ。4年間ずっと、イベントでごまかしてきたんです。

── 超会議も通信制高校「N高校」もそうですが、外から見ているとネットだけでおさまらないコミュニティビジネスを志向している印象はあります。

川上 まあドワンゴとしてネットとリアルの「接点」でありつづけたいというのはありますよね。ぼくら自身ネット住民がつくった会社で、ユーザーがネット住民だけじゃないというサービスをつくっている特殊な会社、そこがうちの原点になってるんじゃないかなと思います。

(次ページでは、「今の時点での“ネットの構造”がわかる」)

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